トークンの新規発行による資金調達「ICO(Initial Coin offering)」に代わる新たな資金調達として「STO(Security Token Offering)」が注目を集めています。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

セキュリティとは株や債券などの「証券」を意味しており、STOとは法規制に準拠した証券性を持つトークンによる新しい資金調達方法のことです。

今回の記事ではSTOで注目を集めているセキュリティトークンとは何か、その種類(株式・債権)や仕組みをわかりやすく解説していきます。

目次

  1. セキュリティトークンの定義
  2. セキュリティトークンの仕組み
    1. スマートコントラクト
    2. マルチシグ(マルチシグネチャ)
  3. セキュリティトークンとユーティリティトークンの違い
    1. 1.ユーセージトークン
    2. 2.ワークトークン
    3. 3.ハイブリッドトークン
  4. セキュリティートークン ステーブルコインとの違い
  5. まとめ

セキュリティトークンの定義

暗号資産業界ではトークンの発行が「有価証券」に該当するのか議論が繰り返されてきました。

トークン発行が「有価証券」として証券法の規制対象となるのか?

この判断基準として「Howeyテスト(ハウイテスト)」が用いられています。

「Howeyテスト」はその基準を以下のように定めています。

  1. 投資として資金の出資があること
  2. 投資先から収益が期待できること
  3. 投資先が共同事業であること
  4. 第三者の仕事による収益が期待できること

アメリカでは、この4項目に該当した場合にトークンは有価証券として認められると定義されています。

アメリカやアメリカの適格投資家を対象にしたトークン発行にはこの「Howeyテスト」に適合しているかどうかが重要になり、連邦証券法に則って登録義務が課せられます。

あくまで「Howeyテスト」は一つの定義にすぎませんが、世界各国で行われているセキュリティトークン発行は、その国の法規制に準拠して発行されています。

このことから一般的にセキュリティトークンは「ブロックチェーン上で有価証券をトークン化したもの」と定義されています。

(有価証券:株式や社債、不動産といった資産を持っていることを証明するもの)

セキュリティトークンの仕組み

セキュリティトークンは以下の技術が実装されています。

  • スマートコントラクト
  • マルチシグ(マルチシグネチャ)

スマートコントラクト

スマートコントラクトが私たちの身近で使われ始めたのは「自動販売機」が最初と言われています。

  1. 飲料水を買うのに必要な金額を投入
  2. 指定した飲料水のボタンを押す

この2つが契約条件となり、自動的に飲料水が提供されるようになっています。このスマートコントラクト技術によって、ブロックチェーン上に書き込んだプログラムが自動で契約を実行してくれます。

例えば、「ujo MUSIC」という音楽配信サービスではEthereumによって決済が自動で行われます。

消費者は楽曲を選び、その料金をブロックチェーン上で支払います。著作権料を分配する契約プログラムをスマートコントラクトに設定しているため、自動的に音楽家に収益が入る仕組みとなっています。支払いはEtherで行われ、これまで仲介業者と行われていた手続きを必要としません。

セキュリティトークンにもこのようにスマートコントラクト技術が実装されており、自動で契約が実行されます。このことで以下のようなメリットが私たちにもたらされます。

  1. 仲介手数料がかからなくなる。取引のコスト削減。
  2. 仲介業者が不要になる。支払いがスピーディーに。

また、スマートコントラクトを活用するにあたり、ブロックチェーン上で土地の所有権や契約内容が公開されます。分散化台帳技術によって情報の改ざんも難しくなるため、契約の透明性が向上し、安全性も確保できるようになります。

コンプライアンスが関係する事案についてもスマートコントラクトによって自動で執行されるように設定でき、取引の正当性が保証されます。

しかし、私たちが契約を紙ベースで取り交わす際には事業者同士の曖昧な解釈が存在します。そのような人と人との間で交わされる約束事などについては、スマートコントラクトでも定義づけが難しいといった問題も存在します。

マルチシグ(マルチシグネチャ)

マルチシグ(マルチシグネチャ) はブロックチェーン上でデータの処理を行う際に複数の秘密鍵による署名を必要とすることです。

オンライン銀行で振り込みを行う際に暗証番号と設定した合言葉を入れるのをイメージしていただければわかりやすいです。

このマルチシグ(マルチシグネチャ)の仕組みがセキュリティトークンには実装されています。

また、セキュリティトークンは世界各国の証券法などの規制に基づいた金融商品をトークン化します。KYC(身元確認)、AML(マネーロンダリング対策) に事前に対応しているためにスキャムの排除にも繋がります。

セキュリティトークンの仕組みについて理解したところで、ユーティリティトークンやステーブルコインとの違いについても確認しておきましょう。

セキュリティトークンとユーティリティトークンの違い

ユーティリティトークンは主に3種類あるとされています。

  1. ユーセージトークン
  2. ワークトークン
  3. ハイブリッドトークン

ユーティリティトークンは「サービスを利用する上で使えるトークン」と言えるでしょう。セキュリティトークンのように証券法に準拠している必要はありませんし、あくまでユーティリティトークンはサービスの利用を目的に作られています。

1.ユーセージトークン

ユーティリティトークンの代表格であるビットコインは所有者がビットコインブロックチェーンを利用する際の手数料を払うために使われます。このようにサービスを利用できるようになるユーティリティトークンは「ユーセージトークン」と言います。

2.ワークトークン

また、オーガーではREPトークンによって未来予想市場を作る「働きかけ」ができます。そのため「ワークトークン」と呼ばれ、「働きかけ」をすることで対価を受け取ることができます。

3.ハイブリッドトークン

イーサリアムの場合は「ハイブリッドトークン」と呼ばれ、Etherトークンを使用してスマートコントラクトの実行を行えます。そして、このスマートコントラクトによってプラットフォームの拡張を目指しています。

セキュリティートークン ステーブルコインとの違い

ビットコインなど仮想通貨は価格の変動が激しく、実用性が低いとされることもあります。そこで価格が安定するように作られたのが「ステーブルコイン」です。

日本でも「GMO Japanese Yen」のように法定通貨と連動したステーブルコインの発行が行われています。価格変動(ボラティリティ)が少ないために、価格の乱高下を理由に投資を敬遠していた投資家からも投資を募ることができます。

価格が安定しているために実用性が高く、将来的にはハイパーインフラに悩む国々の金融インフラとしても期待されています。

セキュリティトークンは規制に準拠した証券をトークンを発行しますが、ステーブルコインはドル、円といった法定通貨をトークン化している点で違いがあります。また、金や原油を担保にして発行されるのもステーブルコインの特徴です。

まとめ

改めてポイントをまとめると以下のようになります。

  1. セキュリティトークンは「ブロックチェーン上で有価証券をトークン化したもの」と定義される
  2. スマートコントラクトによって仲介者が不要になり、コストが削減される
  3. セキュリティトークンを活用した資金調達「STO」は各国の法規制に準拠するため市場の健全性を損なうことながないとして注目を集めている(提供:STOnline