6月に入り、日本においてデジタル通貨の導入に向け、議論が始まっています。メガバンクや大手通信会社を中心に、検討会を発足することが報道されています。デジタル通貨とは、現金に替わる決済手段として中央銀行が発行する電子的な通貨のことを指し、世界各国で研究が進んでいます。ここでは、日本におけるデジタル通貨となる「デジタル円」が普及したときの効果とリスクについて解説します。

デジタル円の発行に向けてメガバンクなどさまざまな企業が動き出した

デジタル円
(画像=putilov denis/stock.adobe.com)

世界の中央銀行で検討が進められていたデジタル通貨について、いよいよ日本でも企業を含めた検討が始まります。

検討会には、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、インターネットイニシアティブ、KDDI、セブン&アイ・ホールディングス、NTTグループ、JR東日本、森・浜田松本法律事務所が参加しました。デジタル円導入において、関連する各事業の代表的な企業が名を連ねています。

座長には、元日銀決済機構局長の山岡浩巳氏を迎え、オブザーバーとして、金融庁、財務省、総務省、経済産業省、日本銀行を招き、6月にスタート、9月末に報告書がまとめられる予定です。

検討会では、デジタル円を導入することのメリットやリスクが話し合われ、日本におけるデジタル円の方向性を検討します。

デジタル円で資金移動の手数料が下がり、経済は活性化も

デジタル円には、どのようなメリットがあるのでしょうか。デジタル円は、日本の中央銀行である日本銀行が発行するわけですから、信頼性があり、安心感が得られるのは間違いありません。たとえば、現金ではなく、スマートフォンなどを使ったキャッシュレスでの支払いに安心感が出ることで、普及が加速する効果が期待できます。

また、デジタル円の普及によって、銀行の窓口やATMから現金を引き出す手間が不要になります。資金移動の垣根が低くなることで、金融、観光、福祉、防犯などさまざまな分野にプラスの効果が生まれると期待されています。

リスク面について言及する

デジタル円についてはリスク面もあります。1つめは、デジタル円が普及することで現金での支払いの場面が減少してしまうことです。スマートフォンなどのキャッシュレス対応が進むことで、スマートフォンの操作が困難な人は、生活に困るのではないかという考え方です。

2つめは、すでに先行しているIT企業が運営するキャッシュレス決算サービスとデジタル円との区分です。すでに各社がさまざまなキャッシュレスサービスを開始しており、新たに、しかも公的なデジタル円が導入された場合、サービスの混在による混乱も予想されます。

そして3つめは、デジタル化によるサイバー攻撃やマネーロンダリングリスクの高まりです。

フェイスブックの「リブラ」構想が、デジタル通貨の検討に拍車をかける

デジタル通貨の検討が世界各国で急速に進んだ背景には、インターネットやSNSなどを通じて、世界のグローバル化が急速に進んだこともあるでしょう。

2019年には、世界各国がデジタル通貨を検討せざるを得ない出来事が起きました。それは、フェイスブックが企画したデジタルコイン「リブラ」の構想です。

フェイスブックは全世界に20億人を超えるユーザーを持ちます。国境を越えたデジタルコインであるリブラが登場すれば、ドル、ユーロ、円などの通貨に替わる決済手段になりかねなかったのです。これは世界の通貨の取引や供給管理の常識を大きく揺さぶりことにもなりかねません。

世界各国はリブラの発行をけん制しました。デジタル化の進んだ現代においては、現金に替わる決済手段として、中央銀行が発行する電子的な通貨であるデジタル通貨の早期検討が大きな課題と捉えられているわけです。

日本においてのデジタル円の検討のスタートも、世界の情勢の中で重要な意義を持っていると言えるでしょう。(提供:JPRIME


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