先日、筆者が主宰するFund Garageの有料会員の方からお問い合わせを頂いた。それは前回のコラムの内容に関するものだった。筆者は、前回のコラムの締め括りで元ファンドマネージャーとしての観点から「ベンチマークがあるファンドの運用のほうは楽で簡単」だとお伝えした。そこで寄せられたのが下記の質問である。

「つまり、インデックス運用のほうが簡単ということだと思うが、ならばアウトパフォームすることも簡単か?」

実に正鵠を得た、難しい、そして良いご質問だと思った。

実はインデックスを「アウトパフォーム」するのは簡単だ

投資信託,ベンチマーク
(画像=【IWJ】ImageWorksJapan / pixta, ZUU online)

まずは筆者が何と回答したか披歴しよう。「その通りです。(普通に修行を積んだファンドマネージャーなら)単純にインデックスをアウトパフォームするだけならば簡単です」とお答えした。それは個人投資家の人は専門家が使うデータベースもプログラムも通常は持っていないからだ。また、運用に投下する資金規模が圧倒的に異なるからだ。

本当は「ファンドマネージャーはポートフォリオ理論について充分に勉強しているので……」という一言こそ添えたいのだが、残念ながら、そこまで一般論として言えば嘘になる。それが「(普通に修行を積んだファンドマネージャーなら)」の含意だ。専門用語で恐縮だが「有効フロンティア」の説明さえ現役のファンドマネージャーが全員出来るかと言えば、出来ない人が年齢に関係無く実在するからだ。

筆者がファンドマネージャーとして最初の数年間行った運用はインデックス・ファンドの開発やその運用だ。BARRAモデルに代表される市販パッケージ・ソフトの利用から、自らプログラムを書いてポートフォリオを組んだりしていた。当然、色々な実験も行った。だから自信をもって「簡単だ」と断言する。

誤解無きようにお断りしておくが、その投資資金は筆者の当時の出向元である銀行の資金で、決してお客様のお金では無い。銀行としては、その先に見えていた投資顧問会社の年金業界参入の為に、色々とテストを重ねることで、人材育成とノウハウの蓄積を狙っていた。当然その為には資金だけでなく、必要なシステム投資も行ってくれた。今思えば筆者は非常に恵まれた環境で育ったと言えるし、当時の銀行はそれだけの体力もあった。50億円のファンドを3本も任せて貰った。

「二兎も三兎も追う」から運用が立ち行かなくなる?

あれから30年、当然投資理論自体も格段に日進月歩で磨きが掛かったし、システムについても、プログラムもハードウェアも物凄い勢いで進歩した。当時でさえ、平たい言い方をすれば、対象のインデックスと、投資対象の母集団を指定すれば、ENTERキーひとつで立派なインデックス・ファンドのグランド・デザインが提示される機関投資家向けプログラムが市販されていた。更に言えば、日経平均を対象としたファンドならば、225銘柄を全部買ってしまえば良い。流石に50億円もあれば金額的には充分だ。

ならば、インデックスを簡単にアウトパフォームする方法とは、どのようなものなのか?