プライベートバンクやプライベートバンカー(以下、バンカー)に限らず、マーケット関連商品を取扱う金融機関の組織や営業担当者が「スチュワードシップ」に則っているのかいないのか、或いはきちんと組織の体を為して「お客様の財産をお守りする」という基本姿勢を持っているのかどうかを知るのは、実はたいして難しいことではない。「ハウスビュー」をどのように取扱っているかを確認すれば簡単に調べることが出来る。更に深掘りすると「投資哲学(Investment Philosophy)」の取扱い方だ。そのハウスの基本ポリシーで、極めて重要な位置づけとなる。

欧米の伝統的なプライベートバンクや投資銀行は、ある意味これらを頑なに長年守ってきたからこそ、そこに伝統が産まれ、顧客からの信頼を築き上げている。だがよくよく考えてみれば、長年日本の銀行が伝統的に金融機関としての信頼やブランド力を高水準で維持してこられたのは、やはり先人達がそうした姿勢を貫いてきたからだ。「○○銀行は決して大切なお客様を見捨てて逃げたりしない」と言った社訓のようなものが大切に守られてきたからこそ、その看板に「信用」という二文字が浮き出るようになった。

だが残念ながら、日本は金融自由化と1980年代に大バブルが育成される過程とその崩壊の中でこの大切な魂を忘れ、自身の利益の為だけに突っ走ることを是としてしまった。その結果、30年前には都銀だけでも13行もあったものがメガバンク3行に集約された。それでも尚、未だ生き残りを賭けて必死にもがき続けている。

実はこれと同じことをプライベートバンクやバンカーの「ハウスビュー」及び「投資哲学」の取扱い方に見ることが出来る。

そもそも「ハウスビュー」とは何か?

富裕層,資産運用
(画像=HNK / pixta, ZUU online)

「ハウスビュー」とは、正にその金融機関が市場の先々や景気動向、政治動向、インフレ見通しなどをどのように考え、それに基づいて、各マーケットがどう動くのか、或いは各企業の収益環境にどのような影響を与えると考えているかを示すものである。

グローバルに展開している欧米の金融機関の最大の強みは、この為のリサーチ部門が極めて充実していることだ。各拠点にストラテジスト、エコノミスト、そしてアナリストを擁した上に、本社には総元締めとなるチーフ・ストラテジストなどがいる。そして定量分析でデータ解析をするクオンツ・アナリストも存在する。グローバル化するほど、24時間、間断なく世界中から情報がアップデートされる。

筆者は英国バークレイズのウェルス・マネージメント部門で、そのリサーチと商品関連にまたがるISSヘッドとして、その実態をつぶさにこの目で見ることが出来た。ファンドマネージャーをしていた頃からの夢を最後に適えられた。何故かと言えば、外資系と日系金融機関のその奥行きの深さの違いは、実に大きいことを実感していたので、どうしてもその現実を一度組織の内側から見たかったからだ。

プライベートバンク、その圧倒的な強みの源泉