ネットやSNSで情報が得られる現在、マーケティングに大きな変革が訪れている。新規の市場や顧客の開拓に向けて、経営におけるチャネル(流通)戦略の重要性が増した。今回は、商品やサービスを効果的に消費者へ届けられるよう、チャネル戦略について学んでいこう。
チャネル戦略とは?
マーケティング戦略は企業活動には欠かせない。その中心となるマーケティングミックスは、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(コミュニケーション)の戦略で構成される。
商品戦略では製品の品質や種類、商品名などを定め、商品が完成したら価格戦略として標準価格を設定する。
その際、競合他社に対して価格的優位を目指したり、品質やターゲットとなる顧客を考慮して価格を高めに設定したりするなどの方針を定める。
その次のステップが今回焦点をあてるチャネル流通戦略である。商品を消費者に販売する上で鍵となる流通経路や販売場所について決定していく。チャネル戦略が固まり次第、商品をPRするコミュニケーション戦略へと移行する。
マーケティングのコア部分を占めるチャネル戦略の目的は、ターゲットとなる消費者が商品やサービスを購入しやすい環境を整備することだ。
チャネル戦略がうまく機能しないと、優れた商品も潜在的な顧客にはアプローチできない。
販売チャネルは2種類
現在、販売チャネルはオンラインと実店舗の2つに分かれる。
販売チャネル1.オンライン
オンラインであれば、自社のホームページや販売サイトを立ち上げ、顧客に直接販売できる。
しかし、企業のホームページや販売サイトに顧客を誘引するのは容易ではない。そこで、大手オンラインショッピングモールに出店する方法を検討したい。
こうしたサイト内で購入者からの評価を高めれば、企業や商品が口コミで広まったり、検索されやすくなったりする。商品やサービスの露出が増えれば売り上げも増加し、出店手数料に見合った利益が得られるだろう。
販売チャネル2.実店舗
オンライン販売が困難であれば、実店舗で商品やサービスを取り扱う。その場合、自社で店舗を構えたり、百貨店やショッピングモールといった小売店に出店したりする。
仮に販売する場所のイメージが湧かない場合は、ブランドの特性を考えるとよい。例えば、数十万円から数百万円するハンドバックを取り扱う高級ブランド店の立地を考えてみよう。
ニューヨークの5番街、ロンドンのボンドストリート、銀座などを想像した方もいるだろう。
こうした場所に拠点を設けることでブランド価値を誇示できる。当然、その価値を維持するには、住宅地にある商店街のような場所は対象外となる。
また、店舗販売のデメリットも見落としてはならない。疫病や災害によって小売業は大打撃を受けやすい。
営業自粛を迫られると売り上げが減り、店舗の賃料やテナント料が重くなる。
チャネル戦略に存在する「長さ」の概念
チャネル戦略では商品やサービスを顧客まで流通させる方法が重要だ。流通までの長さは、自社と消費者の間に卸売業者や小売業者を仲介させるかで異なる。
商品の認知度、営業能力、取引先のネットワークなどを総合的に勘案して、最も効果的なチャネル戦略を選択しなければならない。流通までの長さをふまえ、具体的な販売方法を3つ説明しよう。
販売方法1.顧客に直接販売
直接販売では、自社工場や契約工場などから中間業者を通さずに顧客へ直接販売する。中間マージンが発生しないため、消費者の購入価格を低く抑えられる。
価格戦略として、設定価格を下げて競合他社より優位に立ちたい場合に有効だろう。
一方、直接販売を成功させるには、顧客から認知してもらう必要があるため、知名度が浸透していないと苦戦を強いられる可能性が高い。また、商品の売れ行きが伸び悩んだ場合、在庫を自社で抱え込むリスクも潜在する。
販売方法2.小売業者を通して顧客に販売
知名度の低い企業が新商品を効果的に流通させるには、小売業者を活用する選択肢もある。
百貨店やショッピングモール、オンラインの総合モールなどに出展し、小売業者の知名度やブランド力、消費者からの信頼を借りながら商品を流通させる。
ただし、小売業者が消費者との間に入ることで中間マージンが発生するため、商品価格が高くなる。
販売方法3.卸売・小売業者を通して顧客に販売
新興企業の場合、百貨店やショッピングモールから信用してもらえない可能性もある。また、商品やサービスの開発力に長けている会社でも、営業力が乏しいと潜在的なヒット商品が埋もれてしまう。
営業先の開拓が困難な場合、卸売業者を通す方法が効果的だろう。卸売業者のネットワークを活用して小売業者に商品を卸してくれる。
販売会社は小売業者に営業する手間を省略でき、より早く商品やサービスを世に送り出すことが可能となる。当然、卸売業者が仲介することで商品の最終価格が高くなる。
しかし、流行商品の販売はスピード感が命であり、多少価格が上がっても需要に対応したいところだ。
流行に乗り遅れると価格を安くしても売れ残る可能性がある。仲介コストを気にせず卸売りを活用する判断もときには必要だ。
チャネル戦略には「幅」の概念もある
チャネル戦略には「幅」という概念にもとづき商品を販売する方法もある。販売スピードとブランド価値のどちらを優先するかで、最適な方法を選び分けるとよい。
販売方法1.開放的チャネル
開放的チャネルは、自社の製品やサービスを広く流通させる方法だ。取引をする小売業者や卸売業者について選り好みしない。
幅広く迅速に商品を流通できる反面、小売業者や卸売業者間の競争が激化しやすい。商品やサービスの価格が下落することから、安売りを望まない企業には適さない。
販売方法2.選択的チャネル
価格を維持しながらブランド力を保ちたい場合には、選択的チャネルが適している。
選択的チャネルでは、取引する小売業者や卸売業者を絞り込んでいく。開放的チャネルよりも、価格やブランド力を自社でコントロールしやすい。
高級品がスーパーのワゴンに積まれる事態などを回避し、自社ブランドの価値を維持できる。
販売方法3.排他的チャネル
ブランド力をさらにコントロールするには排他的チャネルが最適だろう。これは特定の店舗や業者と代理店契約を結び、製品やサービスの取り扱いを限定させる方法である。
取引業者が限られるため、価格やブランド価値などをコントロールしやすい。しかし、取引業者間で競争原理が働かないので、商品やサービスの競争力強化につながらない。
まとめ
右から左に商品やサービスを流すことを流通とは呼ばない。適切なチャネル戦略にもとづき、販売先や取引先の数を判断することが大切である。
もちろん、チャネル戦略を立案する前に自社の商品やサービスを分析しなければならない。その際は、商品やサービスの性質を見極め、市場における位置づけを明確にする。そうすれば、チャネル戦略の形も見えてくるだろう。(提供:THE OWNER)
文・志方拓雄(ビジネスライター)