資産運用は、目標の利回りと運用期間を決めて行うのが基本です。目先の利益にとらわれない長期投資には、複利効果など多くのメリットがあります。しかし実際に長期投資をする場合はどのような点に気をつけて資産運用していけばいいのでしょうか。本記事では、安定した資産運用を目指すための長期投資の秘訣や長期投資に向いている投資法を紹介します。

長期投資が推進される4つの理由

長期投資
(画像=billionphotos-com/stock.adobe.com)

投資スタイルは大きく分けると「短期投資」「中期投資」「長期投資」の3つです。それぞれにメリットはありますが、とりわけ長期投資には多くのメリットがあり資産運用の基本といわれています。ウォーレン・バフェットをはじめ著名な投資家の多くが長期投資で巨万の富を築いていることからも、長期投資の優位性は高いといえるでしょう。長期投資の主なメリットは以下の4つです。

  • 定期的に安定した収益を得られる
  • 少ないコストで運用できる
  • 運用にかける時間を削減できる
  • 資産運用商品の幅が広い

1.定期的に安定した収益を得られる

長期投資は運用期間が長いため、値上がり益だけでなく定期的に年数回の配当金や分配金を受け取ることが期待できます。仮に株価や投資信託の基準価額が下がったとしても配当金や分配金である程度の運用利回りを確保できるため、安定した収益を得られることがメリットです。そのため目先の値上がり益のみを追求する短期投資に比べてリスクの少ない運用ができます。

2.少ないコストで運用できる

株式投資で大きなコストが証券会社へ支払う売買委託手数料と売却益にかかる譲渡所得税です。短期投資で頻繁に売買を繰り返すとその都度手数料を支払わなければなりません。また例えば特定口座(源泉徴収あり)で売却益が出た場合は20.315%(復興所得税を含む)が源泉徴収されます。そのためNISA(少額投資非課税制度)を活用することも方法の一つです。

しかしNISAを使ったとしても年間120万円を超えた分の売買にはコストがかかります。その点、長期投資で一つの銘柄を10年間運用した場合にかかるコストは、往復の手数料と譲渡所得税が1回ずつだけです。NISAは非課税期間が5年ですが、非課税期間満了時も次の年にロールオーバーすればさらに5年延長することができるため、最大10年間非課税で運用することができます。

ただし投資信託は信託報酬などの運用管理費がかかるため、逆にコストが増える場合もあるでしょう。

3.運用にかける時間を削減できる

短期投資では、利益確定の機会を逃さないために1日に数回は株価をチェックすることになります。その時間が数年積み重なると莫大な時間となるでしょう。長期投資は、5年や10年などの目標期間を設定して運用するため、目先の株価を頻繁にチェックする必要はありません。毎日の株価の変動で一喜一憂する必要がないため、精神的に安定した状態で投資できることも長期投資のメリットです。

4.資産運用商品の幅が広い

長期投資では、運用期間が長くゆとりがあるため、株式や債券、投資信託、金(ゴールド)など幅広い商品を組み合わせて運用することが可能です。ほかの投資スタイルの場合、短期投資では債券や投資信託が急騰することは考えにくいため、株式投資やFXなどへ集中しがちになります。

一方で3年後の子どもの入学資金を増やすために運用する場合、元金を減らすことはできません。そのため株式投資は中期投資では選択しにくいでしょう。このように短・中期投資では運用する商品がどうしても限られてしまうデメリットがあります。また長期投資のもう一つのメリットが次に紹介する「複利効果」です。

複利効果とは何か

長期投資の最大のメリットは、複利効果を得られることです。複利効果とは、受け取った分配金を再投資して元本に組み入れ分配金にもさらに分配金がつく状態になることをいいます。「利が利を生む」といわれるように単利で運用した場合より結果的に多くの分配金を得ることができることが魅力です。元本100万円を単利と複利で10年間運用した場合の比較は以下のようになります。

