長い歴史の中で、人も経済も都市に集中させることに重きを置いてきましたが、新型コロナウイルス感染症が都心部を中心に広がるにつれ、大都市に人口が集中していること自体がリスクであると認識されるようになってきました。そんななかで、従来から分散型都市の考え方はあったものの、大都市に集中していた機能を地方都市に分散させる「分散型都市」という考え方が注目を集めています。

Googleはトロントでのスマートシティ開発からの撤退を発表

分散型都市
(画像=kinwun/stock.adobe.com)

分散型都市の実現に向けた先進的な取り組みとして、大きな注目を集めていたのはGoogleがカナダ・トロントで行っていた「スマートシティ開発」です。

スマートシティとは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の技術を用いてインフラサービスを効率的に管理する、新しい都市の形態を意味します。Googleでは、トロントのオンタリオ湖沿いの地区にスマートシティを建てる計画「キーサイド」にいち早く取り組んでいました。

この計画では、配電や水道、通信網をすべて一元管理するネットワークや自動運転技術を用いたロボットタクシーの運行などが想定されていました。

この取り組みは、地方でも大都市のような生活を可能にする「分散型都市」の試金石として、世界中から注目を集めていました。しかし今回の新型コロナウイルス感染症では、人が密集する地域が問題視された影響で、スマートシティ開発からの撤退を発表する事態となりました。

トヨタは分散型都市「Woven City」の構想を進める

一方でGoogleと同様スマートシティの開発に取り組んでいたトヨタ自動車は、新型コロナウイルス感染症が収束した後も、引き続き開発を進めると公表しています。

トヨタでは、「Woven City」と題したプロジェクトにより、2021年以降に静岡県裾野市にスマートシティを建設すると発表しています。Woven Cityは、自動運転やスマートホームなどの最新技術を豊富に活用することで、住宅地として不向きであった山間部の土地の価値を高める構想となっています。

トヨタのWoven Cityが成功すれば、地方でも大都市と同様のインフラや生活水準を維持できる期待から、分散型都市のモデルケースとなるかが注目を集めています。

トヨタの執行役員である近健太氏は、「お客様のニーズに合わせる必要があるが、スマートシティ構想の大きな計画の変更はない」と述べています。Googleが撤退した分散型都市の試金石ともいえる取り組みを、トヨタがどのように実現できるか注目です。

分散型都市では食べ物やエネルギーの地産地消化が進む

分散型都市には、都市機能の分散による渋滞の解消や感染症の急速な蔓延リスクの低減など、さまざまなメリットがあります。一方で、感染症や自然災害の影響で、各地域が孤立するリスクが高まります。

そうしたリスクを回避する目的で、分散型都市では食べ物やエネルギーの地産地消化が進むといわれています。たとえば食べ物であれば、LED照明によって野菜を栽培する技術が注目を集めています。またエネルギーであれば、水素発電や再生可能エネルギーの活用などにより、街中だけでエネルギーの創出と利用を循環する仕組みが研究されています。

集中型都市のアンチテーゼとして考えられた分散型都市構想も、デザインの方法によっては集中型都市と同じ課題に直面することが見えてきました。そのため、食べ物やエネルギーの地産地消化など、分散化都市のメリットを明確に捉えながら、本当の意味で感染症に強い街づくりを考えていく必要がありそうです。

分散型都市構想が作り上げる新しい生活様式とは

分散型都市の構想は、大都市圏への人口集中を解消する手段として大きな注目を集めています。トヨタが構想を進めるWoven Cityは、その先進事例といえるプロジェクトです。

「withコロナ」「新しい生活様式」といわれる中で、私たちが新たに獲得する生活様式がどんなものなのか、本当に安全で快適な暮らしとは何か、考えるキッカケになるのではないでしょうか。(提供:JPRIME


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