2020年5月の資金決済法の改正によって仮想通貨から「暗号資産」という呼び方に変更となったものの、まだまだ仮想通貨のほうが浸透しているなか、暗号資産(仮想通貨)のマーケットが急速に伸びています。
活況を見せ始めた暗号資産マーケット
代表的な暗号資産である「ビットコイン」については、米国の大手電気自動車であるテスラが2021年2月に15億ドル分を購入し、一気に価格が高騰したことで話題になりました。では、これまでのビットコインのマーケットはどのように動いていたのでしょうか。
2020年までの動きは?
ビットコインの円建て価格は、2017年12月に1ビットコインが約221万円と終値ベースでの史上最高値をつけた後、反落に転じ、2018年12月には約36万円と1年で実に約83%の大幅な下落を見せました。
2019年も3月までは安値圏で低迷していましたが、4月から上昇に転じ、6月中旬には100万円を超える大幅な上昇をみせ、ビットコインの復活を印象づけました。しかし、その後は反落に転じ、年末には約78万円に下落し、変動の大きい1年となりました。
2020年からの動きは?
2020年も引き続き上下変動幅の大きい動きとなっています。
年初は約80万円からスタートし、2月には約110万円と30%近く上昇、その後新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場混乱の影響を受け3月中旬には約半値にまで急落したものの、急速に回復し2021年2月中旬には600万円超という最高値を更新しました。
金投資との比較
暗号資産への投資は、一般的に短期的収益を目指す投資といわれます。その理由について、暗号資産の特徴を整理しながら確認していきましょう。
ビットコインの仕組み
ビットコインはマイニングというコンピューターを使った労働(ブロックチェーンに取引データを記録するための取引認証作業)に対する対価として発行されますが、マイニングされる総量はあらかじめ決められています。つまり、ビットコインの新規発行はマイニングを通じてのみ行われており、「2140年までに2,100万ビットコイン」と決められた発行総量を超えることはなく、それ以降も発行されることはありません。
金への投資との比較
ビットコインなどの暗号資産は上述のように供給量に上限があることから、採掘が難しい金と比較されることがあります。一般に、株式や債券などの金融市場が暴落する局面において、金は希少性があり一定の価値が保存されるため、投資家の「避難場所」として買われる場合が多くあります。したがって、その際には金の価格が上昇します。
しかし、今回の新型コロナウイルス感染症拡大により、投資家が現金の確保に動いたことから3月中旬には金や暗号資産も主要な金融市場と同様に暴落するという結果となりました。ただし、金価格はその後急反発し、4月中旬には暴落前の水準を回復しています。
価格は需給で決まる
金融市場で取引される資産には、キャッシュフローまたは経済的価値を「産み出す資産」と「産み出さない資産」の2種類があります。前者の代表的なものとしては株式、債券、不動産、原油や大豆等などで、後者は金やダイヤモンド、芸術作品などが挙げられます。そして、暗号資産は後者に該当すると考えられます。
キャッシュフローまたは経済的価値を産み出さない、いわゆる金や暗号資産などの資産取引の最大の特徴は、「合理的に算出される適正価格が存在せず、価格形成は市場に参加する者の思惑を背景とした需給に左右される」ということです。また、代表的なビットコインでも時価総額は100兆円と他の主要な投資商品に比べて市場規模が小さいことから、価格の変動率が大きくなりやすいという点は理解しておく必要があります。実際にビットコインについては2021年2月21日に607万円という高値を更新した後、2日後の23日には517万円まで下落し、その下落率が約15%となっていることからも変動の大きさがお分かりいただけるのではないでしょうか。
これらの特徴を踏まえれば、現在のビットコインをはじめとする暗号資産は、デイトレードに代表される短期的収益を目指す投機的投資の対象とはなるものの、資産形成を目指す長期投資の対象とすることは難しいといえます。
暗号資産取引の課税の仕組み
暗号資産取引の課税の仕組みは、現状では株式や投資信託、特定公社債、FXといった他の金融商品取引と異なっています。したがって、暗号資産の課税の仕組みについて正しく理解しておくことが必要です。
課税対象となるケース
暗号資産を取引した際に課税対象となるのは、現状では主に以下の3つのケースです。
1.売却益が出た時
暗号資産を投資対象としてマーケットで売買する場合に、売却価格が購入価格より高く売却益が出た場合は課税対象となります。例えば、1ビットコインを50万円で購入し80万円で売却した場合には、差額の30万円が売却益として課税対象となります。
2.商品購入代金を暗号資産で支払った時
まだ日本で使われているのは少ないのが現状ですが、商品を購入する際にビットコインなどの暗号資産で支払うケースがあります。その際の暗号資産価格が購入時の価格よりも高い場合は課税対象となります。例えば、1ビットコインを40万円で購入し、それが60万円まで値上がりした時に0.5ビットコインで30万円の買い物をする場合です。この時は、0.5ビットコイン分の差額である10万円((60万円-40万円)×0.5ビットコイン)が課税対象となります。
3.他の暗号資産への交換で、もとの暗号資産で売却益が出た時
例えばビットコインを保有しており、それを他の暗号資産であるイーサリウムと交換する場合に、ビットコインについて交換時の価格が購入時の価格よりも高い場合は差額が課税対象となります。
また、個人で該当するケースは少ないですが、上述のマイニングの報酬として暗号資産を入手した場合も課税対象となります。
雑所得として最高税率は55%
暗号資産取引を事業として行っている場合は事業所得となりますが、個人の場合、暗号資産の取引で得られた利益は、通常「雑所得」として総合課税の対象となります。株式や投資信託の売却益は税率20%(所得税15%(復興特別所得税を除く)、住民税5%)の申告分離課税ですが、暗号資産取引で得られた利益に対する税率は、所得税の超過累進税率により最大55%(所得税45%(復興特別所得税を除く)、住民税10%)となる可能性があります。
なお、1ヵ所からの給与収入のみがある一般的な会社員で、暗号資産取引による利益を含む雑所得の合計が20万円以下の場合は確定申告が不要ですが、住民税については別途申告が必要になります。
また、暗号資産取引で損失が出た場合、他の雑所得がある場合は損益通算をすることができます。ただし、FX取引による利益との通算はできず、雑所得以外の所得との損益通算もできません。そして、損益通算の結果、損失が残った場合も翌年度以降への繰越は認められていません。
今後の暗号資産をめぐる税制改正の動き
現在の暗号資産の税制は他の金融資産に比べ不利な仕組みとなっていることから、日本暗号資産ビジネス協会などの業界団体は政府に対して以下のとおり税制改正を要望しています。
- 税率20%の申告分離課税の適用:株式や投資信託と同様に、税率20%の申告分離課税を適用すること
- 譲渡損失の損益通算と繰越控除の適用:暗号資産取引で譲渡損失が発生した場合に、株式や投資信託、特定公社債等の譲渡益との損益通算を可能とし、損益通算後も残った損失については翌年以降3年間にわたっての繰越控除を可能とすること
- 少額決済の非課税化:買い物の代金を支払うケースなど、少額決済を暗号資産で行った場合に生じる20万円以下の所得については課税対象から除外する
これらの要望については、2019年から提出されていましたが、2020年度の税制改正からは外されたこともあり、今後も引き続き同様の要望が提出されると思われます。今後改正の対象となった際には、課税の仕組みが今後大きく変更となる可能性もありますので、税制改正の動向については常に注意しておくようにしましょう。(提供:Incomepress )
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