コロナウイルスでもっとも打撃を受けた産業として、第一に挙げられるのは、観光業だろう。実際、コロナウイルスで国外への移動や長距離の移動が制限される中、多くの企業が打撃を受けており、倒産した企業も多い。世界が制限解除に向かう中、アフターコロナの観光業はどのように変わるのだろうか。解説する。

コロナウイルスで壊滅状態となった観光業

観光
(画像=peia/stock.adobe.com)

コロナウイルスの影響が短期的にあった産業といえば、やはり観光業だろう。国内、国外ともに移動が制限され、文字通りビジネスを止めざるを得なかったからだ。

実際、訪日外国人は、2020年4月が昨年比99.9%の2900人と、統計開始以来最低の数字であった。さらに国内を見ても、東京ディズニーランドは6月中旬現在、開園の見通しが立っていないなど、苦しい状況が続いている。消費者も旅行に対しての消費意欲は著しく落ち込んでおり、文字通り「壊滅状態」となっていると言えるだろう。2020年4月、5月は、観光事業者にとっては、悪夢の2か月だったのだ。

アフターコロナの世界の観光業はどうなる?

しかし6月以降、徐々に人の移動が増えてきているのも事実だ。では、このまま、人の移動が回復すれば、旅行業は回復するのだろうか。旅行のシーン別に考えてみよう。

国内旅行:近場を中心に復活の動き?

まずは国内旅行だ。国内旅行については、コロナの収束とともに、徐々に客足が戻ってくるのではないだろうか。

基本的に、人間というのは旅行が好きだ。これまで、景気減速等で旅行者が落ち込んだことは過去にもあったが、それを乗り越えて、旅行産業としては成長してきた。実際、「コロナが終わったらしたいこと」というアンケートでも、旅行というのは上位にランクインしている。

それを後押しするのが、政府主導の「Go Toキャンペーン」だ。特に、旅行へ行くことを後押しする「Go To Travel」はその中でも注目されており、このキャンペーンと同時に、客足が戻ってくることは十分考えられる。

しかし、単純に客足が戻ってくるわけではないだろう。我々は、しばらくの間は、コロナのリスクと対峙しなければならない。そのため、旅行を選ぶ基準としても、「清潔さ」「安心」がより求められるようになるのではないだろうか。民泊などの簡易的な施設は衛生面からも厳しくなりそうな一方で、旅館やホテルが再度脚光を浴びることが想定される。

ただ前述のGo Toキャンペーンからは東京が除外され、関東近辺の観光業は再度厳しい立場に置かれている。今後、コロナの第二波も考えられる状況となっており、先行きは不透明といえるだろう。

インバウンド:復活への道のりは厳しい

一方で、苦労しそうなのは、インバウンドだ。

日本ではやや収束傾向にあるコロナウイルスだが、海外ではいまだ猛威を振るっており、感染者の数は増える一方だ。そのため、そもそも他国への渡航を制限している国や、入国を制限している国が多く、国を超えた移動が難しいのだ。

しかし、日本には他国に比べるとアドバンテージはある。それは、2021年に延期になった東京オリンピックだ。実際、まだ正式に開催されるかどうかはわからない状況ではあるものの、東京オリンピックまでに世界的にコロナウイルスが収束していれば、東京オリンピックは観光業界にとって特需になる可能性もある。現状ではまだ願望の域を出ない部分ではあるものの、来年のオリンピックに期待する事業者も多いだろう。

海外旅行:インバウンド以上に厳しい可能性も

最後に海外旅行だ。海外旅行は、インバウンド以上に厳しい可能性もある。それは、やはり、海外でコロナウイルスが収束する気配が見えない、ということだ。わざわざ比較的安全な日本から、コロナウイルスのリスクが高い海外に出たい、という人は多くはないだろう。こちらもコロナの収束次第、ではあるが、インバウンドよりも時間がかかるのではないだろうか。

観光業がコロナを乗り越えるためには?

では、観光業がコロナを乗り越えるためには、どのようにすればいいのだろうか。一つ言えるのは、やはり、「安心」や「清潔感」というキーワードだ。施設を消毒するのはもちろんのこと、「三密」を避けるための行動が求められるようになるだろう。たとえば、QRコードを使った決済や、ドローンを使ったサービス提供などが、結果的にユーザーに安心感を与えることができるかもしれない。

もう一つは、ターゲットを変えることだ。海外からのインバウンド需要は、やはり今後しばらくは厳しい状況が続くだろう。そこで、国内の顧客、近場の顧客にターゲットを再設定し、そこに向けて価値を提供することができるかどうか、そのようなことに対応していくのも、これからの観光産業には必要になってくるのではないだろうか。

近年ではベネチアなどの観光地で多くのインバウンド観光客が押し寄せることが問題となっていた。環境破壊やその地域に住んでいる住民の生活に悪影響を与えるためであり、「オーバーツーリズム」と盛んに報道されていた。それらの影響を考えると、今一度、国内の旅行需要を見直す時期に来ているのかもしれない。

観光業はコロナ後、大きくその価値を変える可能性がある

観光業は、コロナで大きな打撃を受けた。コロナが収束しても、海外からの需要が回復するのはしばらく先になるだろう。そのため、国内、近場のユーザーに向けた価値を提供できるかどうか、そして、「安心」「清潔感」を価値として提供できるかどうか、ということが、観光業の「新しい価値」に変わっていく可能性がある。今後の観光業の取り組みに注目したい。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部