(本記事は、小杉樹彦氏の著書『世界一わかりやすい 20秒プレゼン実践メソッド 特別講義』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)
なぜ、日本人はプレゼン下手なのか?
早速だが、質問がある。
「あなたはプレゼンが苦手だろうか?」
自己評価で構わない。
これまでの経験を少し振り返ってみてほしい。
さて、あなたの答えを聞く前に、一つエピソードをお話しさせてもらいたい。
現在、私は大学で教鞭を執っているのだが、じつは、以前に学生にも同様の質問をしたことがある。
講義室にはおよそ200人の日本人学生がいた。
その中で、あなたは一体、何割の学生がこの質問に「YES」と答えたと思うだろうか?
5割か、それとも6割か?
もっと上を行って8割の学生が苦手だと答えたと思うだろうか?
では、答えを教えよう。
驚くべきことに、なんとその割合は100%だった。
講義室にいた約200人の学生全員が「プレゼン下手」であると手を挙げたのである。
ひょっとしたら、「それは日本人特有の『謙遜』の文化ではないか」と考える人もいるかもしれない。
私もそうであってほしいと願った。
そこで、実際に確かめようと思った私は、学生に簡単なグループワークを課し、後日プレゼンを求めることにした。
ところが、私の甘い期待は大きく裏切られる結果となった。
学生のプレゼンといったら、それはもう惨憺たるものだった。
□論理展開が支離滅裂で内容が伝わらない □誰に向かって話しているのかわからない □そもそも、何を話しているのか聞こえない
ほとんどの学生は自身のプレゼンが終わったら興味関心を失い、居眠りやスマホを弄り出してしまった。
私が助言を与えようにも、どこからコメントすればいいのか、目も当てられない光景が続いた。このような由々しき事態は、何も大学生だけではない。
私は約10年間にわたり、高校生から社会人まで幅広い年齢層の方のプレゼン指導に携わる機会があったが、概ね前述のようなプレゼン苦手意識は共通していた。
さて、冒頭の質問に戻るが、あなたの答えはいかがだろうか?
あなたも例外ではなく、彼ら彼女らと同じようにプレゼンが苦手なのではないだろうか。
なぜ、これほどまでに日本人の多くはプレゼンが下手なのか?
私が導き出した答えは単純明快で、それは「技術」と「練習」が不足しているからだ。
ハーバードMBAで初日に叩き込まれるスキル
前述のエピソードにはその後の続きがある。
学生のプレゼン力不足を憂いた私は、講義後に一人の男子学生に話しかけ、こう尋ねた。
「お疲れ様。今日は大変だったかもしれないけど、他の講義ではプレゼンをどう乗り切るの?」
すると、学生は次のように話してくれた。
「他の講義ですか?プレゼンが課されることなんて、ほとんどないですね。」
私は思わず、こう聞き返してしまった。
「え?じゃあ、今までの人生でプレゼンをする機会はなかったの?」
それに対して彼は、平然とこう答えたのである。
「全然ありませんでした。だから経験もないし、プレゼンのことはほとんどわからないです。」
私は彼の言葉を聞いて絶句した。
たしかに、「プロジェクト型学習」など先端教育を導入している一部の高校を除いて、一般的な高校では授業中に生徒がプレゼンを行なう機会はほとんどない。
又聞きではあるが、大学でも未だに一方通行の「知識教授」に終始した講義が少なくないそうだ。
せいぜい年に数回、プレゼンの機会があるかないかといった程度だろう。
これではプレゼン下手で当然だ。
高校、大学とプレゼンについて学んでこなかった人間が、社会人になった途端、突如として人々を魅了するようなプレゼンができるようになるわけがない。
研修で「プレゼンの初歩」をイチから丁寧に叩き込んでくれるような会社があるだろうか?
このご時世、中小企業であれば、研修があるだけマシなほうで、そもそもプレゼン教育の重要性を認識している人自体少ないだろう。
この会話から私は、日本人がプレゼン下手である根本原因は、「技術」「練習」不足だと考えたのである。
私も学生時代は大のプレゼン下手だった。
だが、プレゼンは間違いなく、「技術」と「練習」で上達する。
このことは私自身、身をもって学んだ。
事実、アメリカでは、なんと小学校から大学院まで積極的にプレゼン教育が取り入れられている。
毎年、超難関を突破したエリートが集まる世界トップレベルのビジネススクールである「ハーバード・ビジネススクール」でも学生は入学後、真っ先にプレゼン教育を受ける。
通常、一番大事なことは最初に教えるわけだが、それこそが何を隠そう、本書のテーマである「エレベーター・ピッチ(EP)」なのである。
EPはハーバード・ビジネススクールで講義初日に叩き込まれるほどの最重要スキルなのだ。
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