日本ではレジ袋有料化が義務付けとなり、環境保護への関心が大きく高まりました。これをきっかけにSDGsという持続可能な社会を築くための、世界的な目標を知った方も多いのではないでしょうか。有料化から少し経ちましたが、現在どのように広がり成果が出ているか紹介したいと思います。
レジ袋有料化の義務付けとは
2020年7月から容器包装リサイクル法改正に伴い、レジ袋の有料化が義務付けになりました。これは小売業と継続した事業でレジ袋を使っている場合が対象となります。
例えば製造業者が製品をショッピングモールなどで販売したり、美容サロンで美容グッズを販売したりすることも含まれます。一方で単発的なフリーマーケットの出品で使うなど、事業として継続的に行っていない場合は対象になりません。
対象製品は購入した商品を持ち運ぶための、持ち手の付いたプラスチック製買い物袋です。また環境性能が認められる次の3つは対象外です。
①プラスチックのフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの
②海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの
③バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
この対象外の袋の成分を見ても、今回の有料化は環境負荷を減らすことが目的とわかります。
なぜレジ袋は環境に良くないのか
レジ袋だけでなくストローや包装容器を含めたプラスチックゴミは、次の2つの点で環境への悪影響が大きいと、世界中で削減の流れにあります。
海へ集まり生態系へ悪影響
軽くて風で飛びやすいプラスチックゴミは、雨に流され川に落ちて海へと集まっていきます。そしてウミガメなどの海洋生物が餌と間違え誤飲し、死亡してしまうこともあります。
また紫外線で砕かれマイクロプラスチックと呼ばれる小さなプラスチック片になったものは、魚なども食べてしまいその命や生態系に悪影響を及ぼすと考えられます。さらプラスチック片を含んだ魚を人間が食べれば健康被害が発生する恐れがあり、プラスチックゴミは生態系全体へ影響する可能性があるのです。
CO2を排出し温暖化の一因に
プラスチックは製造や廃棄で多くのCO2を排出し、地球温暖化に大きな影響を与えています。2050年には地球の気温上昇を2度以下に抑えるためのCO2排出量上限のうち、15%をプラスチックの製造や廃棄が占めるといわれています。
つまり世界中が取り組んでいる温室効果ガス削減において、プラスチック製品の抑制は大きな効果が期待できるのです。
日本がプラスチックゴミを減らしたい事情
さらに日本には早急にプラスチックゴミを減らしたい事情があります。1つは日本が主要な国や地域の中でアメリカに次いで2番目にプラスチック廃棄量が多い国になっている点です。国の規模からするとEUや中国よりも多いという現状は、早急に改善すべきと政府が考えるのは当然かもしれません。
もう1つは2017年末に中国がプラスチックゴミの輸入を禁止したことが挙げられます。プラスチックゴミは日本国内で処理がしきれず海外へ輸出してきたのですが、その主要な相手国である中国が受け入れなくなったことで、国内で処理しなければならないプラスチックゴミが増大しています。一部の地域では廃棄物増大による社会的コストの負担が大きな問題になっています。
こうした事情から日本はプラスチックゴミをできるだけ早く削減したいと考え、今回のレジ袋有料化へつながったと言って良いでしょう。
レジ袋削減の現状
レジ袋有料化を推進するため環境省では「レジ袋チャレンジ」という、マイバッグの普及とレジ袋不要を当たり前の世の中にするキャンペーンを展開しています。
その中で環境省が行ったWeb調査では、2020年3月に「1週間レジ袋を使わない人」はおよそ30%でしたが、有料化した後の11月には約70%に増えています。キャンペーン当初の目標は「1週間レジ袋を使わない人を6割にする」だったので、レジ袋有料化は大きな効果があったと考えてよいでしょう。
