9月29日、NTT <9432> は連結対象子会社のNTTドコモ(以下、ドコモ) <9437> をTOB(株式公開買い付け)を通じて完全子会社化すると発表した。それに伴いドコモは上場廃止となる。
NTTはドコモ株の約66%を保有する筆頭株主であるが、残りの一般株主らが保有する約34%の株式をTOBで取得する。TOB価格は発表前の9月28日の引値2775円に対し約4割のプレミアムを乗せた3900円で、買付期間は9月30日から11月16日となる。取得総額は約4兆3000億円で、日本市場としては過去最大のTOBディールだ。ちなみに、ドコモの株価はTOB価格にサヤ寄せする形で9月29日にストップ高(15.8%高)の3213円を記録、翌30日も終値で20.9%高の3885円を付けるなどわずか2営業日で40.0%の上昇となった。
5G、6Gでプレゼンスを高めるか?
NTTはTOBの狙いの一つとして、次世代通信市場での成長戦略を挙げている。ドコモはNTTグループのモバイル戦略を担うキーカンパニーであるが、5G、6Gで世界的プレゼンスを高めるには巨大な設備投資を必要とする。加えて、5G、6Gではモバイルネットワークを提供するだけでなく、ネットワークを活用したソリューションやデータのAI(人工知能)解析等のコンサルティングでも包括的なサービスを提供する必要がある。次世代通信市場でグローバルな成長戦略を実現するためには、巨額設備投資や大型M&Aなど機動的な経営判断が不可欠であり、グループ経営の強化を視野に入れて今回のTOBを決断したという。
ちなみに、NTTの前身は1952年に設立した日本電信電話公社という政府系機関であった。日本で通信事業を普及する役割を担ってきた日本電信電話公社は1985年に民営化し、1987年に株式上場を果たした。一方、ドコモはNTTの移動体通信部門から1991年に独立、1998年に上場している。NTTは日本の通信事業の歴史を象徴する企業であり、今回のドコモ完全子会社化で、いよいよ世界を見据えた成長戦略を展開することとなる。