物件を購入するときに利用できるローンには、不動産投資ローンと住宅ローンの2種類があります。2つのローンには借入の目的以外にも違いが存在し、基本的には不動産投資において住宅ローンを利用できません。

しかし、例外的に住宅ローンで購入した物件を不動産投資に利用できるケースもあります。本稿では不動産投資ローンと住宅ローンの違いを明らかにして、住宅ローンを不動産投資に利用する方法についても解説していきます。

不動産投資ローンと住宅ローンの違い

不動産投資ローン,住宅ローン
(画像=WilliamW.Potter/stock.adobe.com)

不動産投資ローンと住宅ローンの違いは3つあります。

  1. 借入の目的が異なる
  2. 不動産投資ローンのほうが融資限度額は大きい
  3. 住宅ローンのほうが金利は安い

1.借入の目的が異なる

不動産投資ローンと住宅ローンの大きな違いは、借入の目的が異なることです。不動産投資ローンは投資に利用する物件のために組むローンですが、住宅ローンは居住用の住宅の購入と増改築に利用します。

融資の審査を受ける際は、資金使途を明確にする必要があるので、資金使途がローンの目的と一致していなければ融資を受けるのは難しいです。また、目的が異なるのであれば、審査の基準や、融資の条件も変化します。

2.不動産投資ローンのほうが融資限度額は大きい

2つのローンの審査基準は異なります。住宅ローンでは年収などの個人の返済能力をもとに融資限度額を決めますが、不動産投資ローンでは物件の収益も考慮して審査をおこなうので融資限度額が大きくなりやすいです。

2019年に発表された住宅金融支援機構の『フラット35利用者調査』では、融資額が年収に対して何倍になるかを示した年収倍率の平均について、建物の区分ごとに以下の調査結果を示しています。

<年収倍率(融資区分別・全国)>

建物年収倍率
土地付き注文住宅7.3倍
マンション7.1倍
建売住宅6.7倍
注文住宅6.5倍
中古マンション5.8倍
中古戸建5.5倍

参照:独立行政法人 住宅金融支援機構 国際・調査部「2019年度 フラット35利用者調査」をもとに編集部作成

長期固定金利による返済を前提にしたフラット35では、融資額を決定する基準に年収に占める返済額の負担の割合を示す、返済負担率を採用しています。年収700万円の方であれば返済負担率の上限は35%であり、毎年の返済額は245万円が限度になる計算です。

年収基準
400万円未満30%以下
400万円以上35%以下

参照:住宅金融支援機構「ずっと固定金利の安心【フラット35】」をもとに編集部作成

金利、返済期間、その他の借入状況によって融資限度額は変わるので、必ずしも住宅ローンでは5倍~7倍の年収倍率で融資を受けられるわけではありません。

一方で、不動産投資ローンにおける年収倍率は、平均で約12倍、年収の10倍以上の借入が3割以上を占めるという調査結果もあります。

不動産投資ローンは年収や貯蓄だけでなく、購入する物件の収益性によって融資額が大きく左右されるので、必ずしも高い倍率での融資が受けられるわけではありませんが、住宅ローンよりも融資限度額は大きくなりやすいです。

3.住宅ローンのほうが金利は安い

不動産投資ローンと住宅ローンを比較すると住宅ローンのほうが金利は安い傾向にあります。なぜなら、住宅ローンの主な返済原資は安定した給与収入であるため、貸し倒れリスクが低いからです。一方で、不動産投資ローンは物件の収益によって返済が左右されるので、住宅ローンよりも貸し倒れリスクが高いと判断されます。

住宅ローンの金利は2021年4月現在、返済期間15年~20年のフラット35で1.240%です。銀行で提供される変動金利の住宅ローンは固定金利よりも金利が安くなるので1%を切ることもあります。

不動産投資ローンの金利について3つの銀行における固定金利5年特約型の金利について下記にまとめました。

銀行名金利
みずほ信託銀行3.00%~3.40%
オリックス銀行2.50%~3.50%
SMBC信託銀行2.45%~3.45%

住宅ローンよりも割高な金利で返済している人がほとんどです。また、不動産投資ローンの金利は返済リスクが高いと判断されれば金利が高くなることもあります。

不動産投資ローンと住宅ローンは併用できる?

