サステナブル投資とESG投資は、どちらも環境や社会に配慮した投資として導入する企業が増えています。サステナブル投資とESG投資に大きな違いはなく、環境保護や社会の規範を守るにはともに大事な投資方法です。本記事では、これからの時代に不可欠なサステナブル投資とESG投資について解説していきます。
サステナブル投資とは?
サステナブル投資とは、経済・環境・社会の持続性に配慮した投資手法のことです。サステナブルとは、Sustain(持続する)とAble(~できる)を組み合わせた言葉で「持続可能」を意味し、限られた環境資源を使い切ることがないように配慮しながら「世界経済の継続・発展も目指していこう」という考え方になります。
日本サステナブル投資フォーラムのアンケート調査によると、2019年3月末時点のサステナブル投資残高の合計は、336兆396億2,000万円となっており、対前年比で45%の伸びを示しています。サステナブル投資への評価については、日本取引所が運営するサイト「東証マネ部!」にいくつかデータが公表されています。サステナビリティ評価の改善(S&P500 ESG指数のケース)では、以下のような評価です。
- E(環境スコア):+11%
- S(社会スコア):+15%
- G(ガバナンススコア):+8%
一方で売上における加重平均炭素強度が-5%、炭素量が-3%とマイナス評価で、非人道的武器&タバコは-100%とほぼ除外されています。これを見ることで運用ポートフォリオのサステナビリティ評価の改善が達成されていることが理解できるでしょう。またグローバル・サステナブルETF市場の規模は、2019年7月の時点で約4兆6,200億円にまで成長しています。
サステナブル投資とESG投資の違い
サステナブル投資とESG投資は同じようなものとして認識している人も多いのではないでしょうか。サステナブル投資とESG投資は、「環境や社会への貢献」という基本的な理念では共通しています。では、両者の違いはどこにあるのでしょうか。日本サステナブル投資研究所(JSIL)のレポートで示された見解によるとサステナブル投資は、投資手法そのものを表します。
一方のESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字にあるようにグローバル投資家が企業の投資価値を測る評価項目を指しているのです。サステナブルが「持続可能」という大きなくくりに対しESGは具体的な評価項目が示されているため、「投資判断がしやすい」という側面があります。
一方でサステナブル投資のなかにESG投資を含める考え方もあり、両者にそれほど大きな違いはないと考えるのが妥当です。同レポートではESGへの具体的な取り組み例として以下のような項目を挙げています。
Environment(環境) | ・再生可能エネルギーなどを考慮した循環型ビジネスへの取り組み ・製造工程やオフィスの環境負荷の軽減 ・再生可能エネルギーそのものの推進 |
---|---|
Social(社会) | ・子育て支援策の充実 ・女性役職者数の増加 ・フェアトレードへの支援 ・施設のバリアフリー化 ・取引先への労働環境モニタリング ・障害者の雇用拡大 ・人権問題への対応 ・定年の延長や撤廃等社会問題の解決に向けた施策 |
Governance(企業統治) | ・役員のダイバーシティの確保 ・社外取締役の増員 ・役員研修の充実 ・株主との対話の進化 |
環境、社会、企業それぞれの分野にさまざまな取り組むべき課題があることが分かります。
サステナブル投資で社会的課題を解決
サステナブル投資で社会的な課題を解決することも可能です。身近な例では、2020年7月1日に全国一律でスタートしたスーパーやコンビニなどのレジ袋有料化の取り組みがあります。顧客がマイバックを持参することを定着させることでプラスチックごみの削減につながるでしょう。またカフェやファストフード店でプラスチックストローを紙製に変更したことも同様の取り組みといえます。
さらにアパレル業界で採用が進んでいるのが「サステナブルファッション」です。ファッションの生産・販売・消費のプロセスにおいて環境や社会、経済に配慮したファッションを指します。具体的には、有機栽培され加工の過程でも化学処理をしていないオーガニックコットンを使ったベビー服や肌着の製造などのことです。
海外のアパレル業界でも変化が起きており、大量生産・大量消費のこれまでのスタイルを改めファストファッションからサステナブルファッションへの流れが進みつつあります。これらのサステナブルに取り組んでいる企業が投資家から評価されれば社会だけでなく消費者にとっても理想的な形と言えるでしょう。
企業に求められるESG投資
近年、経済的リターン重視から経済と社会貢献の両立へ投資するスタイルに変化しつつあり、企業にもESG投資が求められる時代になっています。ESG投資が注目されるきっかけには以下のようなものがあります。
責任投資原則が提唱されている
2006年に国連のアナン事務総長によって「責任投資原則」(Principles for Responsible Investment)が提唱されました。PRIと略されるこの投資原則では、投資にあたっては売上高や利益という財務指標だけでなく環境・社会・企業統治という財務指標には表れにくい問題への取り組み状況も考慮に入れるべきとしています。
SDGsが定められている
2015年9月に国連で採択されたSDGs (Sustainable Development Goals)で持続可能な開発目標が定められました。SDGsでは、2030年までに世界全体で達成すべき17の目標が示されています。
パリ協定が採択されている
環境問題では、2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で「パリ協定」が世界196ヵ国の合意で採択されました。
これら3つのグローバルな枠組みが採択されたことにより、持続可能な社会づくりに取り組むESG投資への機運が高まっているのです。ESGを実践する企業にメリットもあります。MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の「ESG格付別リターン時価総額加重平均2020年1-3月期」によると、コロナショックで株式市場が大暴落に見舞われた時期に格付によって明確に下落率の差が出ています。
MSCI ACWI指数でESG格付下位銘柄が22.1%下落したのに対し、ESG格付上位銘柄は15.6%の下落にとどまっています。さらにS&P500指数ではESG格付下位銘柄が22.2%下落したのに対し、ESG格付上位銘柄は10.8%の下落とさらに差が顕著です。このデータを見ると企業がESGに取り組むことは市場の評価を得て結局はリスクヘッジにもつながる注目すべき結果と言えます。
個人がESG投資を行う場合の注意点
自分も個人としてESG投資で環境保護や社会に貢献している企業を応援したい人もいるでしょう。ただESG投資は注意しなければならない点があります。なぜならESG投資は日本でまだそれほど高い収益が見込みにくいからです。自社の利益だけでなく持続的な社会の構築に寄与する経営方針を掲げているため、利益至上主義の企業に比べると利益率は低くなる可能性があります。
そのためできるかぎり高いパフォーマンスの運用を目指す場合には、他の成長を見込めるファンドに投資したほうがよいかもしれません。ESG投資は社会に貢献したい「志」がないと難しい投資と言えます。ただし欧州ではサステナブル指数が他の株価指数を上回っていることから、長い目で見れば日本でもESG投資の成長が見込める可能性があるでしょう。
目先の利益にとらわれずに地球環境の保護や社会の規範を守る健全な経営を行っている企業が評価されるのは喜ばしいことです。サステナブル投資とESG投資が新しい時代のスタンダードになることが望まれます。(提供:Renergy Online)