フリマアプリ大手メルカリが、新しい働き方に舵を切った。「ニューノーマル・ワークスタイル」のトライアル・ガイドラインを発表したのだ。リモートか出社かを個人・チームの裁量に任せることが特徴だ。このガイドラインから、新時代の労働形態について考えていこう。

メルカリがニューノーマル時代の「ガイドライン」

非管理時代
(画像=momius/stock.adobe.com)

メルカリが2020年9月30日までを適用期間とした「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル〜トライアル・ガイドライン〜」を発表したのは、7月1日のことだ。社外に対して公表されたのはPDF2枚の資料で、ガイドラインの概要が抜粋で紹介されている。

「非管理時代」の到来

その中身を読むと、メルカリ内で今後本格的な「非管理時代」が到来することを思わせる。リモートワーク(テレワーク)か出社かを個人やチームの裁量に任せることで、上司などの目が行き届かない場所での就労が増えていくことになりそうだからだ。

特に新型コロナウイルスの発生下においては、感染拡大防止の観点から出社は推奨されず、在宅勤務の社員の割合が多くなる。今までの職場環境と比べると、管理職の社員にとっては部下の動きを把握しにくい状況となり、メルカリの管理職にも何らかの対応策が求められるはずだ。

「管理」のあるべき姿はどう変わっていくのか

リモートワークか出社かを個人やチームが自由に選べるようになる職場改革は、メルカリをはじめ他の企業でも今後導入されていくことが予想される。

リモートワークの是非

リモートワークは出社の手間を減らし、ES(従業員満足度)を向上させる。ESが向上すれば離職率の低下も期待できる。出社が必要な業務は企業や部署によってもちろん完全に無くなるわけではないが、積極的な導入は従業員の企業ロイヤルティの醸成に結びつく。

一方で前述の通り、リモートワークをする従業員が増えると「管理」の問題が出てくる。上司も部下の管理をしにくくなり、部下も上司からのアドバイスを受けにくくなったりする状況が発生するのだ。では具体的に、新時代の働き方へのシフトが進む中、「管理してきた人」と「管理されてきた人」には、どのような対応が求められるのだろうか。

「管理してきた人」(上司側・経営側)に求められる対応

従業員を管理する側は、これまでと違った方法で部下の働きを可視化し、評価する必要がある。

「労働時間」ではなく「成果」での評価を

リモートワークでも従業員側からの労働時間の申告などにより、どのくらい働いたかを書類上、数字で管理することは可能だ。しかし自己申告の場合、厳密な管理は難しい。労働時間にこだわり過ぎると、管理職側も確認のストレスが増える。

このようなことから、今後は「労働時間」よりも「成果」を一層重視するスタイルを取り入れていくことが望ましい。成果であれば、たとえリモートワークの割合が多くても、最後には必ず数字として表れてくる。

「ピアボーナス」などの導入を検討する

経営側は「ピアボーナス」の導入を検討するのも1つの選択肢と言える。ピアボーナスは米Googleが導入して話題になった仕組みで、従業員同士が頼んだ業務への感謝として「ポイント」を送り合うシステムだ。

これにより従業員の動きが可視化され、上司側は管理がしやすくなる。ポイントはお金に換算されて給与に上乗せされるため、働く側のモチベーションも高くなるなど、導入のメリットは多い。

「管理されてきた人」(部下側)に求められる対応

評価の方法が変化することにより、管理される側の対応や働くうえで追求することが変わってくる。

今までより能動的な「ホウレンソウ」

「管理される」ということにネガティブな印象を持つと、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が疎かになりがちだが、ホウレンソウにしっかり取り組むことは部下にとってのメリットも大きい。上司から適切な助言を受け取りやすくなるからだ。

ニューノーマルの時代において、部下側はホウレンソウをより能動的に行うべきだ。ニューノーマル時代、部下の悩みを上司は把握しにくくなるため、部下側が自ら積極的にホウレンソウをしなければ、自分の置かれている状況を理解してもらいにくくなり、「教師役」でもある上司から良いアドバイスをもらうことも難しくなる。

「成果」にこだわった働き方へのシフト

前述の通り、ニューノーマル時代は労働時間の把握がしにくくなることから、より「成果」に対する評価の比重が高くなる。そのため部下側は、今まで以上に成果にこだわった働き方にシフトする必要が出てくる。今一度、自分の働き方に無駄がないかをセルフチェックし、成果を出すことに向けた最短ルートを歩めるような働き方を模索していこう。

ニューノーマル時代、柔軟な対応を

ちなみにメルカリは「オフィス出社が必要なとき」として、「チームの関係性強化のためのミーティング」「集中的に共同作業を行う活動」「ブレインストーミング」などを挙げている。つまり、チーム内の心理的距離を縮めたり、従業員同士の信頼関係を一層強化させたりするためには、出社が必要なときもあると捉えているわけだ。

新型コロナウイルスは人々の生活様式を大きく変えると同時に、企業の職場環境にも大きな変化をもたらしつつある。メルカリのトライアル・ガイドラインなどの先例を知り、ニューノーマル時代の柔軟な対応に結びつけていこう。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)