副業は、収入不足を補うためにする仕事といったイメージがありますが、実際には年収1,000万円以上の富裕層も盛んに副業を行っています。
副業をする際は、資産管理会社を利用するとさまざまなメリット得ることができる場合があります。では、いったい副業所得がいくらくらいであれば資産管理会社を検討したほうがよいのでしょうか。資産管理会社を設立したほうが“有利”だといえる条件を把握しておきましょう。
目次
副業解禁で希望者が増加。ただしデメリットも
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2019年)を見ると、近年、一般労働者の賃金は横ばいを続けていることがわかります。そんななか、会社員へ副業解禁する企業も一部見られるようになりました。厚生労働省労働基準局が示す資料でも副業希望者は年々増加傾向にあり、2021年から副業をはじめようと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、副業を希望する労働者が増加しているにもかかわらず、副業を推進・容認している会社は、リクルートキャリアの「兼業・副業に対する企業の意識調査」(2019年)で30.9%にとどまっており、副業を行ってしまうと本業の就業規則に抵触してしまう恐れがあります。
禁止されているにもかかわらず無断で副業を行ってしまうと、副業先で労災事故に遭遇した場合は本業の会社にも知られてしまうことになるため、後で大きな問題に発展する恐れがあります。
また、税金面でもデメリットがあります。たとえ日雇いなどの短期就労の場合でも、2社以上で同時に雇用されてしまうと年末調整が行えず、確定申告が必要となります。
このほかにも、個人所得税は、所得が多ければ多いほど税率が高くなる累進課税が採用されているため、副業によって収入アップを図るなら税負担も相応に増加することを覚悟しなければなりません。
過重労働や労災を避けられる、資産管理会社を利用した副業
労働を伴う副業は労働時間が収入に直結しやすい特徴がある反面、労働時間が長くなるにつれ労災リスクも高まってしまいます。
そこで、金融資産や不動産など資産を利用した、いわゆる“お金に働いてもらう”タイプの副業を行うことで過重労働や労災リスクを避けることができます。
その際、資産管理会社を通じて副業を行うと、青色申告特別控除の適用を受けられたり、経費として計上できる範囲が拡大するといった税金面でのメリットが期待できます。
金融資産か不動産か…資産管理会社で運用する各メリットは?
資産管理会社は、金融資産や不動産などの資産を運用して収入を獲得することとなります。このため、一般に資産を多く有する人が有利となります。
金融資産を運用する場合のメリット
たとえば、通常であれば株式や債券や投資信託などの金融資産から得られる収入や損失は申告分離課税となり、申告分離課税内での損益通算後の課税所得額に対し、約20%の税率で所得税が課されます。
しかし、ひとつの上場企業で3%以上の株式を保有する個人の大株主の場合は、配当金が総合課税となり、最大55%の所得税が発生します。
こうした金融資産の取引を、資産管理会社を介して行うことで、受取配当金として他の法人所得と合算されることになります。
法人所得に対する所得税などの実効税率は、中小企業では所得額によって負担率が変化しますが、おおよそ25%~35%程度といわれています。申告分離課税の税率と比較してみると、個人の大株主以外は、資産管理会社を通じて金融資産の取引を行うほうが、税負担が大きいように思えます。
しかし、受取配当金として法人所得に算入した場合は、「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引くことができるようになります。
販管費に含めることができる費用は、人件費や交際費・旅費交通費・通信費・光熱費・修繕費など様々あります。
販管費を適切に利用することで、受取配当金を含む法人所得からさまざまな経費を控除でき、課税所得額が小さくなりますので、申告分離課税の場合よりも所得税の税負担を軽減することができる場合があります。
不動産を運用する場合のメリット
株式や債券などの金融資産のほかに、投資用不動産を所有している場合は資産管理会社のメリットが期待できます。
投資用不動産からの賃料収入に対し、個人のままでは差し引ける経費が比較的少なく、建物の減価償却が終わった際に課税所得額が増加し、所得税などの負担が大きくなる恐れがあります。
資産管理会社を通じて不動産を取得すると、管理費や人件費などを経費にすることができます。こうして課税所得額を抑えられるほか、不動産所得ではなく資産管理会社からの役員報酬や配当金として複数人で分散して受け取ることで節税効果を発揮できる可能性あります。
