要旨

日銀短観
(画像=PIXTA)
  1. 9月短観では、内外での経済活動再開を受けて、景況感の底入れが確認されると予想する。大企業製造業では、中国をはじめとする海外経済の回復に伴う輸出の持ち直しや、国内での経済活動再開等に伴う需要回復を受けて景況感が底入れするだろう。非製造業でも国内経済の再開に加え、特別定額給付金などの経済対策の効果も一定程度あって景況感が持ち直しに転じると見込まれる。ただし、新型コロナの感染再拡大がサービス消費に対する逆風となったことで、改善幅は製造業を下回ると見ている。それぞれのD.I.の水準は依然としてコロナ拡大前を大幅に下回ることから、回復の鈍さが目立つ結果にもなるだろう。
  2. 先行きの景況感も総じて持ち直しが示されると予想。政府が経済活動と感染抑制の両立を図っていることから、今後もイベント等の制限緩和や経済対策による景気の回復が見込まれるためだ。ただし、内外での感染拡大に対する警戒が続くうえ、米中の対立激化など海外経済を巡る下振れリスクも燻っていることから、改善幅は限定的に留まるだろう。
  3. 2020年度の設備投資計画(全産業)は前年度比2.5%減に下方修正されると予想。例年、9月調査では上方修正される傾向が強いものの、新型コロナの感染拡大に伴って収益が大幅に悪化したうえ、事業環境の先行き不透明感も強い。企業の間で設備投資の撤回や見合わせ・先送りの動きが広がり、前回調査に続いて異例の下方修正になると予想している。
  4. 今回の短観は、内外で経済活動の再開が進んだことによって、企業の景況感がどの程度回復したかを計る材料に位置付けられるため、まずは足元・先行きにかけての回復ペースが注目される。また、実体経済への影響という面では設備投資計画の重要性が高い。収益が大幅に悪化し、先行きのV字回復も見込みづらいなかで、どこまで設備投資意欲が維持されているのかが日本経済の今後の回復ペースを占ううえでの注目ポイントになる。
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(画像=ニッセイ基礎研究所)