新型コロナウイルス感染症の影響により、自動車業界では地球温暖化対策が最も大きな課題となっており、電気自動車(EV)への注目度が高まっています。新型コロナウイルス感染症によって変化する自動車業界を展望します。
気温が1~2度上昇するだけで感染症の蔓延リスクが高まるという予測
地球温暖化が人の健康に与える悪影響については、「京都議定書」が採択された1997年頃にはすでに、気温が1~2度上昇するだけで感染症の蔓延リスクが高まると予測されていました。
また、 2007年のIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書では、地球温暖化は特に適応能力が低い子どもや高齢者などに重大な影響を及ぼし、死亡や疾病、障害を被る人の数が増加することが予測されていました。
欧米では、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの現状を踏まえ、地球温暖化が人の健康に与える悪影響を強く認識することになり、地球温暖化を引き起こす原因として考えられるCO₂を削減する意識がさらに強まっています。
このCO₂削減の切り札として、世界各国のさまざまな企業が開発に力を入れているのが電気自動車です。すでに実用化され、2020年の全世界での販売台数は170万台となる見込みです。
米テスラがニーズを捉える
電気自動車で頭角を現しているのが米国のテスラ社です。2020年7月1日のニューヨーク株式市場では、株式時価総額が2,077億ドル(約22兆3,000億)となり、トヨタ自動車を上回りました。新型コロナウイルスによる影響で、競合他社が電気自動車の量産を再開するのが困難ななかで、テスラは中国での生産能力を平時並みに戻し、販売台数を伸ばしました。
テスラ製自動車は、近未来的なビジュアルに加え、電気自動車のイメージとはかけ離れた加速力を持ち、632キロメートルを充電なしで走れる航続距離、そして完全自動運転も見据えたハードウェアを搭載していることなど、圧倒的な性能を誇っています。
これまで、電気自動車は購買時のコストが高いことや充電が難しいといった理由で自立的な普及が見込めないとされてきました。そのため、自動車メーカーが電気自動車に取り組む理由は、CSR(企業の社会的責任)のアピールであるとする考え方もあったのです。しかし、自動車業界への投資の考え方はここにきて確実に変化しているようです。
電気自動車向けにFPGA と呼ぶ小型半導体などを製造、供給するインテルで、事業企画政策推進ダイレクターを務める野辺継男氏は「日本では慈善事業と捉えられがちですが、環境について考えつつも事業を拡大する企業への投資の方が、ハイリターンであるという考え方に変わってきている」と話しています。
地球に悪影響を与えない「ゼロインパクトカー構想」がビジネスになる世界へ
この新しい事業認識を経営方針として明確に打ち出した自動車メーカーの1つがダイムラーです。ダイムラーは、地球に悪影響を与えない自動車として「ゼロインパクトカー」方針を宣言しました。
自動車業界全体では、走行中の二酸化炭素(CO₂)を出さない対策を考えている企業は多く存在しますが、ダイムラーのゼロインパクトカーの考え方は、二酸化炭素(CO₂)を出さない車両だけではなく、サプライチェーンを含めた製造プロセスも視野に入れているのが特徴です。
前出の野辺氏が指摘するように、日本の自動車メーカーも地球温暖化などの環境に対する取り組みをCSR(企業の社会的責任)としてではなく、事業を拡大する取り組みの1つとして考える必要があるでしょう。社会的持続と経済的持続は人類のテーマといえますが、新型コロナウイルス感染症がこの両立を意外にも早く引き寄せるのかもしれません。
自動車へのニーズ急変に日本メーカーも対応する必要
新型コロナウイルス感染症は、地球規模で解決しなければならない課題への取り組みをさらに加速させていることがわかってきました。自動車業界においては、地球温暖化に対する対策が大きな課題であり、電気自動車(EV)により注目が集まっています。
本記事で紹介したテスラの株価は2020年7月18日現在、3ヵ月前の4月1日と比べてすでに3倍に値上がりしていることからも、市場における期待値の大きさがわかります。
こうした急速な市場のシフトに日本の自動車メーカーも対応が迫られているといえそうです。鍵を握るのは事業性を踏まえつつ、地球温暖化などの環境問題に取り組むことだといえます。(提供:JPRIME)
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