地震や洪水による停電は長期化することがあり、人命に大きな危険を及ぼすリスクがあります。冷房が効かず熱中症になったり病気を持つ人の補助機器が使えなくなったりと、単に不便なだけでは済まない恐れがあります。

そこで注目されるのが蓄電池です。電気代が安い夜間帯に電気を貯め、電気料金が高い昼間に貯めた電気を使うことで電気代の節約につながるだけでなく、緊急時のリスクを小さくしてくれます。

最近の災害でも停電は長期化

災害時の被害を最小限にする蓄電池の役割とは
(画像=yavyav/stock.adobe.com)

停電になってもすぐに回復するイメージを持つ人は多いかもしれませんが、最近発生した自然災害でも長期間の停電が起きています。

2019年 令和元年台風15号(房総半島台風)

2019年9月に発生した令和元年台風15号(房総半島台風)では、関東地方を中心に最大で約93万戸が2週間以上停電しました。特に千葉県では被害が大きく、発生から1週間が経過しても約8万戸が停電したままと、非常に長期にわたる被害となりました。

千葉市では最大風速35.9M、最大瞬間風速57.5Mと同地点の観測史上1位の風速を記録し、記録的な暴風となりました。これにより電柱などの配電設備が大きな被害を受けたことが停電の原因です。

2018年 平成30年台風第21号

2018年9月に発生した台風21号は非常に強い勢力で近畿地方を縦断しました。最も被害の多かった大阪では住宅12棟が全壊、155棟が半壊し8人が亡くなるなど甚大な被害となりました。

停電は関西地方を中心に約2週間にわたって最大で約240万戸に発生し、大阪では最大約100万戸、和歌山県では全世帯の約半数が停電するという大規模なものでした。

その他の自然災害による停電

他にも2018年9月に発生した台風24号では、中部から九州・沖縄地方にかけて1週間にわたり最大180万戸が停電しています。また2018年9月には北海道胆振(いぶり)東部地震によって、北海道の各地域で2日間にわたり最大295万戸が停電しています。

長期停電による深刻な被害

日常生活の中で長期にわたる停電はほとんど起こらないため、自然災害による長期停電の恐ろしさはなかなか実感しにくいと思います。しかし紹介したような大きな自然災害は、地球温暖化の影響などで今後も発生することが懸念されています。

また地震大国の日本では、北海道のような大規模停電を起こす地震が、いつどこで発生するかわかりません。

それでは、実際に長期の停電が起きるとどのようなリスクが発生するのか、改めて確認しておきましょう。

十分な食事が取れない

長期間の停電が起きると十分な食事を作れなくなります。オール電化が普及し、調理にはIHを使うことが主流になっている今、停電ではお湯も沸かせません。当然電子レンジも使えず食べ物を温めることさえできないのです。

体力のある大人は非常食でなんとか持ちこたえられますが、小さな子どもや高齢者、病人などは満足な食事を取れなければ体調を崩しかねないでしょう。

通信手段が使えない

災害による停電を経験した人の声で多く聞かれるのが、携帯電話やスマホの充電ができず家族と連絡が取れなかったというものです。離れた家族の安否が確認できないのは大きな不安です。

さらに災害状況や避難場所、支援品の配布などの情報も得られず、避難生活に支障をきたすこともあるでしょう。

医療機器が使えない

体に障害や持病があり日常的に医療機器を使っている人にとって、停電は命に関わる非常事態です。人工呼吸器や、痰の吸引器、電動車椅子などで電気を使う機器は、停電では機能しないからです。

病院なら非常用電源があるかもしれませんが、自宅で蓄電池のような電源設備がない場合は、危険な状態になりかねません。

冷暖房が効かない

停電になれば冷暖房が効かず、真夏や真冬は体に大きな負担がかかります。夏は熱中症の危険があり、特に子どもや高齢者は重篤な状態になってしまう恐れもあります。今後は温暖化によって夏の厳しさが増すことも予想され、長期の停電は深刻な問題なのです。

