現在、低金利の状態が長期化していることに伴い、各種の外貨建て金融商品が販売されています。しかし一方で、投資家における外貨建て金融商品に対する理解不足が問題視されています。こうした問題を解決するために、外貨建て金融商品の基本的な仕組みやリスクの知識を深めましょう。
外貨建て金融商品の種類と特徴
外貨建て金融商品とは、取引における価格がドルやユーロなどの外貨で表示されている金融商品のことをいいます。そして外貨建て金融商品には以下のような種類があります。
外貨預金
米ドルや豪ドル、ユーロなど、外貨建てで行う預金のことをいいます。取り扱う外貨は金融機関によって異なりますが、前述のほかにスイスフランや香港ドル、南アフリカランドなど多様な外貨が取り扱われています。
外貨預金の特徴としては、金利が高いということが言えます。現在の日本の金利は普通預金で0.001%、定期預金でも0.002%という低さですが、米ドルの普通預金金利は0.01%と日本の10倍となっており、かなりの高金利で預金ができることが魅力となっています。
外国株式
米国株や中国株など、外国籍の企業が発行する株式のことをいいます。一般的には海外の取引所にて上場されている銘柄を指し、“GAFA”といわれるGoogle、Amazon、Facebook、Appleの株などは誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。
海外にはグローバルな成長が期待できる企業や、これからの成長が期待できる企業などがたくさんあります。それ故に大きな株価の上昇、高配当が期待できることから外国株式に注目が集まっています。
外国債券
海外の公的機関や政府、もしくは企業が発行者で、取引通貨の元本や利息、さらに発行場所のいずれかが海外である債券のことを指します。外国債券には円建て外債やユーロ円債、二重通貨建て外債などがあります。
外国債券は、外貨預金と同じく金利が比較的高いことが特徴ですが、債券と株式は異なった動きをすることから、投資の原則である「分散」を視野に入れ、外国株式と外国債券を保有するという考えも効果的といえるでしょう。
外貨MMF
外貨建てMMFのMMFとは、「マネー・マーケット・ファンド」の頭文字を取ったものです。外貨建て投資信託の一つであり、投資対象を外国の中でも優良企業の短期金融商品や格付けの高い公社債などに限定しているところが特徴となっています。
外貨建て個人年金保険
保険商品の一つであり、保険料の支払いや保険金もしくは解約返戻金の受取を日本円ではなく外貨によって行うものです。支払いや受取については日本円で行うことができる商品もあります。特徴として国内での個人年金保険よりも高い利回りが期待できることから、ここ数年販売数も伸びてきています。
FX
FX(外国為替証拠品取引)とは「Foreign Exchange」の頭文字を取ったもので、この単語を知らない人はいないのではないでしょうか。ちなみに外国為替とは、国と国の通貨を交換する取引のことをいい、証拠品取引とは取引の対象である通貨を直接やり取りするのではなく売買取引の結果を口座の残高に反映させる取引のことです。
FXの取引は為替レートの動きを利用したものとなるので、為替の動向を読む力が必要となります。
またFXの特徴として必ず理解しておきたいのが、「レバレッジ」です。レバレッジとは「少ない証拠金でレバレッジに換算すると25倍以下の取引ができる」というものです。ただし、25倍というのは法的に定められている上限ですので、実際にレバレッジを行う際には証拠金を多めに用意して行うことが、リスク軽減の秘訣である点を覚えておきましょう。
外貨建て金融商品を保有する意義とは?
