資金不足に陥りやすい中小企業にとって、資金調達の選択肢を増やすことは非常に重要です。なかでもキャッシュフローの改善にもつながる「資本性ローン」は、ぜひ押さえておきたい方法のひとつ。そこで今回は、資本性ローンの概要やメリットなどを紹介します。
日本政策金融公庫の「資本性ローン」とは?
資本性ローンとは、日本政策金融公庫が個人企業や法人に向けて実施している、融資制度のひとつです。正式名称は「挑戦支援資本強化特例制度」と言い、ベンチャー企業やスタートアップをはじめ、さまざまな企業の財務体質・資金調達力を強化する目的で実施されています。
では、具体的にどのような条件で融資を受けられるのか、借入条件の概要を簡単に見ていきましょう。
国民生活事業 | 中小企業事業 | |
---|---|---|
融資限度額 | 原則4,000万円 | 1社あたり3億円 |
返済期間 | 5年1ヶ月~15年以内 | 5年1ヶ月~15年以内 |
返済方法 | 期限一括返済(利息は毎月) | 期限一括返済(利息は毎月) |
担保・保証人 | 不要 | 不要 |
利率 | 1.05%~6.20% (※売上高減価償却前経常利益率により変動) | 0.45%~5.50% (※直近決算の業績により変動) |
上記の通り、資本性ローンは「国民生活事業」と「中小企業事業」の2タイプに分けられています。それぞれのタイプで対象者・利用条件が細かく設定されており、たとえば国民生活事業では新規開業資金や中小企業経営力強化資金の適用を受ける方、中小企業事業では新企業育成貸付などを利用する方が対象に含まれます。
また、地域活性化に取り組む方も対象に含まれる可能性があるので、該当する事業者は利用条件などを細かく確認しておきましょう。
資本性ローンを利用するメリット・デメリットとは?
中小企業などが資本性ローンを利用するメリット・デメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。
資本性ローンのメリット | 資本性ローンのデメリット |
---|---|
・借入期間中の返済負担が少ない ・業績が低迷するほど、金利負担が小さくなる ・株式比率を変えずにキャッシュフローを改善できる ・担保や保証人が不要 | ・繰り上げ返済ができない ・業績が良くなるほど、金利負担が増える ・事業計画書の提出や四半期ごとの報告など、多くの手間がかかる |
資本性ローンでは期限一括返済が採用されているため、借入期間中は元本を返済する必要がありません。さらに、業績が低迷するほど金利負担が小さくなる点も、経営が安定しにくい中小企業にとっては心強いメリットでしょう。
また、資本性ローンの最大のメリットともいえるポイントが、金融審査において調達金額の一部が借入金ではなく、「自己資本」としてみなされる点。つまり、資本性ローンを利用すると、株式比率を変えずに自己資本比率を高められるため、キャッシュフローを大きく改善できる可能性があります。
ただし、繰り上げ返済ができない点をはじめ、資本性ローンには軽視できないデメリットも潜んでいるので、利用前には必ず返済計画・資金計画を立てるようにしましょう。
資本性ローンが役に立つ状況とは?利用を考えたいシーン
一般的な法人が資本性ローンに申し込む場合、融資実行までには3ヶ月~4ヶ月の時間がかかります。加えて、事業計画書の提出などの手間が発生するので、早急な融資に適しているとは言えません。
ただし、前述で紹介した「キャッシュフローの改善につながる点」は、中小企業にとって非常に大きなメリット。なかでも、中長期的に財務体質や資金調達力を改善したいようなケースでは、積極的に考えたい選択肢になるでしょう。
また、中長期的な財務体質の改善に加えて、短期的な資金も調達したい場合には、ほかの手段と組み合わせる方法もあります。資本性ローンを選択肢に加えるだけで資金調達の幅はぐっと広がるため、特にキャッシュフローに悩まされやすい中小経営者は選択肢のひとつとして常に意識しておきたいところです。
資本性ローンの利用前には万全の準備を
キャッシュフローの改善につながる資本性ローンは、中小経営者であればぜひ押さえておきたい融資制度です。ただし、調達金額はあくまでも借入金(※会計上では負債としての扱い)であり、一般的な融資とは返済方式が大きく異なるので、返済計画はきちんと立てたうえで利用しなければなりません。また、派遣業など、業種によっては資本要件もあるので、注意が必要です。
また、事業計画書の提出や四半期ごとの報告など、利用時にある程度の手間がかかる点にも注意が必要です。経営リスクを少しでも抑えるために、万全の準備を整えたうえで申し込みをするようにしましょう。(提供:企業オーナーonline)
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