会社の成長を妨げる社員をご存じだろうか?その名をフリーライダーという。この記事では、フリーライダーが組織に与える影響や、フリーライダー予備軍を採用時に見極めるポイントなどを解説する。フリーライダーを減らす対策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてほしい。

フリーライダーとは?

物流業界で注目を浴びる「モーダルシフト施策」 現状打破の糸口となるか
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

フリーライダーとは、直訳すると「ただ乗りする人」という意味で、コストを負担せず利益だけを受ける人をいう。

単に不労所得者を指すこともあるが、人事労務では会社に貢献せず職場に悪影響を与える社員を指す。

会社はチームとして職務を遂行し、各社員が組織に利益をもたらす。その結果、各社員が給料を受け取る仕組みが成り立っている。しかし、給料に見合った仕事をしない社員がいると、会社は不利益を被る。

フリーライダーの具体的な特徴3つ

ここではフリーライダーが問題視されている理由を詳しく知るために、具体的な特徴を紹介しておく

特徴1.成果ではなく勤務時間に満足している

フリーライダーは成果に対して無頓着であり、仕事に時間をかけるだけで満足しがちだ。一方、自分の負担に対しては敏感で、ここぞとばかりに主張する傾向がある。

長時間働いていると主張する社員は、もしかするとフリーライダーかもしれない。

特徴2.給料や職場環境への不満が多い

不満に対して改善策を出さないのもフリーライダーの特徴だ。

たとえば下記のような不満が多い。

・給料が少ない
・上司が嫌い
・人間関係が悪い
・仕事が多すぎる

不満が多い割に、給料を上げる方法や生産性を向上させるアイデアには興味を示さず、自分の意見も持たない。自分の仕事ぶりに話題が向くのを嫌い、義務より権利を強調する。

特徴3.人目がないところでネットサーフィン

人目がないとすぐに怠けるのもフリーライダーの特徴だ。ネットサーフィンをしたり、プリンターを個人的な目的で使用したりすることもためらわない。

人目を忍んでいても、他の同僚が気づいていることも少なくない。

フリーライダーがもたらす悪影響3つ

フリーライダーに頭を悩ませる経営者は少なくない。しかし、直接注意しても態度が改善しないフリーライダーも多いため、つい放置してしまいがちだ。

だが、フリーライダーがいると他の社員にも悪影響が出る。危機意識を高めてもらえるよう、フリーライダーがもたらす具体的な悪影響を3つ解説していく。

悪影響1.職場のモチベーションが下がる

職場のモチベーション低下は、想像以上に深刻な問題だ。自分は自分、他人は他人と割り切ろうとしても、なかなかそうはいかない。

同じ給料をもらう人がサボっているのを見て、自分の努力に意味がないと感じる社員もいるだろう。

悪影響2.関係者にストレスを与える

日常的に不満を聞くことは、人間にとって大きなストレスだ。フリーライダーの愚痴を長期間にわたって聞き続けていると、ストレスの蓄積で仕事を楽しめなくなってしまう社員もいる。

その結果、関係者の営業成績や現場の生産性に深刻な影響が出ることもあるかもしれない。

悪影響3.優秀な社員が転職してしまう

経営者や上司の目を盗んで狡猾にサボるフリーライダーもいる。関係者がフリーライダーの存在に対処できないこともあり、その状態は優秀な社員に悪影響をもたらす。

優秀な人間は、意欲的な人間と働くことを好む。自分のモチベーションが下がる職場を避けたいに違いない。

仕事のやりがいとフリーライダーから受けるストレスを天秤にかけた結果、転職を選択してしまう可能性もある。

貴重な人材が流出しないよう、フリーライダーを放置してはならない。

フリーライダーになりやすい人の特徴3つ

会社にフリーライダーが存在すると、職場の雰囲気が悪くなるだけでなく、業績にまで悪影響を与えることも少なくない。

したがって、経営者がフリーライダーになりそうな人物を採用面接で見極める必要がある。その際に適切な判断ができるよう、フリーライダーになりやすい人の特徴を3つ紹介していく。

特徴1.責任感がない

責任感がない人間には重要なポジションが与えられない。フリーライダーには責任感の薄い傾向があるため、重要な立場を任された経験や、責任を果たし抜いた過去を探るとよい。

