本記事は、ケヴィン・スコット氏の著書『マイクロソフトCTOが語る新AI時代』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の中から一部を抜粋・編集しています

AI関連で重要性を増す「新しい仕事」2つ

ソフトウェアベンダー
(画像=PIXTA)

AI関連の新しい仕事で、すでに重要性を増しているものがふたつある。まず、アメリカでは顧客のAI関連製品、もしくはAI関連ビジネス構築のサポートに特化した独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が増えている。こうしたISVは、AIビジネスに乗り出そうとしている人のそばで誕生し、そして顧客はシリコンバレーの外に増えている。

そしてもうひとつが、機械を生徒に持つ教師の仕事だ。

機械教示は読んで字のごとくの分野だ。たとえば作物や森林を食い荒らすアブラムシを探し出せるよう、AIモデルに学習を施したい場合、まずは知識を持った人間が無数の画像を精査し、作物に取りついているアブラムシの数や発育段階に応じてラベルを貼る作業を行う。

現在、数多くの機械向け教師が、このデータラベリングをはじめとした各種データベースの構築に取り組んでいる。機械学習システムが与えられたタスクを正確にこなせるようにするには、データを大量に取り込む必要があるのだ。AIに細々した仕事をいろいろやらせたいなら、その分、AIを訓練する教師もたくさん雇い入れる必要がある。

機械教示についてはあとの章でまた幅広く取りあげるが、これは単なるデータラベリングよりもはるかに強力なプロセスで、無数のAIモデルが経済の土台となる未来の社会では、機械にものを教える仕事が世界各地で大量に生まれる可能性はじゅうぶんにある。

AIと先進自動化技術時代の仕事、特に自動化によって理論的には完全に消滅する可能性のある仕事については、これまでも多くの経済学者が、研究対象として取りあげてきた。『サイエンス』誌に掲載された記事の中で、エリック・ブリニョルフソンとトム・ミッチェルは機械学習が労働力に及ぼす影響を調べ、次の8つの条件を満たしている人間のタスクは自動化されるだろうと結論づけている。

1.入力と出力の定義がしっかり定まっている
2.大量のトレーニング用データがある
3.明確な目標と指標がある
4.論理やプランニング、常識を使う必要がない
5.意思決定の理由を説明する必要がない
6.ミスをしても許される余地がある
7.時間経過による内容の移り変わりが激しくない
8.専門家レベルの器用さや物理的なスキル、機動力が必要ない

マイクロソフトCTOが語る新AI時代
ケヴィン・スコット(Kevin Scott)
マイクロソフトのチーフテクノロジオフィサー(CTO)兼エグゼクティブバイスプレジデント。モバイル広告のAdMobでテクノロジー・チームの立ち上げを指揮し、業界で頭角を現す。AdMobが2010年に買収されたのを機にGoogleに移籍。GoogleやLinkedInで役員や技術職を歴任し、現職に至る。GoogleFounder’s AwardやIntel PhD Fellowship、ACM Recognition of Service Awardなど輝かしい受賞歴を誇る。また現在は、スタートアップ企業顧問、エンジェル投資家、非営利団体Behind the Techの創設者、Anita BorgInstituteの名誉理事などの顔も持つ。ヴァージニア州の田舎町出身で、妻と2人の子供とともにカリフォルニア州ロスガトス在住。

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