米国4大IT企業群GAFAの一角であるアルファベット社傘下のGoogleは、再生可能エネルギー(自然エネルギー)の活用でリーダーシップをとっています。地球温暖化の阻止に向け、CO2(二酸化炭素)の削減は待ったなしの状況です。Googleではデータセンターで賄う電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指しています。どのような取り組みを行なっているのか、Googleの再生可能エネルギー対策について紹介します。
Googleのデータセンターでは膨大な電力を必要とする
Googleは世界最大のインターネット検索サービスであり、扱うデータが膨大なことから、データセンターの電力消費量は膨大な規模になります。さらにメールサービスのGmail、地図情報サービスのGoogleマップ、動画配信サービスのYou Tubeでも多くのユーザーを有しており、この需要を賄うために世界16ヵ所に大規模なデータセンターを設置しています。サービス利用者の拡大に伴い、今後も設置が増えていくと予想されています。
その消費電力量は2017年で76億kWh(キロワット時)に上ります。前年比で20%増加しており、消費電力の問題が同社の大きな課題になっているのです。Googleのデータセンターは、大量のコンピュータや通信機器が24時間、365日稼働し続けています。機器から発生する熱を抑えるための空調システムもかなりの電力量を消費するはずです。
一方で、地球温暖化阻止のためにCO2を削減することが社会的要請になっているのも事実です。そこで、消費電力の調達と、CO2削減を両立させるためにGoogleが目を付けたのが再生可能エネルギーです。Googleの再生可能エネルギーに対する取り組みを見てみましょう。
Googleはデータセンターで賄う電力を実は再生可能エネルギーで調達している
Googleでは、2012年からデータセンターで消費する電力を再生可能エネルギーで調達しています。再生可能エネルギーとは、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できる低炭素エネルギーのことを指します。おもな種類に、太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスなどがあり、エネルギー安全保障にも寄与する有望なエネルギー源です。
Bloomberg NEFの調べによると、Googleの再生可能エネルギー電力の購入契約量はAmazonの約2.5倍に及び世界最大といわれています。2012年から2017年までの期間に、世界各国で3GW(ギガワット=100万キロワット)の再生可能エネルギーの電力購入契約を結んできました。この事実からも、GoogleがGAFAの中で最も再生可能エネルギーの調達に力を注いでいることがわかります。
Googleではこれらの施策によって、2017年に電力消費量76億kWhと同量の電力を再生可能エネルギーで100%調達することを達成しています。
Googleは100%達成後も手をゆるめることなく、2019年9月19日にはこれまでで最大となる1,600MW(メガワット)の再生可能エネルギーを購入することを発表しました。米国、チリ、ヨーロッパにおいて18件にまたがる大規模な契約です。この契約により、Googleの太陽光発電と風力発電を合わせた購入量は5,500MWに達します。
Googleの再生可能エネルギーを活用した取り組みを解説
では、Googleが再生可能エネルギーを活用した取り組みについて、具体的に見てみましょう。
Nest Thermostat
Googleが家庭内の電力使用量を削減することを目的に発売した製品で、家庭内の空調機器を制御して最適な温度を保つための機器です。Googleによれば、この機器を設置した効果により、2017年には年間で72億kWhの電力節約につながっています。この数字は、Googleが全世界で使用する電力量(76億kWh)と同じ程度の規模になります。
Googleは2014年にスマートホーム関連製品を開発するNest Labs社を買収しており、家庭向け製品のラインアップを拡大しています。日本では「ネスト ラーニングサーモスタット」の名称によりamazonで販売されており、3~4万円台で購入できます。
Project Sunroof
住宅などの屋根に太陽光発電を導入することを支援するプロジェクトです。Project Sunroofは、都市や建物の様子を上空から見ることができる「Google Earth」の3次元データを活用して、太陽光発電の年間発電量を予測する無料のオンラインサービスです。
仕組みは、建物の形や傾斜、周辺の木などが作る影を分析して、太陽光パネルを設置できる面積を計算し、年間の発電量を予測するというものです。Project Sunroofを利用すると、太陽光による発電量と電気料金の節約になる額を計算できます。
米国大手企業との共同調達
GoogleはPPA(電気を利用者に売る電気事業者と発電事業者の間で結ぶ電力販売契約)よりも効率的な「共同調達」の取り組みを行なっています。米国のジョージア州で実施した方法で、地域の電力会社が太陽光発電の事業者とPPAを結んで、調達した電力をGoogle、Walmart、Target、Jonson & Jonsonの米国大手企業4社に供給します。
太陽光発電所は177MWの供給規模があり、2019年から2020年にかけ、Googleは79MW分を購入する予定です。この方法により、4社は初期投資の必要がなく、長期的に固定価格で太陽光発電の電力を購入できます。この対策が上手く機能すれば、今後も巨大企業が共同で再生可能エネルギーを調達する動きが広がるかもしれません。
Tomorrowとの協業
Googleはデンマークのグリーンテック企業Tomorrowと協業し、太陽光エネルギーと風力エネルギーの利用に関して、最適な利用時期を予測する取り組みを実施しています。
しかし、最適な時期を予測するにはGoogleは常に天候を監視する必要があります。それは発電所で作られる電力量が一定ではないためです。例えば、風力発電は風が吹かなくなれば価格が高くなるか利用不可になります。どこで作られた電力がどこに運ばれるかによって価格は常に変化するのです。
その欠点を補うためにはエネルギー経済を予測し、それに基づく膨大な量のデータ処理スケジュールを組まなければなりません。手間のかかる作業ですが、Googleに代わって翌日の天候を調べ、太陽光エネルギーの地域ごとの供給量を計算するのが、協業するTomorrowです。
Googleの再生可能エネルギーに対する今後の課題
Googleはこれまで再生可能エネルギーの電力を全世界で購入することにより、CO2排出量を削減してきましたが、課題もあります。それは、スマートフォンやスマートスピーカーをはじめとするハードウェア製品の販売急増に伴うCO2排出量の増加です。
スマートフォンは、新しい製品ほど電力使用量が増加する傾向にあります。同社が2018年に発売した「Pixel 3」の電力使用量は、2017年に発売した「Pixel 2」に比べて2倍になっています。新機種では、内臓ディスプレイやカメラの性能が上がり、決済機能などが追加されたことで、データ処理量が増えたことが増加の要因です。
CO2の排出量は、自社の事業活動によって排出されるスコープ1(直接排出分)とスコープ2(電力の使用などによる間接排出分)、それに取引先や顧客によって排出されるスコープ3に分かれます。新製品の電力使用量が増えると、販売台数の拡大に伴いスコープ3のCO2排出量が増加することになります。
しかし、スマートフォンの性能・機能拡大競争は今後も続く見込みであり、スマートフォンの電力使用量を大幅に削減する有効な対策は確立されていないことが課題になっています。
ここまで、世界最大の情報サービス企業Googleの再生可能エネルギー対策について見てきました。これまで数々の革新的なITサービスを開発してきたGoogleの取組は、地球温暖化阻止の鍵を握るCO2排出量の削減につながる対策として、今後も世界の注目を集めそうです。
※参照:公益財団法人自然エネルギー財団「Google 自然エネルギーの電力購入量が世界最大 すべての時間帯で100%達成を目指す」(提供:Renergy Online)