今週のマーケット展望で、「日本株は4~6月期の決算発表を受けてアク抜けして上放れというのをメインシナリオにしているが、今週あたりからその助走を始めるのではないか」と述べた。実際、そんな感じの値動きの1週間であった。ずっと続いてきた三角保ち合いを少しだけ上に放れた感がある。
しかし、こうしたトレンドラインほど当てにならないものはない。というのは、こんなラインはいくらでも好きなように引くことができるからである。例えば、以下のように引けば、まだ三角保ち合いは継続している。要はこんなものは何とでも言える。ほとんど目の錯覚の世界である。
しかし、これに一目均衡表を加えると、先行きは雲が右肩上がりになっていて、下値は堅そうだ。なので、放れるとすれば上だろう。
13週移動平均と26週移動平均のゴールデンクロスも上放れのサインか。
しかし、これも26週線が下降トレンドにあり、それを13週線が下から突き抜けただけだから、それほど強いサインではない。事実、昨年の4月も同様のGCが起きたが、その後2週上昇のあと急落し本格反騰にはつながらなかった。
上に放れそうで放れない。コロナの感染拡大も懸念される。方向感が見えてくるのは、もうしばらく先になりそうだ。
それでも中国景気の明確な改善は確かな好材料である。長く低迷していた中国関連株に復調の兆しがある。日経中国関連株指数は今月に入ってようやくTOPIXをアウトパフォームし始めた。
これから本格化する4-6月期の決算発表で、中国景気の改善の影響が確認されれば相場が上に放れるきっかけになるだろう。
広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術』
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