「Apple社が環境対策へ真剣に取り組んでいる」と聞いても、社会への企業アピールなのではと想像する人もいるかもしれません。しかし内容を知ると完全に本気であり目指すレベルが他社と全く異なることが分かります。本記事では、Apple社が目指す地球規模の環境対策の取り組みについて解説します。

2030年までにカーボンニュートラルを目指す

環境対策
(画像=onephoto/stock.adobe.com)

Appleは、2030年までにすべての製品をカーボンニュートラルにし「将来すべての製造でカーボンフットプリントゼロを目指す」と宣言しています。これは、地球温暖化に影響するCO2(二酸化炭素)の排出量を減らす取り組みです。カーボンニュートラルとは、製品を作る過程で排出されるCO2と抑制するCO2を同じ量にすることを意味します。

具体的には、直接CO2排出量を減らすのはもちろん再生エネルギーへの切り替えや廃棄物をなくすなど間接的にCO2を減らすことも含みます。カーボンニュートラルは、Apple以外の企業も取り組んでおりMicrosoftは2012年にカーボンニュートラルを達成しています。またAmazonは、2030年までに商品輸送の50%をカーボンニュートラルにすると発表しています。

近い将来にカーボンフットプリントゼロを実現

カーボンニュートラルの先に目指すカーボンフットプリントゼロは、さらに高度な取り組みとしてCO2排出量をゼロにすることを意味します。ハードウェアメーカーには非常に難易度の高いCO2排出量ゼロ目標ですが、Appleは本気でしかも高いレベルで実現しようとしているのです。その意思の表れを具体的な行動から見てみましょう。

環境省のCEチャレンジ表彰を受賞する

環境省が2019年に発足させた「CEチャレンジ」では、日本で循環型経済を推進する先進的な取り組みを行う企業を表彰しています。Appleは、CEチャレンジで全国清涼飲料連合会とセブン&アイホールディングスと並んで表彰を受けました。これはAppleの「将来的に再生可能な素材とリサイクルされた素材のみを使って製品を作る」という取り組みが評価されてのものです。

受賞した団体はPACE(循環経済加速化プラットフォーム)活動の模範例として政府から国内外に発信され、今後その団体の取り組み状況も随時確認していくとしています。今後の取り組みを継続的に発信していくことは、Appleの環境への取り組みが決して世間へのアピールではなく、将来に向けて実行し続ける活動ということを示しています。

iPhone再生専用ロボットを開発

Appleでは、再生可能な素材やリサイクルされた素材のみを使って製品を作る取り組みを行っています。本気度が伝わってくる代表例がiPhoneを分解するための専用ロボットを開発し実際に導入していることです。「Liam」や「Daisy」と呼ばれるこのロボットたちは、回収プログラムで集められたiPhoneを分解するために開発されました。

自動化されたロボットを開発するには相当の資金と手間がかかります。これを製造ではなくリサイクルのために開発し実際に導入している企業はかなり少ないでしょう。さらにAppleは新しい製品にも対応した「Dave」という新型のロボットも開発しています。カーボンフットプリントゼロへ向けての取り組みは決して一過性のものではなく、企業活動の重要な一部として継続していくという意思が分かるでしょう。

パッケージだけでなく製品も100%リサイクルを目指す

他の企業で循環型社会へ向けた活動でよく耳にするのが「パッケージにリサイクルした素材を使う」という取り組みです。Appleでも大半のパッケージで100%リサイクルの素材を使っており、今後はさらに製品も100%リサイクルで作ることを目指しています。実際に最近のiPhoneは内部部品でリサイクルパーツを多用し、さらにMacBookやiPadは100%再生アルミを使用して製造されています。

特に製品でリサイクルされた材料を使うためには、技術開発と製造工程整備にかなりの時間と資金が必要になりますが、Appleはこれを着実に実行しさらに拡大させる勢いです。

すでに達成されている目標

Appleの環境対策への本気度は現在取り組んでいる活動だけでなくすでに達成されていることからもよく分かります。

廃棄物ゼロを主要製品で2018年に達成

Appleでは、製造工程での廃棄物ゼロ目標に2015年から取り組み、2018年にはiPhone、iPad、MacBook、Apple Watchなど主要製品で埋蔵廃棄物ゼロを達成しています。環境負荷を低減する取り組みで用いられる手段の「リデュース(減らす)」「リユース(再利用)」「リサイクル(再生利用)」といった3Rのうちリデュースである廃棄物を減らすことはすでに達成しているのです。

世界のオフィスと直営店を100%再生エネルギーで運営

Appleでは2018年までに世界44ヵ国にあるAppleオフィス、直営店、データセンターで使われる電力を100%再生可能エネルギーにより供給することを達成しています。すべての施設が太陽光発電や風力発電などによって得られた電力で運営されており、ここでもAppleは驚異的な実行力を発揮しているのです。

Appleは地球規模で考えている

ここまでにご紹介した取り組みを見ただけでもAppleが本気で環境対策を考えていることは明らかでしょう。しかしAppleの突出したところは、自社の範囲にとどまらず地球規模で環境対策を捉えている点です。

サプライヤーも含めてカーボンニュートラルへ

2020年7月に発表したプレスリリースで、Appleは自社内だけではなく製造などのサプライチェーンにおいても2030年までにカーボンニュートラルを100%達成すると発表しており、実際にサプライヤーへ100%再生エネルギーへの転換を協力要請しています。

しかもサプライヤーがエネルギー転換を実施する際の資金的な援助もしているのです。単に呼びかけるだけでは終わらないところにAppleの実現への強い姿勢がうかがえます。また協力を求めているサプライヤーの中には、競合する他社製品を製造しているところもありますがそれでも資金援助を行うとしているのです。

「援助した施設を使って他社製品を作ることも全く構わない」というスタンスには本気度合いが伝わってくるのではないでしょうか。つまり一つの企業の範囲ではなく「地球規模の計画」という視点で取り組んでいることが分かります。

Appleをお手本に自分でもできる環境対策を考える

2020年7月にApple恒例の新製品発表をうかがわせる思わせぶりな告知でお披露目されたのは、2030年のカーボンニュートラルへ向けての進捗状況報告書とこれからの取り組みでした。主要製品ごとに環境対策がどれほど実施されているか、パーセンテージで示す手の込みようです。これらの取り組みを読んだ人の中には「Appleだからできる」と感じる人もいるかもしれません。

たしかにそういった側面もありますが、だからといって私たち一人ひとりが環境に対して何もしなくて良い理由にはならないでしょう。Appleの取り組みを一つの模範としながら、個人としてできる環境対策を考え取り組んでみてはいかがでしょうか。(提供:Renergy Online