渋谷区を代表する高級住宅街の「松濤(しょうとう)」。高級マンションも立ち並ぶ人気のエリアですが、どのようにして高級住宅街は誕生したのでしょうか。本記事では渋谷区松濤の街の歴史を紐解きつつ、どのように高級住宅街が生まれたのかについても解説します。

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渋谷区松濤は歴史ある街

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渋谷区松濤は、成り立ちが江戸時代に遡る歴史ある街です。今でこそ大繁華街を擁する渋谷ですが、江戸初期のころは松濤の地を含む渋谷周辺は「村はずれ」という地域でしかありませんでした。なぜなら松濤の場所は江戸府内・府外の境目に位置していたからです。渋谷が活性化するのは、1657年(明暦3年)に起こった明暦の大火以降になります。復興の波に乗って渋谷周辺は発展していったのです。

その後、1876年(明治9年)に徳川家から旧佐賀藩主であった鍋島家に松濤の地の払い下げが行われ「松濤園(しょうとうえん)」という茶園の経営を始めます。その目的は当時失業していた武士を救済するためでした。「松濤」と名付けられた松濤園のお茶は、静岡茶が広まるまで東京の人に愛飲されたといわれます。

1885年(明治18年)には渋谷駅が開業。続いて1900年(明治23年)には東海道線が開通しますが、開通をきっかけに静岡茶が流通するようになったことで松濤園は廃業することになりました。時は流れ1928年(昭和3年)に豊多摩郡渋谷町が字名町名地番を改正した際に大山、神山、大向の各部分を統合し、新しい街が誕生します。町名は松濤園にちなんで「松濤」と名付けられました。これが松濤という街の正式な始まりです。

さらに1932年(昭和7年)10月1日に渋谷区が誕生して渋谷区松濤となり1963年(昭和38年)の住居表示改正によって大山町、大向通り、栄通、代々木富ヶ谷町の一部が編入して現在の松濤一丁目、松濤二丁目が誕生しました。松濤一丁目は「忠犬ハチ公」の飼い主だった東京大学農学部教授の上野英三郎氏が住んでいたことでも知られています。

急死した上野氏の帰りを1925年(大正14年)から9年間にわたり毎日渋谷駅周辺で待ち続けた忠犬ハチ公のエピソードはあまりにも有名で、渋谷駅のシンボルといわれるまでになりました。

高級住宅街はいかにして生まれたのか

松濤の高級住宅街はどのような経緯で生まれたのでしょうか。江戸時代には徳川御三家の一角、紀州徳川家の下屋敷がありましたが、松濤に高級住宅が建てられるようになったのは大正時代といわれています。大正時代の末期に松濤園が廃業した跡地に、華族や政財界の要人、実業家などが次々に豪邸を建てたことで高級住宅街としての街並みが形成されました。

鍋島家の本邸もこの地に建てられましたが、本邸周辺の土地は数百坪単位で分譲されることになります。ところがこの土地を購入するには紹介者が必要でした。そこで政府の高官や大企業の重役など社会的地位の高い人たちが邸宅を構えるようになり、現在のような閑静な住宅街の基礎ができたのです。

松濤は交通アクセス良好

話を現代の松濤に移してみましょう。松濤の位置関係は、Bunkamuraの西側に広がる一帯の地域です。この地域には、松濤美術館や戸栗美術館、観世能楽堂などの文化施設があります。渋谷は東急グループのお膝元で文化事業に重点を置いているため、松濤地区もその影響を受けているのかもしれません。松濤は交通アクセスも良好です。

例えば鍋島松濤公園への最寄り駅は京王井の頭線の神泉駅ですが、渋谷駅からでも徒歩約10分で行くことができます。バスに乗らなくても往来できる距離にあるため、通勤・通学やショッピングともに至便な地域です。渋谷駅に出ればバス路線が充実しているため、各地域へ便利に移動できます。車で出かける場合もエリアの端が山手通りで首都高速にもアクセスしやすいなど交通に関しては豊富な選択肢から選ぶことが可能です。

松濤の住環境は?

松濤は、渋谷駅から徒歩10分程度とは思えない閑静な住環境が特長です。自然あふれる鍋島松濤公園もあり、利便性と豊かな自然が共存する理想的な立地です。松濤のマンションに目を向けると低層マンションの多さが目立ちます。第一種低層住居専用地域のため新規にマンションが建つことはほとんどなく、プレミアム感が維持されているのが分かるでしょう。

全9戸のすべてが角部屋というぜいたくな区分で知られる「プラウド松濤一丁目」や旧鍋島邸跡の約900坪の敷地に建てられたわずか26戸の「フォレストテラス松濤」など、ヴィンテージマンションが立ち並びます。住環境は良好ですが、デメリットは住宅街にスーパーやコンビニがほとんどないことです。渋谷までは至近距離のためショッピングには苦労しませんが、ちょっと日用品が不足したときに買いに行く店がないのは不便かもしれません。

松濤の歴史を思い浮かべながら高級住宅街を散策してみよう

歴史や街並みを知るだけでも高いステータスを感じる渋谷区松濤。大繁華街に近いエンターテイメントの魅力と、文化の香り豊かな高級住宅街としての風格が混然一体となった松濤の歴史を思い浮かべながら一度散策してみてはいかがでしょうか。ショッピングのついでに立ち寄ってみれば新たな発見があるかもしれません。(提供:Incomepress


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