ESG投資で環境問題への取り組みが評価の基準になる中、自分たちが使うエネルギーを自分たちでつくる「自家消費型太陽光発電」に取り組む企業が増えています。2030年度には再生可能エネルギーが電源構成の約4分の1を占める見通しです。太陽光は、今後電源構成の主力になることが期待されています。ESG投資で企業が自家消費型太陽光発電を導入する理由とはどういったことがあるのでしょうか。

ESG投資と国連責任投資原則(PRI)

ESG投資
(画像=naka/stock.adobe.com)

はじめにESG投資と国連責任投資原則の概要を確認します。ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つに配慮して活動を行っている企業を一定の基準で選別して投資することです。一方の国連責任投資原則は、PRI(Principles for Responsible Investment)という略称で呼ばれています。

投資にあたっては売上高や利益という財務指標だけでなく「環境」「社会」「企業統治」という財務指標には表れにくい問題への取り組み状況も考慮に入れるべきとする以下の6つの投資原則を掲げています。

  1. 投資分析と意思決定プロセスにESGの課題を組み込む
  2. 活動的な株式所有者になり、株式の所有方針と所有習慣にESG問題を組み込む
  3. 投資対象に対してESG問題について適切な開示を求める
  4. 資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行う
  5. 本原則を実行する際の効果を高めるために協働する
  6. 本原則の実行に関する活動状況や進歩状況に関して報告する

SDGsによって脱炭素社会へ

政府は、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)」を閣議決定しました。2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減し、さらに2050年までに80%削減するということを目標にしています。これはかなり高いハードルに思えますが、脱炭素社会の実現に向けて有効になるSDGsという取り組みがあります。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標の略称でエス・ディー・ジーズと読みます。「SDGsの17の目標」は以下の通りです。

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsに取り組んでいる具体的な例として、家電大手パナソニックの「ソーラーランタン10万台プロジェクト」があります。ソーラーランタンは1台で部屋全体を照らせる100ルクスの明るさがあり、無電化地域で暮らす人々のために役立てられます。

このプロジェクトでパナソニックが目指すのは、先に紹介した「SDGsの17の目標」のうち7番目の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という項目の達成です。そのほかにも「1.貧困をなくそう」「3.健康な生活」「4.質の高い教育をみんなに」「5.ジェンダー平等を実現しよう」など4つの目標の実現を目指すとしています。

ESG投資とPRIとSDGsの3つの関係

「ESG投資」「PRI」「SDGs」の3つはどのような関係があるのでしょうか。実はこの3つの取り組みは、ESG投資が注目されるきっかけになったPRI・SDGsと深くつながっています。PRI は2006年に国連のアナン事務総長によって提唱されました。先に紹介した6つの責任投資原則のうち1~3までにESGという言葉が入っています。

SDGsは、2015年9月に国連で採択され持続可能な開発目標が定められました。SDGsでは、2030年までに世界全体で達成すべき17の目標の中にESGの要素が多数盛り込まれています。これら2つのグローバルな枠組みが採択されたことにより、持続可能な社会づくりに取り組むESG投資への機運が高まった経緯がありました。

そのためESGに取り組む企業がSDGsで示された具体的な目標を達成し、投資家がPRIで掲げられた投資原則に基づいて評価すれば持続可能な社会づくりに一歩でも近づくことになります。つまり3つを切り離して考えることはできないのです。

ESG投資と自家消費型太陽光発電は相性がいい

環境問題に付随してエネルギー供給のあり方も世界的な課題です。2015年に経済産業省が公表した「長期エネルギー供給見通し」によると、2030年度の電源構成比率は、以下のようになっています。

電源構成比率
LNG(液化天然ガス)27%程度
石炭26%程度
再生可能エネルギー22~24%程度
原子力22~20%程度
石油3%程度

再生可能エネルギーが約4分の1を占め、今後のエネルギー政策の中心として伸びることが予想されます。再生可能エネルギーをさらに細かく分けると以下のようになります。

再生可能エネルギーの種類構成比率
水力8.8~9.2%程度
太陽光7.0%程度
バイオマス3.7~4.6%程度
風力1.7%程度
地熱1.0~1.1%程度

再生可能エネルギーの中で今後主力になることが期待されているのが太陽光発電です。自家消費型太陽光発電とは、ソーラーパネルを建物の屋根や空き地等に設置しつくられた電気を自社で使用する仕組みのことです。ESG投資と自家消費型太陽光発電は相性がいい組み合わせで、ビルなどの建物や住宅でも省エネルギー化が進んでいます。

ESG投資で自家消費型太陽光発電を導入する企業のメリット

ESG投資の一環として自家消費型太陽光発電を導入する企業には、以下のような多くのメリットがあります。

・電気料金を削減できる
自家発電のため、当然電気料金の削減につながります。しかも電力使用料だけでなく基本料金まで下がることもメリットです。基本料金は、電力量の最大デマンド(1年間で最も電気使用量が多かった時間帯の電力量)が算定の基準になります。企業として活動が活発な昼間に自家発電することで最も電気を使う時間帯の使用料を抑えられ基本料金も下がるメカニズムです。

・節税になる
自家消費型太陽光発電は、税制面でも優遇されており節税が期待できます。再生可能エネルギー設備を導入する際に活用できるのが「中小企業経営強化税制」です。これは対象条件を満たした企業が一定の設備を導入した際に、即時償却か取得価額の10%の税額控除を受けられる制度です。即時償却は減価償却と異なり導入した年にまとめて経費として計上できその年の経費金額が大きくなるため、節税になります。

・非常用電源を確保できる
近年、日本でも自然災害が多発していますが自家消費型太陽光発電は災害時のBCP対策(事業継続のために非常時に備える対策)にも役立ちます。災害時の停電は地域によっては復旧までに2~3週間を要する場合があるでしょう。最悪の場合は、停電している間工場などの操業を停止しなければなりません。自家消費型太陽光発電があれば電力会社からの送電が止まっても電力を確保できるメリットがあります。

・ESG活動で企業イメージが向上する
ESG活動に取り組むことで企業イメージが向上することもメリットの一つです。上述したように災害時に停電したときも自社の電力を地域の住民に供給する形で社会貢献を果たすこともできます。上場企業であれば社会からの評価が高まることで株価の上昇につながる期待もできるでしょう。ESG、PRI、SDGsは環境、社会そして人にとって必要不可欠な活動になりつつあります。

その中でも再生可能エネルギーの代表の太陽光発電に自社で取り組むことは極めて有意義です。太陽光パネルは、個人の住宅にも設置できるため、一度検討してみてはいかがでしょうか。(提供:Renergy Online