Go Toトラベル事業は停止されたままだが、「ミニGo Toトラベル」とも呼べそうな事業が2021年4月にスタートしたことをご存じだろうか。観光庁の「地域観光事業支援」事業だ。一体どのような事業なのだろうか。

Go Toトラベル再開はもはや期待薄?

「Go Toトラベル」もどきがスタート 5月31日宿泊分までが対象
(画像=aanbetta/stock.adobe.com)

「Go Toトラベル」は、国の旅行支援策として2020年7月に始まった。しかし、日本国内で第3波が発生したことで、国は2020年12月末から全国でGo Toトラベル事業を停止させている。一方で第3波は、2021年2月に入ってだいぶ収まりをみせ、Go Toトラベル再開に期待する旅行業界の関係者も多かった。

しかし、国土交通大臣の赤羽一嘉氏は「今すぐGo Toトラベルを再開するというのは、簡単ではない」、経済再生担当大臣の西村康稔氏は「全国として再開していくのはなかなか難しい」と語っている。Go Toトラベル事業の再開は、当面は見込めないといった雰囲気が業界で広がった。

さらに4月に入った現在は、感染者数が大都市圏や地方の中核都市などで再び増え、「第4波」とも呼べる状況となっている。そのため、Go Toトラベルの再開に関するトピックスは、あまりメディアでもあまり取り上げられなくなってきている。

地域観光事業支援の取り組みが4月1日にスタート

しかしこのような状況の中で、「地域観光事業支援」という取り組みが4月1日から始まった。この取り組みは、「同一都道府県での旅行」に対する割引事業を各都道府県が実施する場合、国が補助金を助成するというものだ。

この助成事業は、感染状況が「ステージ2相当以下」と判断された都道府県が対象となり、国に対して支援を希望した場合は、以下の支援を受けることができる。

  • 1人泊当たり5,000円・商品代金の50%を上限に支援
  • 地域限定で旅行期間中に使用可能なクーポン券など、地域の土産物店、飲食店、公共交通機関などの地域の幅広い産業に裨益する支援策を併せて実施する場合は、1人泊当たり2,000円を上限に追加支援
    (出典:観光庁資料「地域観光事業支援について」)

実施期間については、当面は5月31日宿泊分(6月1日チェックアウト分)までとし、準備が整った都道府県から取り組みが始まる形となっている。

山梨県では4月15日から「やまなしグリーン・ゾーン宿泊割り」を再開

地域観光事業支援のスキームを利用した取り組みが、山梨県で4月15日から始まる。県民限定の割引事業「やまなしグリーン・ゾーン宿泊割り」だ。

この「やまなしグリーン・ゾーン宿泊割り」は、山梨県がGo Toトラベル事業に合わせて独自に実施していた取り組みだが、Go Toトラベル事業の停止を受け、「やまなしグリーン・ゾーン宿泊割り」も停止されていた。

4月15日に再開される「やまなしグリーン・ゾーン宿泊割り」では、1人1泊につき最大5,000円の割引と1人1泊につき2,000円の地域限定クーポン券が付与される。つまり、先ほど説明した地域観光事業支援における国の支援を最大限活用していることが分かる。

「山梨県民」だけが対象の割引事業だが、恐らく多くの県民が利用することになるとみられ、ホテルや旅館などの宿泊施設側からの期待感は大きい。

すでに秋田県や大分県では県民限定の割引事業がスタート

すでに、地域観光事業支援のスキームを活用して割引事業を展開している県もある。秋田県と大分県だ。例えば、秋田県では4月3日から5月31日にかけて「『旅して応援!』あきた県民割キャンペーン」を実施している。

宿泊代金・旅行商品が1万円以上の場合は5,000円を割引し、1万円以下の場合は金額に応じて割引きする。例えば、宿泊代金・旅行商品が「5,000~5,999円」の場合は2,500円の割引を行う。地域限定クーポンも配るが、準備期間が必要だとしており、配布は4月下旬をめどに開始するという。

大分県は「新しいおおいた旅割」という名称で、割引キャンペーンを3月20日から始めており、5月31日まで実施している。

あくまで「ステージ2相当以下」の都道府県が対象

Go Toトラベル事業の再開を楽しみにしている消費者も少なくない中、自分が住んでいる都道府県でも地域観光事業支援のスキームを活用した割引事業が始まるかどうか、気になっている人は多いだろう。

割引事業が行われるかどうかは、都道府県の発表やニュースなどに注目していれば分かる。そもそも地域観光事業支援の対象となるのは、感染状況が「ステージ2相当以下」の都道府県なので、自分が住む都道府県がステージ3やステージ4相当の場合は、実施されないと思っておいた方がよいだろう。

病床のひっ迫状況や10万人あたりの療養者数などでステージが決まってくるが、現在は宮城県や山形県、東京都、大阪府などでステージが高い状況となっており、これらの地域では地域観光事業支援のスキームが活用される可能性は、当面はないといえそうだ。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)