バイオマス発電は、再生可能エネルギーを活用した新しい発電方式です。環境にやさしいだけでなく利回りの高さから投資対象としても注目されています。バイオマス発電投資とはどんな仕組みでどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

バイオマス発電とは

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(画像=hasehase2/stock.adobe.com)

バイオマス発電とは、動植物などの生物資源(バイオマス)をエネルギー源とする発電方式です。具体的には、以下のような資源を活用して発電します。

  • メタン発酵ガス:下水汚泥、家畜糞尿、食品残さ由来のメタンガス
  • 木質バイオマス:間伐材、主伐材
  • 一般木質バイオマス:製材端材、輸入材、剪定枝
  • バイオマス液体燃料:パーム油
  • 建設資材廃棄物:リサイクル木材など
  • 一般廃棄物:木くず、紙、食品残さ、廃食用油

これらは廃棄物として処理されるものですが、バイオマス発電はその廃棄物を燃料として発電できるのが特徴です。バイオマスを燃料とした発電は廃棄物の再利用や減少につながるため、環境にやさしい発電方式だといえるでしょう。

バイオマス発電が投資対象となる理由

バイオマス発電は、再生可能エネルギーの「固定価格買取制度(FIT)」の対象で国が固定価格で電気の買取を保証しています。そのため、バイオマス発電の電気を売却することで長期にわたって安定した収益が期待できるのです。バイオマス発電の買取価格は、他の電源に比べると高めに設定されています。

例えば木質バイオマスの場合、2020年度の1kWhあたりの買取価格は2,000kW以上で32円+税、2,000kW未満で40円+税です。

一方、他の電源の買取価格は1 kWhあたり10~20円台が多くなっています。バイオマス発電投資は、金融商品のように価格変動を気にする必要がなく不動産投資のように入居者を見つける必要もありません。経済産業省は2030年度の再生可能エネルギー比率22~24%(2018年度は16.9%)を目指しており、今後はバイオマス発電の普及が進むことが期待されます。

バイオマス発電投資で期待できる利回り

バイオマス発電投資は、買取価格が他の電源に比べて高いことから高利回りが期待できます。しかしバイオマス発電は燃料となる廃棄物の種類が多く電気の買取価格やコストも燃料の種類によって異なるため、諸条件によって利回りは変わってくることがデメリットです。例えばクラウドファンデングのバイオマス発電関連のファンドでは、利回りが6~7%程度に設定されていることが多いため、一つの目安にするといいでしょう。

バイオマス発電投資に必要な初期費用とランニングコスト

資源エネルギー庁(経済産業省)の発電コスト検証ワーキンググループの資料では、木質専焼のプラント(5,700 kW規模)を設置する場合、建築費は1 kWあたり39万8,000円(約22億6,700億円)かかると試算しています。発電所の規模や燃料の種類によっても大きく変わってきますが、新たにバイオマス発電所を設置しようとすると高額な初期費用がかかることが理解できるでしょう。

またバイオマス発電の発電コストは1 kWhあたり29.7円と試算されており具体的には以下の費用がかかります。

  • 燃料費
  • 運転維持費(人件費、修繕費)
  • 資本費(建築費、固定資産税、廃棄費用)
  • 政策経費

これらの費用のうち多くを占めるのが燃料費です。燃料となる廃棄物を安く調達できればランニングコストを削減できるため、収益性の向上につながります。

バイオマス発電投資のメリット

バイオマス発電投資には、以下のようなメリットがあります。

地球温暖化などの環境問題の改善に貢献できる

地球温暖化を防ぐには、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの発生を抑制することが必要です。バイオマス資源を燃料とした発電は、地球温暖化に対する国際的な取り組みのための国際条約「京都議定書」取り扱いでは、CO2を排出しないものとされています。またバイオマス発電は活用されていない廃棄物を燃料として使用するため、廃棄物の再利用や減少につながるでしょう。

このようにバイオマス発電は環境に配慮した発電方式であるため、投資を通じて地球温暖化などの環境問題の改善に貢献が期待できます。

地域環境の改善・活性化が期待できる

バイオマス発電投資は、地域環境の改善・活性化につながることも魅力の一つです。日本が抱える「人口減少」や「少子高齢化」といった課題を改善するには、地方・地域の活性化に取り組まなくてはなりません。家畜排せつ物や稲わら、林地残材など国内の農山漁村に存在するバイオマス資源を活用すれば地域の自然循環環境機能を維持増進し、地方・地域の持続的発展を図ることが可能です。

また発電所の規模によっては新たな雇用を生み地方経済の維持・発展につながる可能性もあります。

高い利回りが期待できる

2020年時点の日本は、低金利が続いており預貯金だけでお金を増やすのは難しい状況です。金融商品では、株式平均利回り(2020年8月)が東証一部上場企業で2%程度となっています。また不動産投資は平均表面利回りが7~9%程度のため(※全国平均)、実質利回りは3~5%程度だと考えられるでしょう。一方バイオマス発電投資は高い利回りが期待できます。

表面利回りが10%を超える太陽光発電投資よりも電気の固定買取価格は高く設定されていることは大きな魅力です。実質利回りは、ランニングコストによっても変わってきますが、バイオマス発電関連ファンドの利回りは6~7%に設定されていることが多いため、投資を判断する際の目安になるでしょう。

バイオマス発電投資のデメリット

バイオマス発電投資は、先程紹介したメリットがある一方で以下のようなデメリットもあります。

普及率が低い

2018年度における再生可能エネルギーの内訳を確認すると水力と太陽光が約8割を占めており、バイオマスは1割弱にとどまっています。経済産業省は2030年度の再生可能エネルギー比率22~24%を目指していますが、その内訳においてもバイオマスは再生可能エネルギー全体の1~2割しかありません。バイオマス発電の普及が進まないと将来のリスクを見通すことが難しくなり投資先として定着しない可能性があります。

燃料の収集や運搬にコストがかかる

バイオマス発電は間伐材や家畜排せつ物、食品残さといった廃棄物を燃料にするため、燃料の収集や運搬にコストがかかります。またバイオマス発電の普及が進むと廃棄物が減少し安定的に燃料を確保するのが難しくなるかもしれません。バイオマス発電所を長期にわたって安定的に運営するには、燃料の調達コスト抑制と安定供給が課題です。

バイオマス発電投資をはじめる手段が少ない

バイオマス発電投資は、投資をはじめる手段が少ないのもデメリットの一つです。バイオマス発電所を建設するには多額の資金がかかるため、個人が発電所を作るのは現実的ではありません。また太陽光発電投資のように個人向けの物件売買はほとんど行われていません。現状個人がバイオマス発電投資を行うには以下の2つの方法が考えられます。

  • クラウドソーシングのバイオマス発電関連ファンドに投資する
  • バイオマス発電を手がける企業に投資する

個人がバイオマス発電の物件に直接投資できるようになるには、もう少し時間がかかるでしょう。

バイオマス発電投資の特徴を理解しておこう

バイオマス発電投資は、高い利回りが期待でき投資を通じて地球温暖化などの環境問題の改善に貢献できるのが魅力です。2020年時点では、個人がバイオマス発電投資をはじめる手段は限られています。しかし今後は太陽光発電のように物件に直接投資できるようになる可能性もあるため、バイオマス発電の動向を注視しておきましょう。(提供:Renergy Online