日本銀行は9日、「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」と題した19ページにわたる文書を公表した。

公表された文書では、日銀のCBDCについての評価や課題が書かれている。

日銀
(画像=月刊暗号資産)

日銀は、中央銀行デジタルマネー、CBDCについて「既存の中央銀行預金とは異なる、新たな形態の電子的な中央銀行マネー」と説明。

日本銀行
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「現時点でCBDCを発行する計画はないが、今後の様々な環境変化に的確に対応できるようしっかり準備しておくことが重要」とCBDCに対する基本姿勢を明かした。

また、一般利用型CBDCに期待される基本的な機能と役割として、

  1. 現金と並ぶ決済手段の導入
  2. 民間決済サービスのサポート
  3. デジタル社会にふさわしい決済

と、システムの構築とメリットを述べつつ、「現金に対する需要がある限り、現金の供給についても責任を持って続けていく」と、現在の通貨についても否定しなかった。

日本銀行
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今回、日銀が公表した文書の中で注目すべきはCBDCの「実証実験」への取り組みだ。

日銀は「これまでのようなリサーチ中心の検討にとどまらず、実証実験の実施を通じて、より具体的・実務的な検討を行っていく。まずは、「概念実証」(Proof of Concept)のプロセスを通じて、CBDCの基本的な機能や具備すべき特性が技術的に実現可能かどうかを検証する。そのうえで、必要と判断されれば、パイロット実験の要否について検討する」と表明した。

日銀の実証実験の取り組みは以下の通り。

  1. 概念実証フェーズ1:システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、「発行、流通、還収」の基本機能に関する検証を行う。
  2. 概念実証フェーズ2:フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加して、その実現可能性などを検証する。
  3. パイロット実験 概念実証を経て、さらに必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実地に参加する形でのパイロット実験を行うことも視野に入れて検討していく。

上記のうち、「概念実証フェーズ1」は、2021年度の早い時期に開始することを目指していると、具体的なスケジュールも公開した。

日銀は現時点におけるCBDCに対する取り組みのまとめとして、「実証実験と並行して、CBDCの発行に関して考慮すべきポイントなどを踏まえ、 制度設計面の検討を深めていく。内外関係者との連携も重要」とした。

その上で、考慮するポイントとして、物価の安定や金融システムの安定との関係、イノベーションの促進、プライバシーの確保と利用者情報の取扱い、クロスボーダー決済との関係を挙げた。

これらの課題を踏まえて、さらに必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実地に参加する形でのパイロット実験を行うことも視野に入れて検討するという。

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日銀は文書の最後に、「CBDCを導入するか否かは、最終的に国民の十分な理解が得られるかどうかにかかっている点を踏まえ、今後とも、対外的な説明をしっかりと行っていく所存である」と締め括った。(提供:月刊暗号資産