・元本100万円の投資信託を10年間分配金利回り年3%で運用した場合の単利・1年複利の運用比較

年数単利運用複利運用
期間元本分配金元本分配金
1年目100万円3万円100万円3万円
2年目100万円3万円103万円3万900円
3年目100万円3万円106万900円3万1,827円
4年目100万円3万円109万2,727円3万2,782円
5年目100万円3万円112万5,509円3万3,765円
6年目100万円3万円115万9,274円3万4,778円
7年目100万円3万円119万4,052円3万5,822円
8年目100万円3万円122万9,874円3万6,896円
9年目100万円3万円126万6,770円3万8,003円
10年目100万円3万円130万4,773円3万9,143円
合計分配金30万円合計分配金34万3,916円
元利合計130万円134万3,916円

※1円以下は四捨五入。運用管理費などは考えないものとします。

10年間運用した結果、単利の分配金合計は30万円で年利換算3%です。一方複利運用は34万3,916円の分配金のため、年利換算すると約3.4%で単利運用より4万円以上多く受け取ったことになります。運用するなら複利運用のほうが断然有利なことが理解できるのではないでしょうか。

長期投資における2つのデメリット

メリットがたくさんある長期投資ですが、以下の2つのデメリットがあります。

投資効率が悪い

1つ目は「投資の資金効率が悪くなること」です。100万円運用の例でいえば100万円を一つの銘柄で10年間運用するため、その間資金をずっと寝かせることになります。短期投資のように一定以上値上がりしたら売却してほかの銘柄に乗り換えていけば利益を積み重ねていくことも可能です。

先行きの見通しが困難

2つ目は「企業の長期的な先行きを見通すのが難しいこと」です。「先の話は分からない」という言葉をよく聞きます。1年後の業績はある程度予測ができますが「5年後、10年後にその企業がどうなっているか」を現時点で予測することは困難です。その間、リーマンショックやコロナショックのように世界経済そのものが縮小してしまうこともあります。

長期投資を成功させる秘訣

では、長期投資を成功させるには、どのような点に注意したらよいでしょうか。長期投資を成功させる秘訣は、やたらに資金を引き出さないことです。例えば株式投資の場合、業績が堅調な一つの銘柄を長く保有することにより増配で配当金が増えたり株価水準によっては株式分割の権利を得て株数が増加したりすることが期待できます。

株価自体も業績が伸びていけば基本的に右肩上がりとなるケースが多いでしょう。そのため配当金が入金されても生活費として引き出さずにそのまま証券会社の口座に保有していつでも再投資に回せるようにすることが大事です。投資信託では、分配金を受け取るタイプではなく分配金を再投資するタイプの商品を購入することで複利効果が期待できると考えるかもしれません。

ただし分配金が高いファンドは、その分元本を取り崩していることになるため、投資信託の基準価額が下がる可能性があります。同時に複利効果もなくなるため、相対的に分配金を受け取るタイプは不利と考えたほうがよいでしょう。

株主優待も長期投資に向いている

個人投資家の間で大人気の株主優待も長期投資に向いています。株主優待は原則として6ヵ月または1年ごとに権利が確定した株主へ企業から自社商品や自社店舗優待割引券などが贈呈される制度です。配当金と株主優待を合わせた「総合利回り」が高い企業も多く個人投資家が銘柄を選ぶ際の重要な選択肢の一つになっています。

また1年以上保有した株主に優待券の枚数を追加するなどの「長期保有優遇制度」を実施する企業も増加傾向です。そのため長期優遇制度を目標とすれば自然と長期投資になるメリットがあります。例えば主婦の投資家がスーパーマーケット企業の株主になり株主優待の買い物カードでキャッシュバックを受けたり買い物優待券で安く買い物ができたりすれば長い目で見てかなりのリターンを得られるでしょう。

このような株主優待の活用などは理想的な長期投資の形の一つです。

短期投資は投機的になりがち!堅実に資産運用したいなら長期投資

長期投資で成功する秘訣は理解できたでしょうか。長期投資を行うことでさまざまなメリットやデメリットがあります。短期で大きな利益を得られるのが株式投資の醍醐味です。しかし日本でも著名な実業家が「短期の株式売買で約44億円の損失を出す」など、資金があるからといって必ずしも結果につながるわけではありません。

老後資金2,000万円不足問題を解決するために堅実な資産運用を行いたい場合は、長期投資で地道に増やしていくことが目標達成への一番の近道といえそうです。(提供:Incomepress


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