たとえば、部活動の部長経験やアルバイトのリーダー経験などについて質問する。役職や立場に関する経験はごまかせないので、客観的な指標として注目したいポイントだ。

ただし、リーダー経験があっても具体的な成果がなければ、利益を生み出せる人物とはいえない。

また、成果を自分のおかげだと強調する人物は、協調性がない可能性もある。したがって、成果や協調性の有無についても見落とさないようにしたい。

特徴2.他人任せ

フリーライダーには他人任せという特徴がある。自分が解決するという姿勢がなく、誰かが何とかしてくれると考えている。

他人任せの精神を見極めるには、時事問題や社会問題に対する意見を聞くとよい。他人任せのフリーライダーは、自分の損得に関係ないニュースについて、意見を持っていないことが多い。

付焼刃の回答であれば、フリーライダーになる可能性がある。

特徴3.愚痴が多い

愚痴の多さはフリーライダーの大きな特徴だ。しかし、採用面接で愚痴をこぼす人物はいないため、特性を見極めにくい。

その点をふまえると、選考中の会食で見極めるようにしたい。その際は、できるだけ相手の緊張をほぐし、相手の話しやすい話題をふり、警戒心をとくことが大切だ。

気が緩むと、普段の性格や考え方が浮き彫りになる。バイト先やゼミ、転職前の職場に関する不満が出てきたら慎重に判断する。

正当な意見や的を射た批判であれば、気にする必要はない。フリーライダーは改善策を出さないという特徴を把握したうえで見極めるようにしたい。

フリーライダーが発生しやすい会社の特徴3つ

フリーライダーが発生しやすい会社がある。したがって、フリーライダーが生まれやすい会社の特徴を知り、会社経営や現場運営を見直すとよい。

というのも、フリーライダーに直接指導しても、改善されないことがあるからだ。人を変えるのは難しいが、環境によって変わる可能性がある。

早速、フリーライダーが発生しやすい会社の特徴を3つ解説していく。

特徴1.担当者や期限が明確ではない

仕事の担当者や期限が決まっていない場合、フリーライダーが過ごしやすい環境となる。サボってもバレにくく、他人に責任転嫁しやすいからだ。

特徴2.評価制度がない

評価制度がなく、成果によらず同じ扱いを受けるなら、フリーライダーはサボろうとする。他の社員に不満を生じさせるため、注意しなければならない。

特徴3.教育・研修制度が整備されていない

フリーライダーは、わからないことを自ら学ぶ意欲を持ち合わせていない。教育体制や研修制度が整っていないと、業務を遂行できない口実を与えてしまう。

フリーライダーを減らす対策3つ

フリーライダーを減らすために会社ができる対策を3つ紹介する。

対策1.仕事を見える化する

一つひとつの仕事で担当者と期限を決定し、職場全体で可視化する。そうすれば、フリーライダーにとって居心地の悪い環境となる。

自分が責任者になることで、責任感が芽生えることもあるだろう。場合によって、フリーライダーのほうから転職を希望することもあるかもしれない。

対策2.成果やプロセスを評価する

成果やプロセスを適切に評価することで、フリーライダーが手を抜けない環境に変えられる。関係する社員の不平等感を解消できるだろう。

インセンティブは、給料や部署の予算、社員旅行など、労働環境に応じて工夫するとよい。

対策3.教育体制や研修制度を整える

教育体制や研修制度の確立は、フリーライダーの言い訳を抑制する。フリーライダーだと思っていた社員が、教育と研修によって期待した成果を出す人材に育つこともある。

教育体制や研修制度の充実化は、他の社員にもプラスに働くため、積極的に検討したい。

フリーライダーを減らして職場環境を改善

フリーライダーの存在は、経営者と職場にとって頭の痛い問題だ。

そのまま放置すると、貴重な人材がストレスを抱えて、流出することもある。営業成績や生産性に悪影響が及ぶことも少なくない。

評価・教育体制を整えるだけでも、フリーライダーが転職したり、フリーライダー予備軍からの応募が減ったりする。うまくいけば、真面目に働き始めることもあるだろう。

社員一人ひとりが生き生きと働けるよう、あらためてフリーライダーに関する対策を実施してほしい。(提供:THE OWNER

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)