「RE100」は、温室効果ガス削減や再生可能エネルギーの普及に影響を与える国際的な存在。今後、ますます注目度が上がる可能性が高いため、ビジネスパーソンの基礎知識として覚えておきたいキーワードです。RE100の運営目的、国内外の加盟企業、そして、加盟企業の活動実例などを取り上げます。

RE100加盟企業の目標:全使用電力を2050年までに再エネに切り替え

RE100
(画像=ipopba/stock.adobe.com)

RE100とは、企業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギー(太陽光や風力などによる発電電力)でまかなうことを目標に掲げる国際的なビジネス・イニシアティブです。ちなみに、RE100の読み方は「アールイーひゃく」でRenewable Energy 100%の略です。

RE100が発足したのは2014年でイギリスの NGO(非政府組織)The Climate GroupとCDP
が運営しています。以来、急速に加盟企業が広がり、2019年後半にはグローバル企業220社、日本国内企業30社が加盟するまでに成長しています。

・RE100の加盟企業の一例

グローバル企業Apple
Google
IKEA
BMW
P&G
UNILEVER
国内企業ソニー
楽天
パナソニック
富士フイルムホールディングス
富士通
リコー
積水ハウス
イオン

RE100の加盟企業に対しては、「2050年まで」を目安に使用電力の100%を再生可能エネルギーに切り替えることが求められます。かなり高いハードルのように感じるかもしれませんが、AppleやGoogleなど一部の加盟企業はすでに使用電力の100%を再生可能エネルギーに切り替え、目標を達成しています。

RE100の加盟企業が、再生可能エネルギー100%に切り替えるための主な取り組みとしては、①再生可能エネルギーの発電所を直接所有する、②再生可能エネルギーの発電事業者に投資をする、③再生可能エネルギーを調達したとみなす証書を購入するなどが挙げられます。

RE100の国際的な位置づけと課題

注意したいのは、RE100は単なる再生可能エネルギーを推進する企業の集合体ではなく、国際的なビジネス・イニシアティブを掲げる団体ということです。

現在、国際的な地球環境の枠組みとしては「パリ協定」が代表で、気温上昇を産業革命前から2度以内に抑えることを目指しています。しかし、2019年にアメリカが離脱を表明したこと、新興国や途上国に対して効力を持たないことなどを理由に「世界的に見たときに目標達成が難しいのではないか」と疑問視する意見も聞かれます。このような「パリ協定」の限界が懸念される中、アメリカに拠点を置くグローバル企業が多数加盟する RE100に期待する向きもあります。

一方でRE100には課題もあります。それは排出量が多く温室効果ガス削減に欠かせない中国、インド、ロシアなどの企業の加盟が進まないことです。これらの国々で加盟が推奨される流れが生まれれば、RE100の影響力がさらに高まると期待されます。

国内では卒FIT電力をRE100企業が買い取る動きも?

国内のRE100の今後の動向としては、いわゆる「卒FIT電力」との関連性が深まるのではないかという見方もあります。日本では2019年11月以降、家庭用の太陽光設備で発電された電力は、 固定価格買取制度(FIT)の対象外になっています。この固定価格買取制度が終わった家庭用電力は「卒FIT」とも呼ばれます。RE100加盟企業は2050年までに100%の電力を再生可能エネルギーで賄うことを求められますが、自家発電などでは足りず、卒FITの電力を積極的に引き取る動きが期待されています。

RE100加盟企業の再生可能エネルギーの取り組み例

RE100加盟企業の具体的な活動や達成ペースはそれぞれ違います。ここでは一例として、Apple、ソニー、リコーの活動をクローズアップします。

Apple:すでに全電力の再生可能エネルギー100%達成を発表

近年のAppleは、世界有数の再生可能エネルギー先進企業として存在感を高めています。2019年段階で、世界中で展開する直営店、オフィス、データセンターこれらすべての施設の使用電力で再生可能エネルギー100%を達成しました。

具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギーを生み出す数多くの電源を保有。例えばApple本社の屋根には、17,000ワットもの電力を発電する太陽光パネルが設置されています。この他、風力、水力などの発電所やバイオマスを用いた燃料電池などを保有し電力を生み出しています。

これらと合わせて、太陽光や風力などを利用した新しい発電事業への出資、再生可能エネルギー発電事業者との売買契約の締結なども行っています。Appleでは自社だけでなく、サプライヤーにも再生可能エネルギー使用の輪を広げようとしています。

リコー:日本で初めてRE100に加盟 2050年までに100%達成

リコーは2017年に日本企業として初めてRE100に参加したことで知られます。2030年までに使用電力の30%を再生可能エネルギーに切替え、さらに2050年までに100%達成を目標に掲げています。

リコーの具体的な取り組みとしては、中国、タイ、日本にあるA3複合機の組み立て拠点での使用電力を2019年から再生可能エネルギーに切り換えました。また、欧州の販売会社10社でも使用電力を再生可能エネルギー100%に切り換えています。この他にも各拠点で切り替えが進んでいて、リコーの再生可能エネルギー推進が着実に進んでいる様子がうかがわれます。

ソニー:拠点間で電力を融通する仕組みを採用 2040年までに100%達成

ソニーはRE100に2018年に加盟。約5%の再生可能エネルギー比率を2040年までに100%にする目標を設定しています。ソニーをはじめとする国内のRE100加盟企業の前に立ちはだかるのは、日本の再生可能エネルギーの調達コストが高いこと。

これを解消すべく、ソニーは2020年に自社倉庫の屋根に設置した太陽光発電でつくった電力を対岸の自社工場に送る取り組みを開始。このように自社の拠点間で電力を効率的に融通させることで、通常、電力会社から電気を購入するよりもコストを抑えることが可能としています。このソニーの試みが成功すると、再生可能エネルギーを利用する企業の増加につながることが期待されます。

温室効果ガスを削減するには、消費者の選択も重要

ここでは、再生可能エネルギーをグローバルで推進させるエンジンRE100にフォーカスしてきました。その内容をまとめると以下のようになります。

RE100についてのまとめ

RE100とは、太陽光や風力などによる再生可能エネルギーで使用電力を100%まかなうことを目指す企業の国際的なイニシアティブです。2019年後半の時点でグローバル企業220社、日本国内企業30社が加盟しています。

RE100の国際的な位置づけのまとめ

国際的な環境問題解決の枠組みである「パリ協定」は、アメリカが離脱して不安が残ります。RE100にはアメリカに拠点を置くグローバル企業が多数加盟するため期待する向きもあります。

RE100の国内の動向のまとめ

家庭用の太陽光設備で作られた電力は、2019年11月以降、固定買取制度が終了しました。この「卒FIT」と呼ばれる電力をRE100加盟企業が積極活用することが期待されます。

RE100に加盟する企業の再生可能エネルギー需要は、2020年頃は250テラワット/時ですが、2030年頃は300テラワット/時を大きく超えてくる見通しです。このデータが示す通り、RE100が今後の再生可能エネルギー推進を後押しすることは間違いありません。

再生可能エネルギーの利用率を高めるには企業の高い意識が不可欠です。それと共に、私たち消費者が温室効果ガス削減に積極的な企業のサービスや商品を選んだり、株式や社債を通じて投資をしたりすることも欠かせません。その意味で「RE100に今後どのような企業が加盟していくのか」「各企業の取り組みはどうなっているか」などにアンテナを張っていく必要がありそうです。(提供:Renergy Online