当初はレジ袋を無料で提供するのが当たり前だったコンビニチェーンから、現場の混乱を心配する声が多くあがっていました。しかし禁止ではなく有料化であり、買えば使えるという選択肢を残したことが功を奏したのか、大きな反発もなく移行できたようです。
有料化が義務だったということもありますが、7割と言う大きな成果を上げられたことは、日本のプラスチックごみ削減への大きな一歩になったと言えます。
レジ袋チャレンジ優秀サポーター表彰
2020年12月に環境省は、レジ袋削減への貢献が大きい企業や団体を表彰する「みんなで減らそうレジ袋チャレンジ優秀サポーター表彰式」を行いました。表彰式に参加した小泉進次郎環境大臣も「レジ袋をもらわないことが当たり前になり、大きな社会変革だ」と述べ、その成果を大きく評価しています。
この表彰式で特に貢献が大きかったとして最優秀賞を受賞した、各部門の企業や団体の取り組みを紹介します。
企業部門 イオン
総合小売大手のイオンは2007年と早期からレジ袋有料化に取り組み、さらにマイバスケットの普及、オリジナルマイバッグ作成、店頭での啓蒙活動など積極的な取り組みをしてきました。企業規模を活かした全国的な展開とともに、地域の要望に合わせてマイバッグを貸し出しするなど、細やかな対応をしてきたことも評価されています。
自治体団体部門 富山県&とやまエコストア
富山県&とやまエコストアは2008年に全県でレジ袋無料配布を行い、自治体として全国に先駆けてレジ袋削減に取り組んできました。その結果、同県ではレジ袋辞退率95%という高い成果に至っています。2020年には若年層にマイバッグ実践モニター調査を行い、今後のさらなる普及に役立てるなど、継続した活動姿勢も評価されています。
普及啓発部門 ふじのくにCOOLチャレンジ
ふじのくにCOOLチャレンジでは、静岡県内の店舗でレジ袋辞退をポイントに結びつける仕組みを、独自に開発したアプリで実現しています。このポイントを貯めるというゲーム感覚の普及活動が高く評価されました。
独自性部門 徳島県&レジ袋サクゲン作戦
徳島県&レジ袋サクゲン作戦では、学校などで不要になったエコバッグを集め、小売店で再利用してもらう取り組みが、リユースと買い物客への配慮の観点から評価されました。特に子供たちへの環境教育も組み合わされている部分も大きなポイントになっています。
特別賞 USJ
知名度のあるエンターテインメント側から、環境意識への啓発活動に取り組んだことが評価されました。コカ・コーラ社と共同で取り組んだイベントでは、キャラクターやダンサーが歌と踊りで、プラスチックゴミの削減とリサイクルをアピールしました。さらにペットボトルから作られたエコバッグを、大阪市内の小学生へ約2万枚提供することも発表しています。
コンビニ界から唯一受賞のファミリーマート
最優秀賞ではありませんが、レジ袋を多く使う小売として思い浮かぶコンビニ業界からは、ファミリーマートが唯一優秀賞を受賞しました。
レジ袋を辞退した人にファミマエコスタンプを発行し、貯まると商品と交換できるようにしたり、レジの液晶画面にレジ袋チャレンジの啓発画像を掲示したりするなどの活動に取り組んでいます。またファミマエコビジョンとして、2050年までに店舗運営に伴うCO2排出量を100%削減し、環境配慮型素材使用割合を100%にするといった目標も掲げています。
当初レジ袋有料化にあたり混乱を危惧する声も上がったコンビニ業界ですが、環境配慮には積極的に取り組んでいると言えそうです。
プラスチックゴミ削減を継続していこう
レジ袋有料化は環境省の積極的なキャンペーンなどもあり、1週間レジ袋を使わない人が7割を超えるという大きな成果を上げています。世界的なCO2排出削減の流れと現実的な環境への悪影響もあり、プラスチックゴミ削減は日本にとっても急務といえます。
環境省の行った「レジ袋チャレンジ優秀サポーター表彰」を受けた企業や団体の取り組みを見ると、地道に継続して活動することが大切であると分かります。私たちもこの流れを一過性のものとせず、継続してさらにプラスチックゴミを減らすよう努めていきましょう。(提供:Renergy Online )
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