先月までの動き
企業年金・個人年金部会では、DC(確定拠出年金)の拠出限度額の見直しについて議論が重ねられ、見直し案が概ね了承された。年金広報検討会では、11月の「ねんきん月間」や11月30日の「年金の日」にちなんで実施される「令和の年金広報コンテスト」の中間状況が示され、2022年10月に施行される被用者保険の適用拡大に向けた広報活動案の概要が議論された。
○年金広報検討会br> 10月8日(第6回) 年金広報コンテスト、被用者保険の適用拡大に関する広報br> URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212815_00020.html (資料)
○社会保障審議会 企業年金・個人年金部会br> 10月14日(第16回) DCの拠出限度額についてbr> URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_163664_00006.html (資料)br> 11月20日(第17回) DCの拠出限度額についてbr> URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14975.html (資料)
ポイント解説:確定拠出年金の拠出限度額見直し
企業年金・個人年金部会は10月・11月と連続して開催され、確定拠出年金の拠出限度額の見直しについて議論が深められた。本稿では、大筋で了承と報道されている見直し案を確認する(1)。
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(1)企業年金・個人年金部会は、2020年6月の再開以降、抽選などで傍聴者を限定している一方、議事録を従来よりも大幅に早く公開している。しかし、11月20日分の議事録は本稿執筆時点で公開されていないため、配布資料や各種報道に基づいて
執筆している。
1|議論の経緯:今年5月の改正法成立を受け、6月から政令事項の検討を開始
今年5月に、確定拠出年金の企業型と個人型(iDeCo)の併用要件を緩和するなどの法改正が成立した(図表1)。6月の同部会では、法改正後の課題のうち、この法改正の施行(2022年10月)と併せて対応すべき点を、税制改正のプロセスも考慮して優先的に議論する方針が確認され、7月には見直し案が示された。8月には関係団体へのヒアリングが2度実施され、9月以降には7月の案の変更や具体化が議論された。
2|見直し1:確定給付型企業年金と併設時の企業型確定拠出年金の拠出限度を精緻化
確定給付型企業年金と併設時の企業型確定拠出年金の拠出限度額(月額)は、法改正後の「2.75万円」が「5.5万円-確定給付型企業年金の仮想掛金額」へ見直される(図表2赤枠)。単純に実施されると、確定給付型の仮想掛金額が2.75万円超の企業では企業型確定拠出年金の掛金を現在より引き下げざるを得ないケースが出てくる(図表3)。8月のヒアリングでは何らかの措置を求める意見が相次ぎ、一定の経過措置が設けられることになった。
具体的には、施行日以前に確定給付型企業年金と企業型確定拠出年金を併設する企業が、施行日以前の規約に基づく企業型確定拠出年金の掛金と確定給付型企業年金の給付をともに続けている限りは、従前の掛金拠出が可能となる。
3|見直し2:企業年金と併用時の個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度を一本化
上記の見直しに加え、確定給付型企業年金や企業型確定拠出年金と併用時の個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額(月額)が、現行の「1.2万円または2.0万円」から「2.0万円」へ一本化される(図表2青枠)。企業型確定拠出年金との併用時は、企業型での拠出限度額までの残余額と個人型の拠出限度額のいずれか少ない額まで個人型へ拠出可能になる。
この場合も、単純に実施されると、確定給付型の仮想掛金額が4.3万円超の場合には個人型確定拠出年金の掛金を現在より引き下げざるを得ないケースが出てくる(図表4)。しかし、個人型は自助努力であり、労働条件の一つである企業型とは性格が異なることを考慮して、個人型には経過措置が設けられないこととなった(2)。
大筋で了承と報道されているが、税制調査会等での議論や施行時期(3)を巡る議論などが注目される。
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(2)11月の同部会の資料では、企業型確定拠出年金での個人拠出(マッチング拠出)の経過措置が明示されていない。企業型の仕組みであるため経過措置が適用される可能性が高いが、その場合は個人拠出でも個人型とは扱いが異なる形になる。
(3)2022年10月の改正法施行と同時の可能性があるが、関係団体からはシステム開発が間に合わない懸念が表明されている。
中嶋邦夫(なかしまくにお)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター公的年金調査室長兼任
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