「iDeCoを始めよう」と思ってインターネットで検索すると、デメリットを指摘して「だまされるな」「やらないほうがいい」と結論づける情報が見つかることがあります。逆に、「老後資金の形成に最適」とメリットばかり強調する情報もあります。これでは加入すべきかどうかの判断ができず、困ってしまいます。

そこで、今回は主にデメリットについて徹底的に分析し、メリットと比較しながらわかりやすく解説します。

そもそもiDeCoとは?

iDeCo
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

iDeCoは、任意の私的年金制度です。厚生労働省の金融政策である「確定拠出年金」の個人型で、現在加入者は約169万人(2020年8月時点)。投資する金融商品を加入者自身が選び、運用の成果を将来の年金として受け取る仕組みです。運用・積立・受給時に税制優遇があるため、節税しながら老後資金を作ることができます。

4つのデメリットを検証

どのような制度にもメリット・デメリットがあり、目的によって向き不向きもあります。まずは、デメリットを見ていきましょう。

デメリット①60歳まで受け取れない

iDeCoの加入年齢は20歳以上60歳未満で、年金の受給開始は原則60歳以降です。

最長で40年間継続することになりますが、「ある程度貯まったから、少し使いたい」と思っても、受給開始前に資産を引き出すことはできません。また「もうやめたい」と思っても、解約はできません。積立の中止はいつでもできますが、その後も運用は続き、運用成果を受け取れるのは60歳以降です。

-強制力があるからこそ積立を続けられる

iDeCoは一般的な投資ではなく、老後のための年金制度です。自由に現金化できると、つい別の用途で使ってしまい、本来の目的が果たせない可能性があります。

また、積立投資は継続することで運用リスクが抑えられ、複利運用の効果も大きくなります。短期間でやめてしまうより、少額でも長く続けることが成功のコツです。強制力があるからこそ、継続できるという人もいるでしょう。むしろこの不自由さがメリットでもあるのです。

-死亡時には、年齢にかかわらず死亡一時金が支払われる

万が一積立の途中で死亡した場合は、遺族が年金資産を相続します。この場合、保有していた投資商品はすべて売却され、その時点の運用成果が「死亡一時金」として一括で支払われます。遺族が運用を引き継ぐことはできません。死亡一時金は、相続税の対象になります。

デメリット②運用リスクがあり、資産が減る可能性がある

国民年金や厚生年金などの公的年金は、加入者たちから集めた資金を国や企業が運用する年金制度、iDeCoは加入者個人が自分の資金を運用する年金制度です。

受給年金額は、運用結果が出るまで確定しません。資産運用にはリスクがあり、受給額が出資額を下回ることもあります。ただし、それは公的年金も同じです。運用状況が見えるか見えないかの違いであり、その点でiDeCoは透明度の高い年金制度といえます。

-自分でリスクをコントロールできる

iDeCoの運用商品は、国内外の株式や債券などを組み合わせたパッケージ商品である「投資信託(ファンド)」か、定期預金や保険などの「元本保証型商品」です。加入者は、どの商品にいくら投資するかを決めて、実際の運用は専門家が行います。

リスクとは、運用によって期待できる「効果の幅」のことです。リスクが大きいということは、大きく増える可能性と大きく減る可能性が同じくらいあるということであり、リスクが小さいということは、大きく減る可能性も大きく増える可能性も低いということです。

自分で商品を選ぶiDeCoでは、リスクを抑えて手堅く投資をすることも、リスクを覚悟して大きなリターンを狙うこともできます。

-「元本保証商品」も扱っているが注意が必要

「元本保証型商品」はその名のとおり、運用成果が出資額を下回ることはありません。しかし、増えることも期待できません。

次項で詳しく説明しますが、iDeCoでは各種手数料がかかります。運用商品をすべて「元本保証型商品」にすると、運用成果ではマイナスが出ませんがプラスもほとんどないため、手数料の分だけ資産が目減りします。したがって、元本保証型商品と投資信託をバランス良く選ぶことが大切です。

デメリット③手数料がかかる

運営管理機関(加入先金融機関)事務委託先金融機関国民年金基金連合会
口座管理手数料・移換手数料
 (金融機関によって異なる)
信託報酬などの運用手数料
 (運用商品によって異なる)
管理手数料 66円/月
給付手数料 440円/回
還付手数料 440円/回
加入・移換時手数料 2,829円
 (加入・移換時)
収納時手数料 105円/回
還付手数料 1,048円/回

iDeCoを始めるときに申し込んだ金融機関が、自分の「運営管理機関」になります。その他に2つの機関が関わるため、それぞれに上記の手数料を支払わなければなりません。