食料が保存できない

停電では冷蔵庫が使えず食料を何日も保存できないため、せっかく食料を入手できても傷んで無駄にしてしまうかもしれません。特に夏場に冷蔵庫が使えないと十分な食事が取れない恐れもあり、乳幼児や高齢者、病人などが体調を崩す原因になってしまいます。

停電危機に備える蓄電池の選び方

こうした停電危機の備えとして大きく期待されるのが蓄電池です。蓄電池は大手電機メーカーを始め各社から多くの機種が販売され、一般家庭への普及も加速しています。JEMA(一般社団法人 日本電機工業会)の統計によると、2018年度の住宅用蓄電池出荷台数は約73,000台と過去最高の出荷台数です。

多くの人がいつ起きるかわからない自然災害と停電の備えとして、蓄電池を選んでいることがうかがえます。ではどのような蓄電池を選べば良いのか、初めて購入するときにチェックしたい4つのポイントを紹介します。

蓄電容量

蓄電容量は蓄電池の中にどれくらい電気をためられるかの数値で、大きいほど多くの電気をためられます。必要とする容量は、どれくらいの電力を消費する機器をつなぐかで考えます。

例えばエアコン700W、冷蔵庫300W、スマホ充電10W、テレビ100Wであれば合計でおよそ1,200Wの消費電力になります。これを5kWh=5,000Wの蓄電容量の蓄電池につなぐとすると、5,000W÷1,200W=4.17でおよそ4時間使えることになります。

このようにつなぎたい電気機器を想定し、停電から何時間使いたいかで蓄電池容量を選ぶと良いでしょう。ただし、同時にどれくらいの電気機器を使えるかは次項の最大出力にもよるため、併せて検討することが大切です。

最大出力

最大出力は蓄電池が一度に出力できる電力で、大きいほど一度にたくさんの電気機器に電気を供給できます。例えば最大出力が1,500Wの蓄電池なら、先ほど解説したエアコン・冷蔵庫・スマホ・テレビ各1台の合計1,200Wであれば同時に使えます。

安価な蓄電池はこの最大出力が小さい物も多く、購入の際はしっかり確かめる必要があります。逆に高額なものなら最大出力が大きくなりますが、災害時は普段ほど電気機器を同時に使わないことも考えられます。予算と使う機器のバランスを考えながら選ぶと良いでしょう。

大きさ

蓄電池選びでは性能面に目がいきがちですが、家庭に設置するなら大きさも重要なポイントです。小型のものでも幅と奥行が50〜60cm、容量が増えてくると一辺が1m以上の製品もあります。さらに高さが1mを超える製品もあり設置場所が限られることも考えられます。

また屋外に設置できる蓄電池もありますが、外気温が0度を下回る環境では設置できないなどの条件がある場合もあります。設置場所などを十分に確かめながら製品を選ぶようにしましょう。

充放電回数

蓄電池は充放電の回数に寿命(サイクル寿命)があり、これを超えると蓄電容量が徐々に減っていきます。家庭用の中・大型製品は8,000回前後が多く、中には1万回を超えるものもありますが、安価なものは充放電回数寿命が少なめです。

値段が下がったとは言え高価な設備ですから、どれくらい長く使えるかもしっかり確認しながら選ぶと良いでしょう。

災害の備えとして蓄電池

近年の自然災害による大きな被害と停電によって、蓄電池への関心は年々高まっています。電気が使えないことは不便なだけでなく、人命にも関わる危険性があるからです。蓄電池は省エネ設備であると同時に、大切な家族を守ってくれる設備でもあるのです。

ただし蓄電池は家族構成や生活スタイルなどによって最適な製品が変わります。また値段だけで選んでしまうと、期待した性能が発揮されない恐れもあります。初めて蓄電池を購入する際は、しっかりとした知識を持つ専門業者に相談しながら選ぶことをおすすめします。(提供:Renergy Online


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