持続可能な開発目標であるSDGsでは、毎年達成度の世界ランキングが発表されています。この中で日本は5つの目標に大きな課題があると指摘されました。これからの日本を築いていく上で、一つの指針とも言えるこの5つの課題について解説します。

SDGsとは

SDGsランキングで日本が指摘された5つの改善点
(画像=hogehoge511/stock.adobe.com)

SDGsとは2015年の国連サミットで採択された、持続可能なよりよい世界を目指すための国際目標です。17のゴールと169のターゲットが掲げられ、地球環境を守りながら全ての人々が平等で平和に暮らせる未来を作る指針になっています。

SDGs達成度世界ランキングと日本の順位

SDGs達成度世界ランキングは、さまざまなステークホルダーによるグローバルネットワーク「SDSN」と、ドイツのベルテルスマン財団の専門家チームで作成されるレポート「Sustainable Development Report」(以下:SDR)によって発表されます。

2020年のランキングで日本は17位となり、前年の15位から2つランクを落としてしまいました。そしてこのSDRの中ではSDGsが掲げる17の目標のうち、日本が達成するうえで大きな課題がある5つの目標とそれぞれの指標が解説されています。

これから持続可能な日本を作るうえでガイドラインの一つとなり得る、これらの課題を見てみましょう。

目標5:ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダー平等とは男女平等を達成し、全ての女性の力を最大限に発揮できる社会を目指す目標です。SDRではこの目標に以下のような大きな課題が残っているとしています。

国会で女性が保有する議席

日本の国会では、女性議員が占める議席数が不足していると指摘しています。SDGsターゲットの長期目標は50%のため、議席の半数を女性が占めることが目標です。このレポートによると日本は2020年において9.91%の達成率です。

男女賃金格差

正社員と自営業者における男女それぞれの賃金中央値の差を、男性の賃金中央値で割ったもので表します。長期的な目標は0、つまり格差なしです。2020年時点で24.5%となっており、2000年の33.9%より着実に改善されているものの、まだ男女間に大きな開きがある状態です。

無給労働に費やす時間の男女格差

無給労働とは育児や食事の準備、掃除などいわゆる家事のことで、1日あたりの男性と女性が無給労働に費やした時間差が大きいと指摘しています。長期目標は0で格差なしです。評価ソースとなったOECD(経済協力開発機構)の調査によると、1日の無給労働時間は男性が40.8分に対し女性は224.3分でありその差は183.5分です。

目標13:気候変動に具体的な対策を

これは気候変動やその影響を軽減するため、具体的な対策を緊急に講じるという目標です。SDRで指摘されている日本の主な課題は以下の2点です。

エネルギー消費によるCO2排出

石油や天然ガス、石炭などのエネルギー消費によるCO2の排出量に問題があると指摘されています。これは原子力発電施設の停止による火力発電増加などの影響もあると考えられます。

さまざまな国際統計データを伝えるグローバルノートによると、2018年の国民1人当たりのCO2排出量ランキングで日本は145カ国中23位となっています。先進国の中では比較的CO2排出量が多いことがわかります。

実効炭素率

実効炭素率とはOECDが提案する、各国の炭素税や排出量取引制度での価格、エネルギー課税などから算出した炭素削減水準の指標で、どれだけCO2削減が行われているか比較できます。SDRの長期目標値である100に対し、日本は2016年時点で7.84と非常に低い数字になっています。

目標14:海の豊かさを守ろう

これは持続する未来のために海そのものや得られる海洋資源を守り、環境維持ができる範囲で利用する目標です。SDRで課題として指摘されているのは主に以下の3点です。

グリーンウォータースコア

グリーンウォータースコアとは、その国の海が化学物質や過剰な栄養素、人間の病原体、ゴミなどによってどの程度汚染されているかを表す指標です。SDRの長期目標100に対し、日本の海は2019年で59.36というスコアです。

魚の乱獲による資源の崩壊

この目標はその国の排他的経済水域内における総漁獲量のうち、乱獲などで漁獲された魚の割合を示します。つまり漁業による魚の取りすぎを示しており、種の保存や限られた海洋資源の維持に不安があるとしています。

海は陸地と違いすべてつながっているため、他の国が海洋資源の維持に努めても多くの魚を漁獲する日本がそれを崩しかねないという指摘です。長期目標スコアは0ですが日本は70.83とかなり高い数字になっています。

輸入による海洋生物多様性への脅威

これは輸入のために遠隔地の海洋生物が乱獲され、生息環境を荒らし、種の存続の脅威になっていることを指します。日本は多くの魚を輸入しており、それが開発途上国で乱獲を引き起こし、海洋環境を悪化させると懸念しています。グローバル化した経済と国際貿易の発展によって、顕著になってきた問題です。

目標15:陸の豊かさを守る

これは陸上の生態系の保護や回復、そして持続可能な資源利用の推進、森林経営などの目標です。さらに温暖化を抑制し砂漠化などによる土地劣化を阻止し、生物多様性の損失を防ぐことも目標です。これに対し日本は2つの問題点が指摘されています。

種の生存のレッドリストインデックス

レッドリストとはIUCN(国際自然保護連合)が作成した絶滅の恐れがある野生生物のリストで、この種の増減に基づいて評価されます。日本においてはニホンカモシカやツバメ、キンチャクダイなど数多くがリストアップされており、中でもカワネズミやカラスバト、カンムリウミスズメなどが減少傾向にあると指摘されています。

輸入による陸上や淡水の生物多様性への脅威

これは海の豊かさのところでも紹介した、輸入によって遠く離れた発展途上国などの生態系に負荷を与えることを意味します。これは多くの先進国で指摘されており、さまざまな食料品やコーヒーや紅茶などの加工品も、原産国の生物多様性に影響を与えているとしています。

目標17:目標達成のためのパートナーシップ

これはSDGsが掲げるさまざまな目標を達成するための、グローバルなパートナーシップ構築の活性化です。特に国土や資源が限られている日本では、世界各国とのパートナーシップ構築はSDGsの目標を達成するためには不可欠です。

国際的な政府開発援助

高所得国とすべてのOECDDAC(開発援助委員会)諸国を対象とする、GNI(国民総所得)に占めるODA(政府開発援助)の割合目標です。少なくともGNI比で0.20%のODAを後発開発途上国に供与することが奨励されています。長期目標が1に対して日本は2017年では0.23になっています。

財務機密スコア

これはその国の金融機関などの秘匿性を表すスコアで、高いほど富裕層の税金逃れで話題となったオフショア金融に取り組みやすいと懸念されています。SDRの長期目標は42.7に抑えることですが、日本は2020年時点で62.85と高い数値になっています。

課題を把握し着実に改善する

SDRで示された5つの目標における課題は、どれも現在の日本を客観的に分析した指摘となっています。これから日本がSDGsの目標を達成するうえで重要な指針となるでしょう。

政府の主導もあり、以前より一般に浸透しつつあるSDGsですが、指摘された点ではまだまだ課題が多いと感じます。しかし現在の立ち位置をしっかりと把握し、未来につながる日本を作るために少しずつ着実に改善していくべきでしょう。(提供:Renergy Online


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