現在、インバウンドの激減によって逆風が吹いている民泊市場。新型コロナウイルスが長期化する懸念もあり、民泊から賃貸への転用を考えている経営者もいるようです。転用を検討・実行するときのチェックポイントは、どのような内容になるのでしょうか。
民泊から賃貸への転用 3つのチェックポイント
2018年6月、住宅宿泊事業法(民泊新法。年間180日以下なら宿泊事業ができる)の施行で解禁された民泊市場は急拡大してきましたが、新型コロナウイルスの影響によって2020年5月に初めて物件数が前月比でマイナスとなりました。
特に厳しいのはインバウンド比率が高かったエリアで、「利用客ゼロ」「すべてキャンセル」といった悲鳴が経営者から聞かれます。このような状況を受けて、民泊から賃貸への転用を検討している経営者もいるでしょう。それを実行するにあたっては、以下の3つのチェックポイントが重要になります。
- 賃貸転用に必要な手続き
- 住宅に適用される建築基準法や条例
- エリア内の賃貸ニーズ
これらすべてが揃わないと、賃貸への転用はうまくいきません。それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
チェック1.賃貸転用に必要な手続き
民泊から賃貸へ転用するために、必要な手続きがあります。この手続きを怠ると、行政から指導が入ることがあるため要注意です。手続きの内容は、どのような形態で民泊を運用しているかによって、以下の2つのケースに分かれます。
1つ目は、住宅宿泊事業法(民泊新法)の許可を得て民泊事業を行っているケースです。例えば、「入居者の募集が行われている家屋を民泊としても利用する」という申請内容であれば、転用時に民泊の廃業などの手続きをする必要はありません。申請内容が上記以外の場合は届出が必要になるケースもあるため、その場合は管轄する自治体などに問い合わせましょう。
もう1つは、簡易宿所など旅館業法の許可を取って民泊事業を行っているケースです。この場合は、以下に挙げる手続きが必要になると考えられます。
①管轄の保健所に対して(宿泊事業の)廃業届の提出
②営業許可証の返納
③建物によっては用途変更の確認申請
④管轄の消防署に対して(宿泊事業の)防火対象物廃業届の提出
⑤(共同住宅の場合)防火対象物使用開始届の提出 など
チェック2 .住宅に適用される建築基準法や条例
住宅に使われる建物と宿泊事業に使われる建物では、法的基準が異なります。宿泊事業を行うことを前提に建物を新築またはリフォームしている場合は、住宅に適用される建築基準法に基づいた仕様に変更しないと賃貸転用ができません。
併せて、自治体の条例をクリアする必要があります。例えば、共同住宅では1部屋あたりの最低面積が設定されていたり、駐輪場や駐車場の設置が義務付けられていたりするケースもあります。
チェック3.エリア内の賃貸ニーズ
必要な手続きや建築基準法、条例などをクリアしても、そもそも賃貸ニーズがなければ転用しても失敗するリスクが高いです。民泊(短期旅行者)のニーズはあっても、賃貸ニーズがないことも考えられるため、入居者募集(リーシング)を行う仲介会社などからエリア内の状況をヒアリングして、慎重に判断するのが賢明です。
賃貸転用した際に採算が合うか
チェック3の補足として、「賃貸転用した際に採算が合うか」という視点も必要です。立地や物件によっては、民泊では十分な利益が得られるものの、賃貸転用すると採算が合わないことも考えられます。どれくらいの家賃設定なら競争力があり、その設定で賃貸経営が成り立つかどうかをシミュレーションするべきです。
安易に賃貸転用を考えると、状況を悪化させる可能性も
民泊から賃貸へ転用する際は、「民泊で苦しいからとりあえず転用しよう……」と安易に考えないようにしてください。ここで紹介した手続きやリサーチの手間を省くと、トラブルや破綻のリスクが高くなってしまいます。
民泊から賃貸物件への転用が難しい場合は、視野を広げる必要があります。例えば、民泊のレンタルスペースへの転用などが考えられます(ただし、住宅宿泊事業法が適用されている施設は時間貸しができない)。また、物件によっては民泊をテレワーク拠点として企業に貸し出すことで状況を打開しようとする経営者もいます。あらゆる可能性を探りながら、ベターな選択をしましょう。(提供:YANUSY)
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