ポイント還元制度の影響で、キャッシュレス決済は徐々に普及しています。しかし、資金繰りの悪化を懸念して、導入を悩む事業者も少なくありません。今回は、そのような事業者に向けて政府が創設した「低利融資制度」の概要や、手続きの流れなどを解説します。

資金繰りが悪化する?中小事業者が抱えるキャッシュレス決済導入への懸念

経営
(画像=takasu/stock.adobe.com)

キャッシュレス決済を促進するために、2019年の消費税増税にともなって実施された「ポイント還元事業」。政府はこの事業を通して、キャッシュレス決済におけるポイント還元を積極的に支援し、主に中小事業者の消費喚起を後押ししてきました。

一見すると、この事業は中小事業者を大きくサポートするものに見えますが、実はキャッシュレス決済の導入を懸念している経営者も少なくありません。なぜなら、キャッシュレス決済の導入は以下のことが要因となり、「資金繰りの悪化」を招く恐れがあるためです。

・売上から入金までに一定の時間がかかる
・決済事業者によって入金のタイミングが異なる
・売上金がいつ手元に入るのか、その時期を予測しづらい

特に運転資金が限られた中小事業者にとって、入金のタイミングが遅れることは死活問題になり得ます。また、入金のタイミングを予測しづらい影響で、短期間の資金計画を立てにくくなる点も、事業者によっては軽視できない問題でしょう。

キャッシュレス決済の導入をサポート!日本政策金融公庫の「低利融資制度」とは?

このような状況の中、政府はキャッシュレス決済の導入を懸念する中小事業者に向けて、2020年3月に「低利融資制度」を創設しました。この制度は経済産業省と日本政策金融公庫(※以下、日本公庫)が連携する形で実施されており、低い利率で融資を受けられる環境を整えることで、間接的にキャッシュレス決済の導入をサポートしています。

では、実際にどのような形で融資が行われているのか、主な貸付条件を以下でチェックしていきましょう。

主な貸付条件概要
対象者・卸売業、小売業、飲食サービス業、サービス業を営む事業者
・キャッシュレス決済の導入により、生産性の向上を図る事業者
融資限度額・中小企業事業…2億5,000万円
・国民生活事業…4,800万円
貸付利率・中小企業事業…基準利率0.4%
・国民生活事業…基準利率0.4%
資金使途キャッシュレス決済の対応に必要な運転資金(長期)

この制度では日本公庫の「企業活力強化資金」を通して融資が実施されるので、上記のように2つの事業に分けて貸付条件が設定されています。適用要件はやや似ていますが、「中小企業事業」は主に中小事業者を、「国民生活事業」は小規模事業者や創業企業をサポートするための事業です。

また、信用リスクに応じて所定の利率が適用される点も、この融資制度を利用する前に理解しておきたいポイント。いずれの事業でも基準利率は0.4%ですが、事業者の信用性や担保の有無などによって、実際に適用される利率は多少上下する可能性があります。

低利融資制度を利用する方法は?手続きの基本的な流れ

低利融資制度を利用するには、正しい手順で申込みを済ませる必要があります。融資対象者が限定されている影響で、一般的な融資制度とは流れが若干異なるので注意が必要です。

【手順1】決済事業者にキャッシュレス決済導入を申し込む
【手順2】日本公庫に融資を申し込む
【手順3】融資審査の実施

上記の通り、低利融資制度の利用時にはいきなり日本公庫に申し込むのではなく、まずはキャッシュレス決済導入の準備を済ませなくてはなりません。その後に融資を申し込み、【手順3】の日本公庫による審査を通過できた場合に、融資が実行されます。

なお、同制度の対象者には、すでにキャッシュレス決済を導入した事業者も含まれます。導入後に低利融資制度を利用したい事業者は、【手順2】の申し込みから準備を進めていきましょう。

しっかりと返済計画を立てたうえで、効果的な活用を

今回紹介した低利融資制度を利用すれば、資金繰りに悩むことなくキャッシュレス決済を導入できる可能性があります。ただし、利率が低いとは言えあくまでも融資なので、「返済」については強く意識することが重要です。

利用を検討中の事業者は、将来の返済プランをしっかりと立てたうえで、効果的に低利融資制度を活用していきましょう。(提供:企業オーナーonline


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