メディアなどで見かける機会の多い「SDGs」という単語は、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」を意味しています。「SDGs」とは具体的に何を指し私たちの生活にどのように関わっていくのでしょうか。2015年までの開発目標「MDGs」は、発展途上国を対象としていました。しかしSDGsは先進国を含むすべての国が対象の普遍的な目標になっています。

本記事では、SDGsの概要や17のゴールと国内の取り組み状況、企業の導入事例を見ていきます。

SDGsとは

SDGs
(画像=choat/stock.adobe.com)

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals」の略で和訳すると「持続可能な開発目標」となります。具体的には、2015年9月の国連サミットで採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」のことです。17の目標と169のターゲットから構成され「誰一人取り残さないこと」を前提に、先進国を含めたすべての国が取り組みます。目標は、水・衛生といった生活に欠かせないものからジェンダーや気候変動など多種多様です。

2001~2015年までの「MDGs:ミレニアム開発目標」は、発展途上国を対象に8ゴール・21ターゲットを掲げたものでした。しかしSDGsではゴール・ターゲットが増え、対象となる国も広がっています。またMDGsは国連の専門家が主導していましたが、SDGsはすべての国が取り組むべき普遍的な目標となっていることが大きな違いです。

例えばMDGsでは「極度の貧困と飢餓の撲滅」「乳幼児死亡率の削減」といった生活基盤を支えるための目標が中心でした。しかしSDGsでは「あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる」「あらゆる年齢のすべての人における健康的な生活を確保し福祉を促進する」と同じテーマの目標でも対象が広がっていることが分かります。

SDGsの掲げる17のゴールとは?

SDGsが定める17のゴールは以下の通りです。

目標1貧困あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2飢餓飢餓を終わらせ食料安全保障および栄養の改善を実現し持続可能な農業を促進する
目標3保健あらゆる年齢のすべての人における健康的な生活を確保し福祉を促進する
目標4教育すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する
目標5ジェンダージェンダー平等を達成しすべての女性および女児のエンパワーメントを行う
目標6水・衛生すべての人の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7エネルギーすべての人の安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
目標8経済成長と雇用包摂的かつ持続可能な経済成長およびすべての人の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9インフラ、産業化、イノベーション強じん(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進およびイノベーションの推進を図る
目標10不平等国内および各国家間の不平等を是正する
目標11持続可能な都市包摂的で安全かつ強じん(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する
目標12持続可能な消費と生産持続可能な消費生産形態を確保する
目標13気候変動気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14海洋資源持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し持続可能な形で利用する
目標15陸上資源陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復および生物多様性の損失を阻止する
目標16平和持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進しすべての人に司法へのアクセスを提供。レベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17実施手段持続可能な開発のための実施手段を強化しグローバル・パートナーシップを活性化する

出典:外務省

国内の取り組み状況

日本ではSDGsの取り組みとして体制の構築、「SDGs未来都市」の制定、国際協力への取り組みなどを行っています。

体制の構築

日本政府は2016年5月に総理を本部長、官房長官および外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置し、年2回のペースで本会合を開催しています。2016年12月には、SDGs推進のための中長期戦略「SDGs実施指針」を策定し、2019年12月に方針の改定。SDGs実施指針を基に具体的な取り組みを実現するため「SDGsアクションプラン」を毎年策定しSDGsを推進しています。

民間団体との意見交換も実施しており、民間のセクターやNGO・NPO、有識者・各種団体などで「SDGs推進円卓会議」を定期的に開催しています。

SDGs未来都市

日本政府は2018年から「SDGs未来都市」を掲げ自治体によるSDGsの達成に向けた取り組みを公募、優れた取り組みを提案する都市を「SDGs未来都市」として選定・支援しています。

2017年からは、1年に1回SDGsの達成に向けて優れた取り組みを行う企業・団体などを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を開催しており、最も優れた取り組みに推進本部長表彰、功績があったと認められる企業・団体などには特別賞を贈っています。

国際協力への取り組みの例

国外に向けての協力として、保健・教育・ジェンダー・防災などの面でSDGs達成に向けた取り組みを行っています。2017年12月には「UHCフォーラム2017」を開催し、国際保健機関(WHO)に対して約29億米ドルを拠出する方針を表明。また2019年6月のG20大阪サミットの機会にあわせて約100万人のエイズ・結核・マラリア患者の命を救い、約130万人の子どもたちに予防接種を実施するなどの表明も行いました。

日本では2020年7月からプラスチック製のレジ袋が有料になりました。その背景には、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しているという試算があり、2050年には「海洋中のプラスチックごみ重量が魚の重量を超えてしまう」という試算もあります。

企業導入している3つの事例

SDGsに取り組む企業は多岐にわたります。ここでは3つの事例を見ていきましょう。

・朝日新聞社
新聞を活用して楽しくSDGsを考えるツール、「ペタッとSDGs 新聞学習ふせん」を希望する学校へ届け、子どもへSDGsの情報を届ける活動などを行っています。

・SMBC日興証券
SMBC日興証券は「地球環境や地域社会の課題解決のための資金」「人材の基盤作り」「若い世代の豊かな未来に向けたチャレンジをサポート」の3つを重要な課題とし、日々業務内外で取り組んでいるのが特徴です。また持続可能な社会の実現に向け「サステナビリティ(持続可能性)推進会議」を設置しています。

・第一三共グループ
製薬企業の第一三共グループは、所得格差などの社会的要因により十分な医療を受けられないといった医療制限をなくすため、研究開発の促進、医薬品へのアクセス向上、地域医療基盤の強化に取り組んでいます。

SDGsが掲げる17のゴールは、発展途上国を中心とした社会面の課題、エネルギーや資源の有効活用、働き方の改善、不平等の解消など多岐にわたります。社会、経済、環境から見た17のゴールを統合的に解決し持続可能なより良い未来を築くことが、SDGsの目標達成につながります。(提供:Renergy Online