いくらから検討すべき?資産管理会社で副業を行う目安
副業の収入が金融資産からの収入の場合や、上場企業の持株比率が3%を大きく超える個人の大株主の場合は資産管理会社の検討をおすすめしますが、それ以外の場合は判断が難しくなります。
金融資産の場合:収入に対しての経費率20%以上が検討の目安
株式や債券などの金融資産の譲渡益・配当金にかかる税率(約20%)は、基本的に法人税等の実効税率(25〜35%程度)より低いということは先述のとおりです。そのため、資産管理会社を興した際に経費をどれだけ計上できるかで目安となる金額が変わってくるため、メリットを個別に算出することが大切です。
たとえば株式の配当金が1,000万円の場合、個人のままであれば所得税等は約200万円ですが、資産管理会社の実効税率を30%とした場合の税負担は300万円となります。この条件で考えるならば、節税効果を生み出す、つまり資産管理会社で税負担が200万円を下回るためには、経費がおよそ330万円以上必要となります。
法人の実効税率にもよりますが、金融資産からの収入に対し、経費率が20%以上あるのならば資産管理会社の設立を検討してみる価値があります。
不動産所得の場合:課税所得700万円前後が目安
申告分離課税となる金融資産からの収入と異なり、個人の場合の不動産所得は、給与所得などの他の総合課税の所得と損益通算されて課税所得額が算出されるため節税のメリットを獲得しやすくなっています。
個人の所得税の税率は、課税所得額が695万円~900万円で税率が23%となり、これに住民税の所得割の税率10%を加えると、中小企業の実効税率を上回る可能性がでてきます。そのため、総合課税される所得が「700万円前後」で資産管理会社の設立メリットを検討してみることをおすすめします。
注意点:資産会社は必要ないかもしれない場合
資産管理会社の設立の狙いが節税対策であれば、他の方法と比較・検討することが重要です。
たとえば個人の大株主であっても、持株比率を3%未満にすれば申告分離課税が利用可能になるため、持株比率が3%をギリギリ満たしているような場合、売却によって申告分離課税を適用させたほうが効果的なケースもあります。
また所有する資産の大部分が投資用不動産であり、それが5棟10室以上などの要件を満たす“事業的規模”として税務署から認められる場合、確定申告を「青色申告」で行うことが可能になります。青色申告者は、所得から最大65万円の特別控除を受けられるほか、配偶者などへの給与を経費として計上できる特典があります。
このように、節税方法は資産管理会社をつくるだけではありません。さまざまな方法の効果を比較・検討してみるとよいでしょう。
収入が減少した場合は固定費が重荷となるリスクがある
資産管理会社にはリスクもあります。たとえば、経済環境の悪化や所有している資産の移転などにより収入が減少してしまった場合は、想定していた節税効果が得られないばかりか、資産管理会社の維持コストが重荷となってきます。
金融資産や不動産運用からの収入を柱とする資産管理会社は、単独では収入を得ることができません。そのため、一度仕組みが崩れると立て直しは容易ではありませんが、そうしている間にも維持コストは変わらず発生し続けます。
特に、人件費や固定資産税・法人住民税の均等割や税理士への報酬などは、資産管理会社が赤字となった場合でも固定的に発生し続けてしまうことになります。
資産運用を副業にする場合は、資産管理会社を検討しよう
最後に、ここまでの内容を整理したいと思います。
金融資産の運用を主とする資産管理会社を設立する場合、申告分離課税の税率の方が法人の実効税率よりも低いためそのままでは税負担が大きくなってしまいます。しかし、資産管理会社を通じて取引を行うことで、さまざまな経費を差し引くことが可能となるため、経費額によっては節税効果を得ることができます。
賃貸用不動産の運用を主とする資産管理会社を設立する場合は、課税所得額700万円前後が検討の目安でした。なぜなら、個人の場合は不動産運用による収入は本業所得などと損益通算されますが、その際、課税所得額によって税負担が大きくなるからです。資産管理会社へと分散することで節税メリットが比較的得やすい特徴があります。
資産管理会社による節税効果は所得額や所得の種類、経費率などによって個別性が強くなっています。また資産管理会社は赤字の場合でも一定のコストが生じ続けるため、会社設立の前に税理士などに効果額を相談することがおすすめです。(提供:JPRIME)
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