「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェット氏が、日本の総合商社の株に投資をしたことが話題となっている。一体なぜ、バフェット氏は日本の商社株に目をつけたのか。その理由を考えていこう。

「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏

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(画像=MQ-Illustrations/stock.adobe.com)

まず、バフェット氏がどのような人物であるか紹介していこう。

バフェット氏は、米投資会社バークシャー・ハサウェイの会長兼CEO(最高経営責任者)だ。バフェット氏はこの投資会社を通じて株式投資を積極的に展開し、資産を大きく増やしていることで知られている。

世界から注目されるバフェット氏

バフェット氏がどのような銘柄に投資したかは、投資の世界、金融の世界では大きな関心事で、資産運用をしている個人投資家の中には、バフェット氏の銘柄選びを参考にしている人が少なくない。バフェット氏に関する書籍は数多く出版されており、投資本のバイブルと崇めている人も多い。

バフェット氏の投資手法としては「バリュー投資」が有名だ。企業の本質的価値よりも低く株式市場で評価されている株式を購入・保有することで、将来的な値上がりで大きな利益を得ようという手法だ。

バークシャー・ハサウェイが新たに保有した日本の商社5社は?

新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済に大きなダメージが出る中、バフェット氏がどのような戦術に出るかについては、世界的に注目を集め続けている。そのような中で、バークシャー・ハサウェイが日本の商社株を新たに保有したため、話題になったわけだ。

バフェット氏はいわゆる”五大商社”に投資した

バークシャー・ハサウェイが新たに保有したのは、三菱商事と三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の商社5社の株式だ。報道によると、持ち株比率は各社5%程度となっており、今後は10%近くまでに持ち株比率を高める可能性があるようだ。では冒頭のテーマに戻ろう。なぜバフェット氏は日本の商社株に投資したのだろうか。

バフェット氏が日本の商社株に投資した理由を考えてみる

バフェット氏が日本の商社株に投資した理由について、バフェット氏自身からその理由が明確に語られているわけではない。しかし、最近の日本の商社株の値動きや決算の数字を見てみると、その理由がおぼろげながら推測できる。

日本の商社株は回復が顕著

新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業が経営に大打撃を受け、株価の落ち込みが避けられない状況となっている。日本の商社も同様に株価が下落したが、ほかの業種よりも株価の回復傾向が顕著な状況となっている。

たとえば2019年末の株価を基準にした場合、伊藤忠商事と三井物産は今年9月初旬にその株価と同程度もしくはその株価を超える状況となっており、ほかの3社も8月に入ってから回復が鮮明になっている。このようなことにバフェット氏が有望性を感じ、日本の商社に軒並み投資した可能性は十分に考えられるだろう。

日本の商社の潜在的な可能性

バフェット氏お得意のバリュー投資の視点で日本の商社株に投資したと考えるのであれば、バフェット氏が日本の商社の潜在的な可能性に着目しているということになる。

確かに近年、日本の商社の可能性に注目している投資家は多い。2019年3月期の決算の数字を知ると、これらに対する説得力が増す。2019年3月期、三菱商事と伊藤忠商事、丸紅、住友商事の4社は過去最高益を叩き出しており、どことなく前途洋々といったムードとなっていた。

新型コロナウイルスによって株式市場は混乱しているが、企業の本質的価値を重視するバリュー投資の考え方をバフェット氏が素直に実践したのなら、日本の商社株が選ばれたことに合点がいくわけだ。

ドル安を狙った投資という見方も

ドル安を狙って日本株を投資先として重要視したという見方も出ている。

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化して以降、今もなだらかな「円高ドル安」の傾向が続いている。今年2月下旬では1ドル111円台だった為替相場は9月中旬に入って1ドル105円台まで円高ドル安に動いている。

さらにドル安が進むとすれば、いまのうちに日本株を保有しておけば、ドル側から見れば大きな利益を将来的に見込める。このような理由で、バフェット氏が日本株に注目したのでは、という仮説が成り立つわけだ。バフェット氏が本当にそう考えているなら、日本の商社株の持ち株比率をさらに高めることも十分にあり得るだろう。

「バフェット氏の投資=正解」とは限らない

バフェット氏が日本の商社株に新たに投資した理由としては、前項で述べたように少なくとも3つ考えられる。今後しばらくはバフェット氏が日本の商社株の持株比率を高めるか、注目したいところだ。

このようなバフェット氏の戦術を真似しようとしている個人投資家も多いと思うが、投資の難しいところは、バフェット氏のこの動きを真似したからといって、利益を100%残せるとは限らないことだ。このことは改めて肝に銘じておきたいところだ。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部