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米大統領選挙後は不透明感解消でドル高に向かう

大和アセットマネジメント チーフ為替ストラテジスト / 亀岡 裕次
週刊金融財政事情 2020年10月12日号

 今年11月の米大統領・議会選後のドル円相場の行方に関心が高まっている。1973年以降の為替動向を振り返ると、議会で民主党が多数政党となったときにドル円の下落確率が高い。共和党に比べ民主党は保護貿易主義とされることが多く、保護主義が強いと米国の輸出を有利にするためにドル安を志向しやすいためだ。

 ところが政権政党別に見ると、共和党政権時にドル円の下落確率が高い。これは議会が共和党多数でなくても同様である。共和党政権下では、経済環境が悪化することなどによりドル円が下落するケースが多く、民主党政権下では、経済環境が改善したことによりドル円が上昇するケースが多かった。

 実は、議会が民主党多数の場合にドル円の下落確率が高いのも、保護主義政策が寄与したことだけが原因ではなく、米景気が悪化してドル安に働いたことも原因として挙げられる。政権や議会の政策だけではなく、経済環境によっても為替は左右されやすい。つまり、政権と議会が民主党支配となっても、ドル円が下落するとは限らないことを念頭に置くべきである。

 トランプ政権はこれまで強力な対中圧力をかけ、議会も中国への圧力をかける姿勢で両党一致しており、すでに政権・議会とも十分保護主義的である。そのため、議会が民主党支配となったところでこの傾向に変化はないだろう。むしろ、バイデン氏が勝利した場合は米中対立の緩和を期待して円安・ドル高に傾く可能性もある。次期政権では、米国経済の回復動向に加え、対中政策の強弱にドル円は左右されやすいだろう。

 次に、過去のドル円相場を平均化すると、大統領選挙年の8~11月には下落傾向となるが、その後12月にかけて上昇傾向となり、翌年の大統領就任年には前半を中心にドル円が堅調に推移する傾向がある(図表)。これは、選挙前よりも選挙後の方が、次期政権の不透明感が解消して、政策期待などからリスクオンの円売り・ドル買いが増えやすいためとみられる。

 今年のドル円も7月末に下落した後は、1ドル=104~106円台で低迷しており、先行き不透明感が円売り・ドル買いを慎重にさせているようだ。新型コロナウイルスの感染抑制がリスクオンの条件となるだろうが、選挙後は不透明感解消により、ドル円が106~108円程度へと上昇する可能性はありそうだ。

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(提供:きんざいOnlineより)