新型コロナウイルスの影響により、東京オリンピックは2021年に延期されました。不動産投資市場は東京オリンピックに向けて活況を呈していましたので、少し腰を折られた印象です。

オリンピックが延期されたことにより、東京オリンピック後の不動産投資市場はどのように変化していくのか気になっている人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、「東京オリンピック後の不動産投資市場」について解説します。

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

コロナで変わったオリンピックの位置づけ

コロナ禍によって、オリンピックの位置づけは景気のピーク地点から景気回復の起爆剤へと変わったといえます。コロナ禍以前は、オリンピック後は一旦景気が後退し、不動産投資市場も冷え込むのではないかという見方も多かったです。

その理由としては、過去のオリンピックでは開催の翌年に株価が下がる例が良くあるからというものでした。株価は不動産の先行指標ですので、株価が下がれば不動産投資市場も弱含むという理屈は、ある意味納得感はあります。

かつて、1964年に行われた東京オリンピックにおいても、1964年後半から1965年にかけて証券不況と呼ばれる不況が生じました。当時の日本は高度経済成長の真っただ中であったにも関わらず、オリンピック後は1年間不況になっています。このように、過去の経験則からオリンピック後は不況になると言われることが多いのです。

一方で、オリンピック後は不況になるというストーリーは、あくまでもオリンピック直前までは好景気が続いていることが前提となっています。コロナ禍以前も、国内の好景気は続いていましたので、確かにストーリーの前提条件は整っていました。

しかしながら、コロナ禍によってオリンピック直前の景気が悪化しましたので、今回のオリンピックはストーリーの前提が崩れているといえます。従来は、オリンピックの直前は好景気で直後は不景気になるという流れであったため、オリンピックは景気のピーク地点のような位置付けでした。

それに対して、今回はオリンピックの直前が不景気となっていますので、オリンピックは景気回復の起爆剤のような位置付けに変わると予想されます。

オリンピックが行われれば、海外からも多くの観光客が訪れますので、コロナ禍でダメージを受けた観光業は回復します。航空会社や飲食店、テーマパーク等も売上を回復させることが可能です。

オリンピックはコロナ禍によって打撃を受けた業種のカンフル剤となり得ますので、従来のようなピーク地点的な位置づけにはならないと思われます。カンフル剤によって各社の業績が回復すれば、来年の株価は上がることが予想されます。株価は不動産の先行指標ですので、株価が上がれば不動産の価格も上がるはずです。

よって、今回のオリンピックは過去の図式には当てはまらないため、オリンピック後は不況になるという単純なストーリーは考えにくいのです。

尚、過去のオリンピックにおいて、ロンドン大会前の4大会では開催後に住宅価格が急落したケースはありません。

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(画像=みずほ総合研究所「不動産市場は転換点にあるのか?」)

過去の推測方式で考えてみても、東京オリンピック後に住宅価格が急落することは予想しにくいといえます。

東京と地方では景気の牽引要因が異なる

では、東京オリンピック後の不動産投資市場を長期的に見た場合、どのようなことが予測されるのでしょうか。

長期的に見ると、投資エリアの「選別」の重要性が増していくものと予想されます。コロナ禍以前は、全国的に地価が上昇する傾向が見られました。ただし、東京と地方では同じ理由で地価が上昇したわけではないので、景気を牽引してきた背景を把握しておくことが重要です。

国内の人口は2008年をピークに減少傾向が続いています。一方で、都道府県間は人口移動によって人口が増加している県と減少している県が生じており、その差は激しくなっています。

全体の「人口の自然増」は止まっていますが、都道府県別では人口移動による「人口の社会増」が続いている都道府県があります。以下に、2019年における都道府県別の転入超過数を示します。

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(画像=総務省統計「住民基本台帳人口移動報告2019年(令和元年)」)

上記のようなグラフは2019年だけでなく、ここ数年、同様の傾向があります。

東京都だけ人口流入が突出して高く、その周辺の神奈川県、埼玉県、千葉県は増加傾向にあります。大阪府や福岡県等の一部の件を除き、首都圏以外はほとんどの都道府県の人口が減っているのです。

東京都への人口流入は社会的現象であるため、今後も続くことが予想されます。

近年の東京都の地価上昇の要因は、人口増加もベースになっているのです。それに対し、ここ数年、人口減少が見られる地方都市の地価が上昇してきています。

地方都市の地価を上昇させてきた要因は、主に外国人観光客の増加が背景となっています。

例えば、国土交通省が開示している令和2年の地価公示のコメントによると、札幌市の商業地の地価が上がった理由を以下のように解説しています。

令和2年地価公示地方圏コメント
商業地については、札幌駅周辺においてオフィス等の需要が堅調であり、札幌駅北側や北海道新幹線のホームが設置される札幌駅東側の地域でも再開発への期待から需要が強まっている。また、外国人観光客の増加等を背景に、大通・すすきの地区での店舗・ホテル用地需要が引き続き旺盛である。

外国人観光客の増加というのは、地方都市では重要なキーワードとなっており、地方の地価を上昇させた重要な要因です。

もちろん、東京においても外国人観光客は増加していたため、地価上昇の理由の一つにはなっていました。しかしながら、東京は人口増加もベースになっているため、仮に外国人観光客が増加していなくても地価上昇は十分に起こりえたと考えられます。

今後の投資すべきエリアを考えると、外国人観光客の増加を背景としてきた地方都市は、若干、不安材料も多いです。

現に、コロナ禍のようなことが生じると観光業は一気に打撃を受け、地方経済に大きな悪影響を及ぼします。また、観光業は為替相場にも影響しますので、円高になれば外国人観光客は減ってしまいます。

今後、コロナ禍のようなことは生じなくても、円高が生じることは十分あり得るため、やはり観光が主軸となっている地方への投資はリスクが高いです。一方で、東京は外国人観光客の増減に関わらず、国内から人がどんどん流入してくるエリアとなっています。

東京への人口集中という流れは簡単に止まるものではないため、不動産投資をするなら今後も東京を中心に考えるべきでしょう。

今後も強いのは住宅投資市場

2020年に行われるはずだった東京オリンピックでは、多くの都内企業が都内の混雑を避けるためにテレワークを導入する計画をしていました。ところが、コロナ禍によって全国の多くの企業がテレワークを導入したため、図らずもテレワークが一気に浸透したといえます。

テレワークが浸透すると、やはり少し心配なのがオフィスの賃貸市場です。テレワークの導入によって、企業がオフィスの床面積を広く借りる必要がないと判断するようになれば、将来的にオフィス需要は減っていくことも予想されます。

一方で、自宅で仕事ができるようになれば、賃貸住宅市場は一層底堅いものになっていくと考えられます。特に、高速通信環境が整備されているような新しい物件は、需要が高まることが期待できます。

テレワークが増えても、やはり人々は便利なところに住みたいので東京の人口は増加し続けると予想されます。そのため、今後も東京の賃貸住宅は投資対象として最適と考えることができるのです。

まとめ

以上、東京オリンピック後の不動産投資市場について解説してきました。

オリンピックは景気のピーク地点ではなく起爆剤へと位置づけが変わりつつあります。オリンピック後であっても東京は人口の社会増があるため、投資適格なエリアです。

テレワークの導入によって、特に賃貸住宅は底堅い需要が期待できます。

これから投資するなら、東京の賃貸住宅を中心に物件を探すことをおすすめします。(提供:税理士が教える相続税の知識