結果の概要:10月は8%台前半にとどまる
12月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)は11月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
12月2日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
【ユーロ圏19か国失業率(2020年10月、季節調整値)】
・失業率は8.4%、市場予想(1)(8.4%)と同じで前月(8.5%)から低下した(図表1)
・失業者は1382.5万人となり、前月(1391.1万人)から8.6万人減少した
----------------------
(1)bloomberg集計の中央値。
結果の詳細:実は7月の失業率は高かった
10月の失業率は市場予想と同じ8.4%となった。また9月までのデータが改定され、過去の失業率が大きく悪化方向に修正されている(9月改定前:8.3%→今回:8.5%、8月改定前:8.3%→今回:8.6%、7月改定前:8.1%→今回:8.7%)。
あわせて、今回のデータでは若年失業率も悪化方向に修正され(図表2)、失業者数も大きく改定されている。今回公表されたデータによれば、失業者が時系列で見て全体的に増加(悪化)方向に改定されたことに加え、7月に集中的に失業者が増えたのち、減少に転じているという形に修正されている(図表3)。改定前のデータでは世界金融危機と比較して雇用の悪化ペースが抑制されている形となっていたが、今回の改定によれば7月時点に140万人ほどの失業増があり、この時点に限れば金融危機を上回るペースで失業者が生じていたことになる。
ただし、過去のデータは悪化方向に改定されたものの、足もと10月の失業率にフォーカスして見れば8%前半にとどまっており、予想と比較して10月の失業状況が悪いという訳ではないと言える。また、10月の失業率の変化を国別に見ると、4か国で失業率悪化、8か国で失業率改善となっている(図表4、若年層は図表5)。
なお、9月までの改定の要因については、フランスの失業者・失業率が悪化方向に大きく改定されたことが主因と見られる(2)(フランスの失業率は9月改定前:7.9%→今回:8.8%、8月改定前:7.5%→今回:9.0%、7月改定前:7.1%→今回:9.4%)。
詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルを確認すると、10月単月ではイタリアで就業者減少、一方でポルトガルでは就業者増加となった。動きの方向は異なるが、いずれの国も変化は小幅にとどまった。また、労働参加率がコロナ禍前の水準と比較して低い水準のまま回復に頭打ちの兆しがある点も共通しており、雇用の回復は弱い(図表6・7)。11月以降、各国で移動制限再強化を実施していることに鑑みても、先行きの不透明感は依然として大きいと言えるだろう。
----------------------
(2)フランス国立統計経済研究所(INSEE)では、四半期ごとの雇用統計を公表しており、7-9月期に失業率が急増した要因として4-6月期のロックダウン期間中に職探しができなかった人が求職活動をはじめたため、と説明している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
高山武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
・ユーロ圏消費者物価(11月)-封じ込め政策再強化も物価の基調は変わらず
・英国GDP(2020年7-9月期)-主要国の中での出遅れが目立つ
・英国雇用関連統計(10月)-明確な雇用改善なく、再びロックダウンに
・英国金融政策(11月MPC)-1500億ポンドの国債追加購入を決定
・世界各国の金融政策・市場動向(2020年11月)-ワクチン開発期待でリスクオンムードが高まる