-口座管理手数料は、加入する金融機関によって異なる

iDeCoは、大手証券会社やネット証券、銀行、信用金庫、生命保険会社など、さまざまな金融機関で取り扱っています。金融機関ごとに商品ラインアップやサービス内容、サポート体制、そして「口座管理手数料」が異なります。

店舗の人件費や賃料がかからないネット証券では格安または無料のところが多く、実店舗を持ち万全のサポート体制を誇る大手証券会社などでは高めに設定されています。ただし安いからという理由で選ぶのではなく、自分にとって価値があるかどうかで判断しましょう。

-いくつかの手数料は節約できる

事務委託先金融機関と国民年金基金連合会に支払う手数料は、金額が決まっています。

「還付手数料」は、iDeCo加入資格のない月の積立金を返すときの手数料です。国民年金保険料を滞納している人は、iDeCoの加入資格がありません。加入後に国民年金保険料未納月があると、その分は後日返金されます。つまり国民年金をきちんと支払っていれば、還付手数料を節約できるのです。

デメリット④手続きが面倒

iDeCoの申し込みには加入申込書の他に、マイナンバーと身元を確認できる書類が必要です。

会社員・公務員は、勤務先が記入する「事業主証明」も必要です。これは、企業年金の加入状況などを確認し、iDeCoでの積立金上限額を決めるために使います。勤務先にiDeCoの加入内容が伝わることはありませんが、「加入を検討している」ことはわかってしまうため、抵抗がある人もいるでしょう。

-給与天引きで支払うと年末調整の手間が省ける

勤務先によっては、iDeCoの積立金を「事業主払い(給与天引き)」にすることもできます。積立金の所得控除を受けるためには、年末調整あるいは確定申告が必要ですが、給与天引きの場合は勤務先で調整が行われるため、別途手続きは不要です。

-働き方の多様化に合わせた改定に向けて調整中

厚生労働省では、雇用者の約36%が非正規雇用者である現状を踏まえ、iDeCoを含む確定拠出年金の加入条件の見直しや制度面・手続面の改善を図っています。事業主証明も不要とする方向で調整しているとのことですが、こればかりは制度改正を待つほかありません。

3つのメリットと比較してみる

デメリットを確認したところで、次はメリットと比較してみましょう。自分にとっての優先順位をつけることで、加入すべきかどうかが見えてきます。

メリット①何といっても税制優遇制度が魅力

iDeCoでは、何の税がどのように優遇されるのか、詳しく説明しましょう。

-積立金は全額所得控除の対象

1年間の収入から積立金額を差し引くことができるので、その分の所得税と住民税が軽減されます。例えば、年収400万円の人が月に1万円積み立てた場合、年間で1万8,000円の節税効果があります(税率は年収によって異なります)。単純計算で10年なら18万円、20年なら36万円分の税金が軽減されるということです。

-運用利益が非課税

通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。10万円の利益を出しても、約2万円が税金として引かれてしまうのです。しかしiDeCoでは、加入期間中は運用利益に税金がかかりません。

-受け取るときも所得控除の対象

iDeCoでは、受給時にも税制優遇があります。年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」の対象となり、それぞれ税金が軽減されます。

メリット②年金制度間でのポータビリティー(移換)

iDeCo加入者が転職によって企業年金に加入する場合、あるいは企業年金加入者が転職・離職によってiDeCoに加入する場合は、これまでの運用成果を新しい年金制度に引き継ぐことができます。移換には条件がありますが、満たさない場合でも資産がなくなることはありません。

メリット③退職金を準備できる

iDeCoを一時金として受給する場合、70歳までの任意のタイミングで受け取れるため、退職金としても活用できます。

-自営業・フリーランス・会社員

一般的に自営業・フリーランスの人には定年がなく、自分で準備しておかない限り退職金もありません。また、近年は退職金制度を導入しない企業が増えているため、会社勤めの人でも退職金がない場合があります。長年勤めたごほうびとして、iDeCoを活用するのもよいでしょう。

-専業主婦・主夫

専業主婦・主夫にも退職金がありません。配偶者の定年退職に合わせて、iDeCoで自分用の退職金を準備しておくのもよいでしょう。ただし、会社員・公務員の扶養配偶者で課税所得がない場合は、当然ながら税制優遇は受けられません。

メリットとデメリットを知り、賢く利用する

よく知れば、デメリットとして紹介されていることを許容できたり、メリットだと思っていたことにも難点があったりするものです。自分にとっての優先順位をはっきりさせることが、自分に合った制度かどうかの判断材料になるでしょう。情報を見極めて、iDeCoを賢く利用したいものです。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road