日本政府がついに中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の発行に向けて腰を上げた。14日の日経新聞の報道によると、近く閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に、CBDC発行の具体的な検討が盛り込まれるという。
すでに日銀は今年1月に欧中銀などと共同研究を開始しているが、政府も本格的にCBDCの発行に対して動き出すことになる。
背景には、中国のデジタル人民元(DCEP)の存在がある。
中国ではこのデジタル人民元の開発が急速に進んでおり、すでに深センや蘇州などの一部地域で実証実験が行われている。2022年の冬季オリンピックに合わせてデジタル人民元を発行するとされており、準備は円滑に進められている印象だ。
また、政府の重要政策の1つであるキャッシュレス決済促進との親和性や、昨今の新型コロナウイルス感染拡大によって浮上した現金の受け渡しなどによる感染の懸念も要因として挙げられるだろう。
今後は欧米各国との連携をより強化し、準備を急ぐという。
CBDCの発行に関しては世界的に動きが加速している。
先日、20カ国・地域(G20)がデジタル通貨など現金に変わる決済手段を容認する意向であることが判明。今年10月にマネーロンダリング対策(AML)を含む規制議論を本格化させる見通しだ。
G20が方向転換を見せた要因としても、デジタル人民元および昨年台頭したFacebook社の独自暗号資産「Libra」の存在が大きいようだ。
各国中央銀行がCBDCの導入に前向きな姿勢を示していることも拍車をかけたものとみられる。
なお、日本でCBDCの発行を行うには財務省が管轄する日銀法の改正が想定される。
現在流通している日本銀行券は財務省の政令によってその種類や発行が定められており、CBDCを発行するとなれば「紙幣の製造」にあたるものとみられる。
しかし現状、「デジタル通貨の製造および発券」に関する記載がないため、法的順序をたどるためにも様々な諸準備が必要になるだろう。
いずれにせよ、日本政府としてCBDCへの取り組みを促進させていく動きを見せたことは、国際的にも大きな意義を持つ。
基軸通貨であるドルにおいてもデジタル化に関する議論がなされ、ユーロでも同様の検討が進められていることから、日米欧が足並みを揃えてCBDCの発行に取り組むということは世界各国に多大な影響を及ぼすことだろう。(提供:月刊暗号資産)