不動産投資ローンと住宅ローンを併用できないというルールはありません。よって、居住用物件のローンを返済しながら、投資用物件のローンも返済できます。

しかし、すでに組んでいるローンによって、新規に組むローンの審査の合否に影響する可能性があります。不動産投資ローンを組んでいる方が住宅ローンの審査を受ければ、不動産投資ローンの借入金額が大きいほど審査では不利になる可能性があります。

住宅ローンを組んでから、不動産投資ローンを組むときも同様で、審査に通過できない場合や、融資限度額が大きく減額されてしまう可能性がありますので気をつけましょう。

住宅ローンで不動産投資用の物件は購入不可能

不動産投資ローンと比較して住宅ローンのほうが金利は安い傾向にあるので、住宅ローンで不動産投資用の物件を購入できれば金利を抑えることにつながります。また、条件を満たした物件を住宅ローンで購入をする場合は、住宅ローン控除というローンの年末残高の1%の税金を10年間にわたって控除できる節税制度を利用できます。

しかし、住宅ローンを利用して不動産投資物件を購入するのは、借入の目的が異なるため不可能です。居住用の物件と偽って住宅ローンで投資用物件の購入が発覚した際に、ローンの一括返済を求められる可能性もあるので、絶対にしないようにしましょう。

ただし、例外ではありますが、住宅ローンを不動産投資に利用できる場合もあります。

住宅ローンを不動産投資に利用できる2つのケース

住宅ローンを不動産投資に利用できるケースは2つあります。

  1. 賃貸併用住宅を購入する場合
  2. やむを得ない事情で住居から離れる場合

1.賃貸併用住宅を購入する場合

賃貸併用住宅は、1つの建物に自宅部分と賃貸部分がある物件のことです。例えば、1階部分を住居に利用して、2階部分を不動産投資に利用する設計が考えられます。

賃貸併用住宅を住宅ローンで購入するためには、床面積の50%以上を居住用のスペースにする必要があり、住宅ローン控除を受けるためには居住用スペースが50平方メートル以上あることが条件です。

賃貸部分を利用して得られる家賃収入を住宅ローンの返済に充てることで、返済の負担を軽減できます。

住宅ローンを利用するうえで設計に制限はありますが、賃貸併用住宅を利用すれば、住宅ローンを利用して不動産投資が可能です。

2.やむを得ない事情で住居から離れる場合

借入先の金融機関に相談する必要がありますが、転勤などのやむを得ない事情で住居から離れる場合は、住宅ローンの返済を続けながら物件を賃貸に出すことは可能です。ただし、事情を相談して認められなかった場合は、賃貸に出す際に住宅ローンから不動産投資ローンに変更される可能性もあります。

銀行との交渉次第であり、不動産投資を前提に住宅ローンを利用する手段ではありません。今後、転勤によって長期間住宅を離れる可能性がある方は、ローンを変えずに賃貸に出す手段があることを覚えておきましょう。

特徴を理解して適切なローンを利用する

不動産投資ローンと住宅ローンは借入目的、融資限度額、金利が異なります。不動産投資のみに利用する物件を購入するなら、金利が高くても融資限度額が大きくなりやすい不動産投資ローンを利用するべきですが、居住用かつ賃貸として利用する物件を購入するなら金利が安く、節税対策にもなる住宅ローンも候補になります。

住宅ローンの返済をしながら、不動産投資用ローンを組めるケースもあり得るので、それぞれのローンの目的と特徴を理解して適切なローンを利用しましょう。(提供:Incomepress


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