新型コロナウイルスの感染拡大は、社会や経済に多大な影響を及ぼしています。影響のひとつとして挙げられるのが、高校や大学などの入学をこの機会に9月に変更するべきであるといった意見が各方面から出ていることです。もしこれが実現したら教育現場への影響はとても大きいと考えられますが、それと同時に不動産業界への影響も少なからずあるでしょう。

もし9月入学が実現した場合、不動産業界や投資家にはどのような影響が考えられるのかを展望してみたいと思います。

海外では多くが9月始まり、日本も元々は9月始まりだった

9月入学
(画像=natallia-vintsik/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの問題が深刻化するよりも前から、実は9月入学を推進する意見が多数ありました。その理由は、多くの主要国が9月入学を採用しており、グローバルスタンダードに近いものだと言えるからです。「大阪モデル」など多くの政策提案で高い知名度を誇る大阪府の吉村知事も9月入学を支持しており、その理由は「グローバルスタンダードだから」です。同知事はG7の中で4月入学なのは日本だけで、G20を見渡しても日本とインドだけであり、未来を考えた場合に9月入学は必要であると述べています。

意外に知られていないことですが、実は日本もかつては9月入学でした。明治時代に欧米の教育システム導入を進めた結果、欧米の9月入学にならって日本も9月入学が採用されていたこともあったのです。

考えられ得る影響とは?

それでは9月入学が実現すると、どんな影響が考えられ、社会にどんなことが起きるのでしょうか。メリットとなるような影響、逆にデメリットとなるような影響について考察してみました。

【メリットとなる影響】
・グローバルスタンダードと同じになるため海外の優秀な人材を集めやすくなる
・海外の人材が集まりやすくなると不動産需要が高まる可能性がある
・日本人を含む留学生の往来が容易になる
・受験時期が冬から夏になりインフルエンザなど季節性感染症の影響を受けにくくなる

【デメリットとなる影響】
・役所などは依然として4月が新年度であり、ずれが生じる
・引っ越しシーズンが猛暑の夏になるため、現場の負担が大きくなる
・幼児教育および企業の採用も9月スタートに合わせる必要がある

さらにデメリットの中には、導入時だけに考えられる一時的な問題があります。それは、以下のようなものです。
・入試などのスケジュールを抜本的に変えるため負担を伴う
・半年間のブランクが発生するため空白期間の使い方で教育格差が生じる
・半年間のブランク(無収入)期間が私学の経営を圧迫する

メリットとデメリット、それぞれの角度から影響を俯瞰すると、将来に向けて9月入学を導入したほうがメリットが大きいことは確かなのですが、そのために解決すべき問題が目の前に山積みになっているという構図が見えてきます。

影響に対してできる対策とは?

不動産業界への影響として考えられるのは、進学や就職の時期が4月から9月に変わるため、それに向けた準備の時期も半年移動することです。4月入学のパターンであれば1月頃からが賃貸住宅の需要が高まり、3月までが繁忙期となります。これが9月入学になると、そのまま6月から8月が繁忙期になると考えられます。

こうした社会の変化に応じて、マンション経営に取り組む大家さんは6月から始まる繁忙期に向けて物件の清掃や修繕、メンテナンスなど「選ばれる物件づくり」を済ませておくべきでしょう。

特に新型コロナウイルスの影響による休校が長引いていることを契機に9月入学が導入されるとなると、2020年からいきなり9月入学が実現することになります。2020年に新入学となる学生や新社会人となる人はすでに確定しているので、新たな賃貸住宅探しをする可能性が低いですが、2021年の繁忙期は6月からになる可能性が高いでしょう。賃貸オーナーが従来、1月からの繁忙期に向けて準備してきたことを2021年の6月にシフトする準備は、できるだけ早くしておくべきでしょう。

※この記事は5月15日時点の情報を元に執筆しております。(提供:Dear Reicious Online


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