これまで「安全に資産を保管できる場所」であった銀行ですが、今では「銀行に預けていてもお金は殖えない」という認識を持つ人は少なくないでしょう。それでも安全に資産を保管できることに変わりはなく、「運用する予定がないお金は銀行に預けておけば大丈夫」というのは半ば常識でした。
しかし、その常識が揺らごうとしています。なぜなら、大手銀行を中心に手数料を新設する流れが起きているからです。しかも新設される手数料の多くは、口座を持っているだけ、通帳を持っているだけで発生するため、「銀行に預けておけば大丈夫」という常識が通用しなくなる可能性が出てきたのです。
いわば「改悪」ともとれる手数料の新設ラッシュですが、しっかりと仕組みを理解しておけばこれまで通りに口座を使うことは可能です。“知らない”ことが最も大きなリスクなので、今回は銀行に起きている手数料新設の流れについて解説し、知らない間に損をしてしまわないための防衛術を伝授します。
ATM手数料に続いて「通帳」「口座」に手数料が新設
口座のある銀行以外のATMを利用したり夜間や休日にATMを利用したりすると、手数料が発生するのは多くの人がすでに認識していることです。しかし2021年から起きている手数料新設の流れでは、「通帳」や「口座」そのものに手数料が発生するようになります。
みずほ銀行は2021年1月18日以降に開設する口座を対象に、通帳発行と繰り越しにそれぞれ1冊あたり1,100円の手数料が新設されます。通帳の発行にお金を支払う習慣を持っている人は少ないと思いますし、1,100円は決して小さな金額ではありません。
また、三井住友銀行ではネットバンキングを利用していない口座が有料化されます。2021年4月1日以降に開設する口座において、紙の通帳利用者には年間550円、さらにネットバンキングを利用しておらず一定の条件を満たしている利用者には年間1,100円の手数料が発生します。
これはほんの一例ですが、こうした動きは銀行業界全体に見られます。どの銀行もコスト削減のためにデジタル化を進めており、従来と同じ使い方をしている人からは手数料を徴収しないと成り立たなくなってきているのかもしれません。ネット銀行は当初からネットに特化したサービスを提供していましたが、大手銀行など普通銀行もネット銀行化している傾向がうかがえます。
新設される手数料はいずれも新規口座のみだが……
既存の口座保有者に手数料を新設するのは反発が予想されることもあり、現段階では新規に開設する口座のみが新設される手数料の対象です。既存の口座を利用している人については対象外のためご安心ください。まだ手数料新設の対象になっていない銀行で口座を開設すれば、新たな手数料の対象から外れることも可能です。
しかし、銀行全体のこうした流れが変わることは考えにくく、地銀など経営状態が苦しくなっている銀行においてはコストダウンを目的としたデジタル化の流れはさらに加速することが予想されます。
今後も続く「手数料地獄」で損をしないための銀行利用法
ここで紹介しているのは通帳や口座の維持に関する手数料ですが、これ以外にも銀行の手数料では「改悪」の流れが続いています。これまでは提携ATMでの手数料が無料だったものが有料になるケースや、有料になるには一定以上の預金額が必要になるなど利用状況によって無料にならないケースが出てくるなど、何も知らずに利用していると手数料が膨らんでしまうことも十分考えられます。
こうした“手数料地獄”の時代を迎えるにあたって、損をしないための銀行利用法をまとめると以下のようになります。
ネットバンキングを積極的に利用する
紙の通帳をベースにした銀行利用には今後手数料の風当たりが強くなると考えられるため、銀行の意向に沿う形でネットバンキングを積極的に利用しましょう。利用状況によってはネットバンキングの振込手数料が無料になるので、こうしたサービスも活用したいところです。
ネットバンキングで事足りるならネット銀行の利用を検討する
普通銀行がネット銀行化していると述べましたが、今後の利用がネットバンキング主体になるのであれば、当初からネットバンキングに特化したサービスを構築しているネット銀行を利用するのも有効です。手数料の安さや有利な預金金利など、ネット銀行ならではのサービスは魅力的です。
銀行ごとに異なる手数料体系を熟知しておく
金融の自由化により、銀行の各種手数料は一律ではなくなりました。ATM手数料や通帳・口座維持に関連する手数料についても各行独自に設定しているため、お使いの銀行がどのような手数料体系になっているのかを熟知しておくことが重要になっています。
特にネットバンキング経由の振込手数料については各行のばらつきが大きいので、銀行振込による送金を頻繁に利用する方は意識しておくべきでしょう。たとえば楽天銀行は利用状況に応じて振込とATM手数料の無料回数が決まる仕組みになっています。
もう1つ、新生銀行も独自の手数料体系を採用しているのでご紹介しましょう。新生銀行は顧客のステージによって手数料の無料回数が決まる仕組みになっています。しかし2021年1月25日からは一部のATMで手数料が有料化されるため、これも留意しておくべき「改悪」です。
ここでご紹介した2行だけを見ても振込手数料の仕組みは異なります。それぞれの銀行の仕組みを熟知しておけば、振込手数料をコストダウンすることも十分可能になります。
キャッシュレス化する
新設される手数料の多くは、通帳やATMなど現金を取り扱うことに伴うものです。その一方でネットバンキングの手数料は優遇される傾向にあります。この流れを受けて、銀行利用をキャッシュレス化していくことで手数料コストからの防衛ができます。デビットカードを使えば、ATMから現金を引き出すことなく直接口座引き落としで買い物ができます。もちろん、手数料は無料です。
そのほか、スマホ決済サービスに銀行口座からチャージする場合であってもほとんどが無料のため、スマホ決済を利用したキャッシュレス化も手数料コストからの防衛になります。
これからは固定観念を振り払い、広い視野で考えよう
そもそも、なぜ銀行はこのように手数料を新設し、既存の手数料条件を「改悪」しているのでしょうか。この背景には銀行の収益力低下があります。
フィンテックの進化によって銀行を介すことなく資金調達ができるスキームが続々と誕生し、銀行は資金調達の主な手段ではなくなりつつあります。送金についてもスマホ決済サービスが個人間送金サービスを提供しており、これも銀行の振込サービスを利用することなく送金ができてしまいます。
クラウドファンディングやソーシャルレンディングなど、ネット上で資金を調達する方法もあるため、金融のあり方そのものが大きく変化しています。預金者だけでなく資金を調達したいと考える人にとっても銀行以外の選択肢がどんどん広がっているため、「お金のことは銀行」という固定観念だけではなく、広い視野で考えなければ損をしてしまう時代になっていくのは間違いないでしょう。(提供:Incomepress )
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