前回は、飛行機のフライト中の揺れを例に取り、市場変動が激しい時でもあまり気を揉む必要が無いのが「国際分散投資」だという話をした。今回はもう少し掘り下げて超富裕層が実践する「国際分散投資」の背景となる考え方を整理し、更に「SAAとTAA」というテーマまで論じてみたい。極力カタカナや数式で「煙に巻いたような説明」になることを避け、ポイントを平易に分かるようにしたいと思うが最低限の専門用語が出て来ることは予めご了承頂きたい。本文中に出て来る程度の専門用語が会話で使えれば、担当のプライベートバンカー(以下、バンカー)も一目置いて丁寧に慎重な営業態度で接するようになり、真っ当な提案を受けられるようになるだろう。逆にこの程度の説明もスラスラと出てこないようなバンカーなら、次回の面談などする必要は無い。
そもそもなぜ「分散投資」のために「資産配分」をするのか?
さて、「SAAとTAA」に共通するのが「AA」の部分。この意味するところはアセット・アロケーション(Asset Allocation)であり「資産配分」のこと。仮に資産が100あった時、これに幾ら、あれに幾ら、それに幾ら……と資産を割り振る、すなわち分散すること。この「資産配分」こそが、運用パフォーマンスの約8割(研究や教科書によっては約9割とも言う)を決めるとも言われるほど重要な部分だ。努々適当に「エイヤ!」などとやってしまってはいけない。よく「『分散投資』ではなく単なる『散漫投資』」などと揶揄するのは、それだけこれが投資の決定事項の中で重要な部分であり、逆にそれだけ適当でいい加減な「資産配分」すなわち「アセット・アロケーション」の提案や商品が世の中に溢れかえっているからだ。
そもそもなぜ「分散投資」のために「資産配分」などするのだろうか。「分散投資の教え」のような教科書や説明書の類には「卵をひとつの籠に盛らない」という常套句が図解で説明されていることが多いが、さすがにそろそろこのレベルは卒業しよう。ここに留まるからこそ「単に複数資産に分けて投資をすれば良いんだ」と言わんばかりの提案や商品が世間一般まかり通ってしまう。「富裕層ビジネス」という看板が泣いている。
分散投資の最大の狙いは「投資効率の向上」にある
「分散投資」をする最大の狙いは「投資効率の向上」にあり、「卵が一度に全部割れてしまう」ことを避けるような危機回避的な目的が第一義ではない。「保守的な守り」ではなく「合理的な攻め」だということを覚えておいて欲しい。