前回は投資信託の種類について3つの分類で整理してお伝えしました。今回の連載第11回では、つみたてNISAのラインナップの大半を占める「インデックス投信」について、商品概要やメリット、デメリットを解説します。
つみたてNISA制度のおさらい
つみたてNISAとは、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。公的年金や医療費などの社会保障費が年々膨らみ、今後は今までのような手厚い社会保障を続けていくことが難しくなっています。そこで、「豊かな老後を過ごせるよう、公的年金に加えて自助努力をしましょう」というメッセージを込めて国が国民の長期的な資産形成を後押しする目的で、投資を始めやすくするために作った制度がつみたてNISAです。
NISA(少額投資非課税制度)の開始当初は年間の非課税枠が120万円で期限が5年間の「一般NISA」だけでしたが、より長期の資産形成を促進するために18年1月から「つみたてNISA」がスタートしました。資産運用にかかるインカムゲイン(配当金、分配金)とキャピタルゲイン(売買差益)の税率20.315%が非課税になります。新規投資枠として毎年40万円を上限に、最長20年間、最大800万円の非課税枠を利用することができます。
一般NISAとつみたてNISAは併用できませんが、つみたてNISAのほうが長期の資産形成には向いているといえます。現在、つみたてNISAの投資可能期間は2037年までとなっていますが、24年に始まる新制度で2042年まで延期される予定です。また将来的には、NISAはつみたてNISAに一本化させる案が浮上しているそうです。
インデックス投信は長期、分散投資向けの金融商品
つみたてNISAでは投資対象商品が決まっています。長期の積立・分散投資に適したコストの低い、公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されています。一定の基準をクリアして認可された投信とETFだけがつみたてNISAの投資対象なのです。
例えば、公募株式投資信託の場合、以下の要件をすべて満たす条件があります。
・販売手数料がゼロ(ノーロード)
・信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定
・顧客一人一人に対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること
・信託契約期間が無期限または20年以上であること
・分配頻度が毎月でないこと
・ヘッジ目的の場合等を除きデリバティブ取引による運用を行っていないこと
基本的に、投資初心者でも、長期の資産運用、分散投資が出来るように、それにふさわしい投信がラインアップされているのです。20年9月15日時点では、インデックス運用のファンドが158本、アクティブ運用のファンドは18本、ETFが7本認可されています。
インデックス投信のメリット・デメリット
インデックス投信とは、ファンド(投資信託)の値動きが特定の指数と連動することを目指す投資信託です。日経平均型のインデックス投信は、つみたてNISA対象の158本のうち16本あります(2020年9月 15日時点)。すべてのファンドが日経平均に連動することを目指しており、そのために日経平均に採用された225銘柄を保有します。ファンドによる違いは、運用会社とコストです。
インデックス投信のメリットとして、以下のようなポイントがあげられます。
①各アセットクラスを代表する指数に連動したリターンが期待できる
②アクティブファンドよりもコストが安い
③連動を目指す指数を確認すればファンドの動きが大まかにフォロー出来る
デメリットとして、以下のポイントがあげられます。
①狙ったアセットクラスの平均以上のリターンは狙えない
②おまかせ運用になりがちで金融リテラシーが身につきにくい
③指数に投資するため、投資先は玉石混交となる(良い銘柄だけに投資できない)
一番大切なのはコスト面です。信託報酬の現状を見ると、NISA対象ファンドでは、インデックス投信の平均が0.31%、アクティブ投信は1.03%です。「たった0.72%の違いか」と思うかもしれませんが、20年という長期では、無視出来ない差となります。運用金額が100万円なら7,200円、1,000万円なら7.2万円、1億円なら72万円が年間の差となります。
一方、アクティブファンドには、市場環境次第では、インデックスを大きく上回るリターンを出すことがあります。運用によっては下回ることもあり得ますので、アクティブファンドを選ぶ場合は、過去の実績、運用方針、どういう相場環境のときにプラスアルファが期待出来るかなどを精査し、判断する必要があるでしょう。
つみたてNISAは長い期間の投資に向いている制度です。下落相場で恐れて売ると資産は増えません。下落時にもしっかりコツコツ買い続けることで、将来花開く可能性が高まります。つみたてNISAは下落への忍耐力が求められる投資だとも言えるでしょう。
どんなインデックス投信があるの?
つみたてNISA対象の主要インデックス投信は以下のようなものがあります。
1.一つの指数に連動することを目指すインデックス投信
2.複数の指数を組み合わせて運用する複数指数型(バランス型)のインデックス投信
指数を2つ組み合わせたものから最大8つの指数を組み入れたものまであるようです。
それぞれの資産を代表する指数に連動するように商品設計されたバランス型のインデックス投信です。複数の資産に投資し、分散投資を実現させたい場合に向いています。
一方、各資産の配分は運用機関に任せられているので、どういった組み合わせになるのかは目論見書などで確認していきましょう。
国内株式型
東証株価指数(TOPIX) 東証1部の全銘柄の時価総額で計算された株価指数
日経平均 日本を代表する構成銘柄225社で計算された株価指数
海外株式型
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI) MSCI社が独自に出している世界株指数
FTSEグローバル・オール・キャップ・インデックス FTSE社が独自に出している世界株指数
MSCIコクサイ・インデックス 日本を除く先進国の株価指数
S&P500 米国を代表する500社で計算された株価指数
MSCIエマージング・マーケッツ・インデックス MSCI社が独自に出している新興国株指数
FTSEエマージング・インデックス FTSE社が独自に出している新興国株指数
国内複数指数型
国内株+JREITの2指数
国内株+国内債+JREITの3指数
海外複数指数型
米国株+米REITの2指数
海外株+海外債の2指数
ターゲットイヤー型の複数資産型
ターゲットイヤー、ターゲットデート、ライフバランス、資産設計ファンドなどと呼ばれる4指数以上の指数を組み入れたファンドもあります。年齢やライフプランに応じて、若い頃は株の比率が高い積極運用、年齢を経るにしたがって資産を守りの運用に切り換えていくのがこのタイプの投資信託の特徴です。
長期投資では、結婚、出産、自宅の購入などのライフプランに合わせて、運用方針を見直しする必要があります。これらのファンドは定年退職年などをターゲットとしてリバランスもプロが運用してくれる投信です。しかし、バランス型やターゲットイヤー型のファンドは、運用ノウハウが必要なので単一のインデックス投信に比べるとコストが高くなる事だけは忘れないでください。
インデックス投信に向いている人
経験や金融リテラシー不足で運用に自信がない場合、忙しくて放ったらかしにしたい場合、個別のアセットクラスなどを調べる時間がとれない場合などは、バランス型のインデックス投信への投資は良い選択だと言えるでしょう。多少のコストはかかりますが、ターゲットイヤー型のファンドならリバランスの必要もありません。
今回は、つみたてNISAのラインナップの大半を占める「インデックス投信」について、商品概要やメリット、デメリットをお話ししました。つみたてNISAの対象投信は、投資初心者でも、長期の資産運用、分散投資が出来るようにと一定基準をパスした商品のみがラインナップされています。それらを活用し、株価に一喜一憂することなく少額でも毎月コツコツと積み立てを続けていける人が、インデックス投信に向いている人だと言えるでしょう。
次回は、今回のインデックス投信と対比されるアクティブ投信について解説します。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road)