なぜ近年において外貨建て金融商品が目立ってきたのでしょうか。その背景について、「世界経済の見通し」および「日本経済への影響」の2つの視点から解説します。
世界経済の見通し
IMF(国際通貨基金)が発表している「世界経済見通し(2020年10月)」によると、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的な経済活動の停滞により、2020年の世界経済成長率はリーマンショック直後のマイナス0.1%を上回るマイナス4.4%と予想されています。ただし、今後のワクチンの普及などにより経済回復の兆しが見通せることから、2021年の経済成長率についてはプラス水準になると見られています。そして、日本を上回る成長率が予想される国や地域が多いことも注目すべきところです。
<成長率予測(年間の増減率)>
2019年 | 2020年(予測) | 2021年(予測) | |
世界実質GDP | 2.8% | -4.4% | 5.2% |
米国実質GDP | 2.2% | -4.3% | 3.1% |
日本実質GDP | 0.7% | -5.3% | 2.3% |
中国実質GDP | 6.1% | 1.9% | 8.2% |
日本の金融緩和政策による国内経済への影響
日本では今後もさらに少子高齢化が進むこと、そして人口の減少が止まらないことから、実質GDPの低い成長率が継続するであろうと予想されています。また、日本銀行は2013年1月に「物価安定の目標」として消費者物価の前年比2%とし、量的にも質的にも大幅な金融緩和政策を行っています。
このような政策が今後も継続されることで国内の物価は上昇を続け、現状の利回りと比較した結果、日本円そのものや日本円建ての金融商品の価値の低下が見込まれているのです。
外貨建て金融商品を保有するメリット
上に述べたような将来における日本円の価値の低下を防ぐ方法として、利回りの高い外貨を保有すること、もしくは外貨を利用した運用を行うことが挙げられます。特にIMFの発表にもあるように、今後日本以外の国や地域において日本以上の経済成長が見込まれるのであれば、その国の外貨を活用し、現在保有している日本円の資産価値を高めることは最大のメリットでもあり、今後の資産運用における必須の考え方であるともいえるでしょう。
外貨建て金融商品を保有する際のリスクについて
外貨建て金融商品を保有する際「金利変動リスク」や「為替変動リスク」がありますが、全てに共通するリスクとして、「為替変動リスク」が挙げられます。この為替変動リスクについては、外貨建て金融商品を保有する際には必ず理解しておく必要があります。
為替変動リスクとは
為替変動リスクを考える際にポイントとなるのが為替レートです。例えば、100万円をドル建ての外貨預金に預けるとしましょう。その際の利回りは0.3%と仮定し、税金が考慮しないものとします。その時の為替レートが1ドル100円であれば、1万ドルを預金することになり、1年後には利息を含めた1万30ドルを受け取ることが可能です。
ただし、その際に為替レートが1ドル110円になっていれば、日本円で受け取る金額は110万3,300円となり、実際の利回りは1.1%となります。逆に満期受取の際の為替レートが1ドル95円となっていた場合、95万2,850円となり、元本割れとなってしまうのです。
上の預金を例にとっても満期の時点で円高・ドル安(1ドル95円)になっていると4万7,150円の為替差損を受けることになりますし、逆に円安・ドル高(1ドル110円)になっていると10万3,300円の為替差益を受けることができます。
ただし、受け取るときのレートによって為替差損が発生したとしても、保有している期間においてそれを上回る利息を受け取ることができれば最終的な損失とはならないことから、外貨建て金融商品を保有する際には、「預け入れ時の為替レート」と「保有期間の利回り」、さらに「受け取り時の為替レート」をリスクとして考え、その回避策も合わせて考えておく必要があります。
為替レートはさまざまな要因で変動します。そのうちの一つが金利動向などの経済要因です。例えば、円とドルの為替レートの動きを見てみると、2019年1月時点では1ドル=108円~109円の間で推移していたレートが、2020年12月時点では1ドル=103円~104円の間で推移しており、2年間の間に円高が進んだことが分かります。
この円高の要因の一つとして挙げられるのが、アメリカの長期金利の低下です。実際に2019年1月時点では日本とアメリカにおける10年国債の金利差は約3%弱となっていましたが、2020年12月時点ではその金利差は0.9%と、1%を下回る状態です。
<日米の10年国債金利差>
日本10年国債金利 | 米国10年国債金利 | 日米金利差 | |
2019年1月 | -0.037% | 2.698% | 2.735% |
2020年12月 | 0.021% | 0.951% | 0.930% |
「水は高いところから低いところへ流れるが、お金は低いところから高いところへ流れる」という言葉があるとおり、2019年の1月時点では米国債の金利が高かったことから、円からドルへの資金流出が起き、その結果ドル高とになったといえます。しかし、現在(2020年12月時点)では金利差がほぼなくなったことから、円からドルへの資金の流れが以前と比べ滞っている状態となり、その結果、現在の円高ドル安へつながったということがお分かりいただけると思います。
もちろん、要因はこれだけではありませんが、為替が動く要因として各国の金利の動きをチェックしておくことも大切であることは覚えておきましょう。
円と外貨の交換レート
為替リスクを理解するうえで、日本円と外貨の交換レートがどのような仕組みで行われているのかを知っておくことも大切です。
まず、円を外貨に換える際にはTTSといわれる対顧客電信売相場を使用し、外貨を円に換える際にはTTBといわれる対顧客電信買相場を使用します。そして、その2つを使用する最終的な基準となるものがTTMといわれる対顧客電信仲値です。TTMは銀⾏などの⾦融機関が顧客と外貨の売買を行う際に基準となる為替レートで、毎営業⽇の午前10時前の為替レートを参考に決定するとされており、このTTMに手数料を加味したものがTTSおよびTTBです。為替に変動がなかった場合においては、TTSとTTBの差が為替手数料として扱われることになります。
資産運用の原則である「分散」を
為替レートは予想できるものではありません。だからこそ、資産運用の原則の一つである「分散」の考えが大切となります。保有する外貨を分散することでリスクを分散することもできますし、保有期間そして保有する商品を分散することもリスクの軽減につながると考えましょう。
また、円から外貨への交換、そして外貨から円への交換の際にかかる手数料については、金融機関ごとに異なります。外貨建て金融商品を保有する際には、取引を行う金融機関についても複数社を比較して選ぶことが大切です。(提供:Incomepress )
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