投資信託に興味はあるけれど、投資する商品をどうやって選べばいいのかわからない。投資信託を始めたけれど、効率よく投資できているのかわからない。そう思っている人は、まず分配金についておさらいしてみるといいかもしれません。知っているようで、意外と知らない分配金について解説します。

投資信託の分配金とは何か

お金の使い方
(画像=fotomek/stock.adobe.com)

個人で株式投資を始める場合は、多額の資金と運用知識、そして時間が必要です。一方、投資信託(ファンド)では、運用のプロが複数の投資家から集めた資金をまとめて、株式や債券などに投資を行います。そのため、少額の資金で、運用知識や時間がなくても始めることができます。

投資信託の運用によって得た利益を、それぞれの投資家が保有する口数に応じて分配するものが「分配金」です。

分配金はどこから支払われるものなのか

分配金は、投資している投資信託の純資産を切り崩して支払われます。つまり、分配金を支払うと、その分投資信託の資産が減少し、基準価額が下がります。

分配金を支払うタイミングや頻度は、あらかじめ決められています。分配金がある場合でも、支払いが確定しているわけではありません。運用状況などにより、分配金額は増減し、全く支払われないこともあります。

株式の「配当金」や預貯金の「利息」との違い

株式の配当金は、投資先企業が「事業によって得た利益の一部」を、株の保有者(株主)に支払うものですしたがって企業の業績によっては、配当金の金額の変動があることや、全く支払われないこともあります。

預貯金の利息は、預け先金融機関が「企業への貸付や国債運用などで得た収益の一部」を支払うものです。多くの場合、あらかじめ決められた利率に応じた利息額が支払われます。預貯金額(元本)が減ることはありません。

分配金は「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」の2種類

では、投資信託の分配金の場合はどうなっているのでしょうか?

投資信託の分配金には、「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」があります。

「普通分配金」は、個別元本(購入時の価格)を上回った部分から支払われます。これは、「利益」のため受け取るときに税金がかかります。

「元本払戻金(特別分配金)」は、個別元本を下回る部分から支払われます。その名の通り元本部分を投資家に払い戻すのです。特別分配金は「投資したお金が戻ってきただけで、利益ではない」と判断されるため、税金はかかりません。

自動で追加購入する「積立投資」や単発購入の「スポット購入」などで、同一の投資信託の購入口数が増えた場合、個別元本は移動平均によって再計算されます。

分配金を受け取るべきか、再投資すべきかを考える

投資信託には、「分配金あり」と「分配金なし(無分配型)」がありますが、制度上「分配金なし(無分配型)」としているものはほとんど存在せず、通常は、ほとんどの投資信託が「分配金あり」のものとなっています。ただ、この「分配金あり」も毎月や2か月に1回、あるいは四半期に1回や年に1回の決算時に分配を行ってきているものと、運用成績が良くても決算時に分配を行わずに、実質的に「分配金なし」となっているものがあります。

ではどうでして、「分配金あり」であっても、決算時に分配金を出すものと、運用成績が良くても出さないものがあるのでしょうか?そこには投資信託がもつ分配金の受け取り方法と税金の関係があるようです。

「分配金あり」のものは、多くの場合、投資の目的によって分配金を取引口座で「受け取る」か「再投資するか」を選ぶことができますが、どういう違いがあるのでしょうか?
「分配金あり」における「受け取る場合」と「再投資する場合」それぞれのメリット・デメリットから、それぞれどのような目的の人に適しているのかを見てみましょう。

分配金を「受け取る」メリット・デメリット

-メリット:定期的に現金収入がある

生活費や年金の足し、ボーナス代わりなど、運用成果を定期的に受け取って有効活用したい場合に適しています。メリットとしては、自分で売りの判断がつかない人にとっては、自動で定期的に解約してくれる点があるとも言えます。分配金を受け取る頻度も「毎月」から「年数回」などさまざまなパターンがあり、ライフスタイルや好みに合わせることができます。ただ、急に分配されないなどの可能性があることは理解しておきましょう。

