日本の職人やアーティストが世界で活躍できる土壌を作るべく、アメリカで和菓子ブランド「MISAKY.TOKYO(ミサキ・トーキョー)」を立ち上げた三木アリッサさんへのインタビュー第三弾。

ビジネスパートナはおろか、友人さえいないロサンゼルスでビジネスを立ち上げた三木さん。0からのスタートだった彼女が、立ち上げ数年でドリームワークス本社での販売は、1億9千万人のフォロワーにいるキム・カーダシアンとのコラボレーションを実現するなど多くの実績を残した。

アメリカで販路を開拓した三木さんならではの営業スキルについてインタビューした。

コネクションづくりは飛び込み営業で。うまく進める秘訣とは?

NEW・日本の経営者たち〜サステイナブルな社会を作る挑戦〜
(画像=THE OWNER編集部)

永井 ドリームワークス本社やトランプ大統領が所有するゴルフクラブなど、いわゆるラグジュアリーな場所に製品を提供していらっしゃいますが、どのような戦略、方法で営業をされたのでしょうか?

三木 秘訣はありません。ひたすら飛び込み営業を続けることです。弊社は、超高級住宅街で知られるビバリーヒルズにあるお店と販売店契約を交わしています。その店舗もすべて飛び込み営業で契約を取り付けました。

スタートアップや海外ビジネスのお話をするとき、「もっといい方法はありませんか?」とよく聞かれますが、特別なコネクションや裏技は存在しません。

ただ、飛び込み営業のコツはあります。よく日本の営業マンは、「営業に来ました!」とかしこまっていますが、そのような姿勢はアメリカでは受け入れられません。アメリカで営業をするときに大事なのは、めいっぱいの笑顔と、相手が抱える問題を自分たちが解決できるということを丁寧にお伝えすることです。

たとえば、「世界的に動物性食材不使用でグルテンフリーのお菓子が求められているから、そういったユーザ―へのギフトとして、弊社の和菓子を考えてみませんか?」という提案を、満面の笑顔で一生懸命伝えるのです。

私は、英語のネイティブスピーカーではありませんが、飛び込み営業をうまく進められてきたのは、思わずこの人としゃべりたくなる、という表情・仕草を心掛けているからではないかな。と思うのです。そのためでしょうか、営業先ではどこもすごく反応がよく営業で苦労した記憶はあまりありません。

例えば、ロサンゼルスではファーマーズマーケットに店舗を構えるのがフードビジネスの要、登竜門であるとされています。多くの商品や店舗がファーマーズマーケットで有名になって、マスプロダクションに行くというルートを通っていくといわれているんです。私もファーマーズマーケットに入りたいと思って申し込みをしたのですが、「2~3年待ち」と言われてしまいました。

どうしようかなと思ったときに、とあるファーマーズマーケットに店舗を構える、日本人オーナーと出会ったのです。そこでオーナーさんに直接「弊社と一緒にやりませんか?」と営業を行った結果その方も興味を持ってくださり、待つことなくファーマーズマーケットでビジネスをスタートすることができました。

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(画像:ファーマーズマーケットで活動中の三木アリッサ氏)

一つファーマーズマーケットで販売を始めると評判になり、さまざまなところから声がかかるようになったのです。その中の一つがドリームワークスさんでした。

三木 私自身もブランドの象徴だと考えています。例えば、今、髪の毛をオレンジ色にしていますが、これも戦略の1つです。というのも、アメリカ人から見ると、アジア人の顔はどうしてもみんな一緒に見えてしまいます。そこで、アジア人とひとくくりにされるのではなく、「MISAKY.TOKYOの私」と認識してもらえるように考えたのが髪の色でした。
オレンジを選んだのは、私の性格に合っていること思ったこと、ブランドカラーがグリーンとオレンジであること、なおかつアジア人の中ではこの髪色をしている人があまりいないからという理由です。

そのうえで日本らしさを忘れないように鯉のイヤリングをしてみたり、着物のイヤリングをしてみたりと工夫しています。

お客様が求めるものを提供し、知名度アップ ~Tik Tokの影響大~

永井 アメリカ全土でも知名度が上がってきたなというのは感じられますか?

三木 TikTokの影響はすごく大きいです。現在、弊社のTik Tokのフォロワーは12万人いますが、その影響は大きいです。

先日も、Thalia(タリア)※注というラテンナンバーワンのアーティストが、弊社をフォローしてくれました。彼女はハリウッドサインに名前が乗るラテンNo.1の歌姫で、インスタグラムのフォロアーは1,600万人にもなります。ある時、彼女が弊社のTikTokを見つけ弊社のインスタアカウントをフォローしてくれましたので、サンプルをお送りしたところ、商品を絶賛するストーリーを載せてくれたのです。そこから、ラテン系の方々からたくさんの注文をいただいています。ほかにもTikTokを見た大手メディアからの取材の問合せも増えています。

※Thalia(タリア)は世界中で4000万枚以上のアルバムを売上げているメキシコ出身の女性歌手、女優

山本 TikTokで、ですか?アメリカ版では買い物もできますか?

三木 TikTokは、とてもシームレスですよ。たとえば、弊社の動画を見たあとに、プロフィールに飛んで、インスタグラムにも、オンラインショップにもすぐアクセスできます。だから、これで販売できるのです。

山本 ちょっと前、ようやくインスタグラムマーケティングが日本でも言われるようになってきたところですよね。

三木 そうですね。ただインスタグラムは、見てくれる人の数がフォロワーを超えることが難しい。つまり、単純な写真投稿では新規にフォロワーになってもらうのが、難しい。広告やインフルエンサーとコラボして、というのがほとんどだから、急激な成長は難しいのです。

でもTikTokの場合、動画をうまく作って行けば、自分のフォロワー数にかかわらず新規フォロワーの獲得が比較的簡単にできます。実際、弊社もフォロワーが3万人しかいなかった頃に、300万回再生された動画がありました。そのおかげでフォロワーが一気に10万人増えました。広告費をかけなくても、周知、集客できるのがTik Tokの良いところなのです。

山本 TikTokで発信するうえで、大事なことはどのようなことですか?

三木 もちろん「動画映え」です。弊社の商品も実は、全部動画映えを大事にしました。スタート当初は、日本好きの人、あるいは魔女に興味のある人、パワーストーン、ヴィーガンなど小さいターゲット層へどんどん網を張り、そこに弊社のファンをどう増やしていくか、といった戦略をやっていました。

でも、最近はもうフォロワーが10万人を超えたので戦略を変え、また動画を作り直しています。今は、どうしたら有名人に注目してもらえるか、というホームラン戦略を考えています。例えば、全米で一番有名なテレビ司会者のエレン・デジェネレス(※注)などにアクセスしてもらえるように、いろいろな施策を行っています。

※エレン・デジェネレスは日本の黒柳徹子さんに相当するマルチタレント。自身が司会者を務めるトーク番組「he Ellen DeGeneres Show」は邦題では「エレンの部屋」とも呼ばれています。

山本 三木さんが「エレンの部屋」に出演されたらぜひ教えてください!(提供:THE OWNER