福岡市や民間企業とタッグを組み、スマートシティの実現を目指すLINE Fukuoka株式会社 Smart City戦略室 室長南方 尚喜氏へのインタビューの第二弾。
後半は、
これらの取り組みに最前線で携わってきたLINE Fukuoka株式会社 Smart City戦略室 室長南方 尚喜氏に、全国自治体のDX戦略の先駆けとなったプロジェクト発足の経緯や実現までの道のりについてインタビューした。
「Life on LINE(ライフオンライン)」を福岡で進めるワケ
山本 ほかのエリアでスマートシティ戦略のようなことは、進めていますか?
南方 今時点では構想にはありません。LINEグループ全体としても、福岡市を注力都市として位置づけています。
というのも、LINEグループのビジョンとして、「Life on LINE(ライフオンライン)」を掲げています。これは、人の生活、すなわち朝起きてから夜寝るまでの1日の中で、LINEを使って暮らしをサポートするライフプラットフォームになるというのが「Life on LINE」というビジョンです。福岡市は、それを実現していくための重要なエリアとして設定しています。
私たちLINE Fukuokaはこのビジョンを目標とし、福岡のスマートシティ化を推進すべく様々な取り組みを行っています。
山本 福岡市で進めている理由はあるのでしょうか?
南方 自治体・企業・市民が活発というところが1番の理由です。福岡市は国から国家戦略特区として定められたこともあり、スタートアップ企業の支援を積極的に行っています。規制緩和をしながら、新しいことにチャレンジできる街になっています。何より福岡市の高島市長がすごくITに明るい人で、なおかつとても発信力のある方、影響力のある方です。そのようなリーダーがいるというのも大きいです。
そして、LINE Fukuokaをはじめ、西日本鉄道さんや九州旅客鉄道さんなど、地場で活躍する企業もたくさんあって、インフラ企業からベンチャーまでみなさんとても元気です。この3つの要素が揃っているからこそ、福岡はスマートシティになるポテンシャルがすごく高いと感じました。
「Life on LINE」を全国へ広げていきたい
永井 次は、目指す未来や将来についてお話しいただきたいと思います。今後、具体的にどのような事業をどのような形で展開していくのか、ビジョンについてお聞かせください。
南方 今後も引き続きこの福岡で、「Life on LINE」ビジョンを元にスマートシティを目指していきます。それに伴い、領域も自治体以外にも交通系や医療系に広げていく予定です。交通系はすでにプロジェクトがスタートしています。そのようにして、LINEが人々の生活をカバーできるようにしていきたいと思っています。
福岡はスピード感を持って新しいことにチャレンジしやすい街だから、真っ先に福岡でやっていますが、福岡だけが便利になればいいわけではなく、これを全国に広げていきたいというのが私の構想です。そして、実際にそれも少しずつ始めてはいます。
例えば、福岡市のLINE公式アカウントでは、壊れている公園のベンチなど街の不具合の写真と位置情報を福岡市に送ると、市の担当者が調査・状況に応じて修理してくれるというサービス機能がありますが、このようなことは、各自治体に合わせて開発をしなければ使えません。そのような機能の開発に費用がかかります。また、それを運用するにも、ランニングコストがかかりますので、そこは各自治体で負担していただく必要があります。
このように、福岡市での成功事例や現在の取り組みをほかの街でもできるようにしていきたいと思っています。これに関しては自治体や事業者からすでに100件近く問合せをいただいています。
ITを活用した街づくりを進めるためは、LINEの技術を活用して市民の参加意識を高めることが重要
南方 日本人では多くの方に使っていただいているコミュニケーションアプリであるLINEならば、技術と市民のみなさんのギャップを埋められるのではないかと思っています。先進的な技術もこれからも必要ですが、今は市民のみなさんが困っていることを、LINEが持っている技術でスピード感をもって解決していこうとしています。困っていることがLINEのような技術で解決されたら、もっとたくさんの方に使っていただけると思います。
私たちはコロナ禍での数々の取り組みを通し、市民の皆さんが直面する困りごとをタイムリーに解決してきました。すると、とても多くの方がそれを自発的に活用したり、家族や友人、同僚などにオススメするシーンを目の当たりにし、市民と技術との距離が縮まる大きな手応えを得ました。
困っていることを今すぐ解決するということを繰り返し、市民のみなさんが当たり前に利用している状況を目指している。つまりみなさんがテクノロジーを使いこなしているということですよね。そのように、参加(活用)してもらいながらスマートシティに対する理解を広めたいと思います。そのようにして、サスティナブルにずっと続けていく必要があると考えています。
そういった市民理解を土台にして、参加意識やリテラシーを高めていけば、このような技術を生かした街づくりをすることが必要だと、最近は考えています。どこかの都市を真似するわけではなくて、日本だからこそのスマートシティの在り方、日本のスマートシティの礎を福岡から作っていくことが今後の目標です。
LINEのミッション「CLOSING THE DISTANCE」のもと、人と情報、人と技術などをいかに縮めるかの挑戦です。市民の皆さんが毎日利用するLINEだからこそできる、困りごとのスピード解決と、それによる市民の行動や価値観の変化を促すことが、スマートシティ成功への第一歩になると確信しています。(提供:THE OWNER)