-デメリット:運用効率が悪い

分配金を受け取るということは、運用資産の一部を受け取ることなので、再投資の効果が薄れてしまう場合があります。また、分配金に対して約20パーセントの税金が徴収されます。
長期的な運用を考えた場合には、投資効率が下がってしまう可能性があるため、「将来に向けて増やす」という目的がある場合には適していないと考えられます。

分配金を「再投資する」メリット・デメリット

-メリット:運用効率が高い

分配金を再投資することで、個別元本を増やすことができます。つまり、運用資金が増えていくため、複利の効果が期待できます。

老後の生活資金や退職金代わり、数年後にまとまった資金が欲しい場合など、中長期での資産形成に適しています。

-デメリット:運用期間が終わるまで、受け取れるものがない

再投資を選んだ場合、自分で換金を選択しない限り、運用期間が終わるまでは運用成果を受け取ることができません。そのため、投資をしている実感が得られないかもしれません。

また、再投資とは「いったん支払われた分配金を、そのまま投資に使う」ということです。そのため、利益から分配が出る場合は税金がかかります。中長期での運用目的の投資では、「無分配型」や分配金の頻度が低いものを選ぶことで複利効果を高めることができます。最も複利効果を高めるためには、利益から分配を出した場合は税金を取られるので、分配しないものや分配すると明記していても、実質的に分配してきていないファンドを購入する方が良いでしょう。

なお、決算時に支払われる分配金は、個人の元本により「普通分配金」と「特別分配金」に分けられ、利益から払い出される分配金、つまり、普通分配金には税金がかかりますが、元本から払い出される分配金である特別分配金は非課税となることを理解しておきましょう。

以上、「分配金あり」における「受け取る場合」と「再投資する場合」それぞれのメリット・デメリットについてご説明しました。それぞれについてご理解をいただき、ご自身の目的と照らして自分に合った投資信託を探していきましょう。

「分配金が多い=良い投資信託」とは限らない

投資信託を選ぶとき、過去の分配金の推移は「あて」にはなりません。たまたま運用がうまくいき分配金が多く出ていても、それが将来まで継続できるとは限らないからです。

また、分配金が多く支払われていることと、「利益が大きい」ことは別の問題です。特別分配金のように運用利益が出ていない場合でも支払われることがある一方で、運用会社の分配方針によっては運用利益が出ていても分配金に反映されない場合もあります。

「毎月分配型」のメリット・デメリット

毎月決算を行って分配金を支払う「毎月分配型」という投資信託があります。

メリットとしては、運用利益が上がっているタイミングで収益を分配金として受け取っておくことで、その後運用状況が悪くなったとしても、「既に利益は得た」と納得することができる点が挙げられます。資産をもつ年金受給者が、運用しながら定期的に資産を切り崩したい場合に向いていると言流でしょう。

デメリットは、やはり運用効率の悪さです。毎月分配型の投資信託は、再投資や積立投資をして「増やす」目的には適していません。毎月分配型を選んだのなら、その都度受け取ったほうが特性を活かせます。

分配金だけでなく、「トータルリターン」で考えることが重要

投資信託は、分配金の頻度や多さではなく「投資した元本がどれだけ増えたか」つまり「トータルリターン」で考えることが重要です。もちろん、元本が減る可能性もあります。投資信託は元本保証ではありません。

分配金に対する考え方は、投資家のライフスタイルや投資スタンスによって変わってきます。分配金の仕組みを知ることで、定期的にお金を受け取る運用がいいのか、あるいはじっくり大きく元本を育てて、まとまったお金を将来受け取る運用がいいのか、自分にあった商品を選ぶ指針になるはずです。自分がイメージした投資成果を得るために、改めて分配金について考えてみましょう。(提供:Wealth Road